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彼女だよな?
…岩田麗子だよな?
何なんだ、この子…。
来た時持ってきていた大荷物はこれが入っていたのか?
掃除道具って言っていたから、てっきりモップとか洗剤とかそんな類の物と思っていたけど、まさかガスマスクとは…。
岩田麗子はいつの間に着替えたのか、白い防護服のようなつなぎを着ていた。
腰には何故か全く合っていない花柄のエプロンをしている。
防護服なのだからエプロンは必要ないだろ!
ガスマスクで防護服の女はテキパキと作業をしていた。
女は俺の視線に気づき、ガスマスク越しにニコニコと微笑んだ。
俺も微笑み返した。
そして女はまたキリっとした表情に変わって作業を続けた。
え、ちょっと待って!
ガスマスクに防護服まで着なきゃいけないって…毒ガス出てんじゃないの?
もはや我が事務所は危険地帯と化してんのか?
俺は焦って自分の身を守る何かを探したが何もない!
クソッ。
「あの…岩田さん…」
話しかけるとガスマスクの女は振り向いた。
そして俺を見てケタケタ笑い出した。
「先生、どうしたんですか? 頭にお守りぶら下げて。しかも首からも下げて。手に持たれているのは…十日えびす祭りの熊手ですよね?」
年明けの十日えびす祭りの福くじで当たった2等の大熊でを両手で握りしめていたのだ。
こうなりゃ神頼みしかないし…。




