22
「だったらいいんだけど…それにしてもすごいね。そんなのよく持ってるね…。」
「お褒めのお言葉、ありがとうございまーす!」
いや、褒めてないけど…。時計を見ると、4時になろうかとしていた。
「岩田さん、もうすぐ4時になるからキリのいいとこで上がっていいよ。」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて。」
彼女は大きなボールの中に入っていた急須や湯飲みやコップなどを水洗いし始めた。
そして出していた掃除道具も1ヵ所にまとめた。
「まだ全部終わっていないので、続きは明日しますね。」
ガスマスク越しの彼女はニコニコしながらエプロンを外した。
流しの横に並べられた食器はまるで買ったばかりのように1点の曇りも無くピカピカに光り輝いていた。
例の内側が茶渋で茶色くなっていた湯飲みも真っ白になっていた。
「これって…こんな色だったんだ…。」
「キレイになったでしょ!」
「うん…驚いたな…そろそろ買いなさおなきゃって思ってたんだけど…」
「買いなおしなんて勿体ないですよ。まだまだ現役で使えます!」
「そうだね…。」
「では、また明日!」
岩田麗子は玄関へ行き、手を眉の辺りにあて啓礼のポーズでそう言った。
え、ちょっと待って!
その格好で帰るの?
ガスマスクと防護服だよ!




