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「とりあえずミー君、お見合いだけは行くのよ! 見合いと言ってもカフェでお茶するだけなんだから! ママの顔潰すんじゃないわよ!」
「わかったよ…。で、いつなの?」
「今日の午後四時よ! もう二週間も前から言ってるでしょ!」
おふくろは鬼の形相で俺をギロリと睨むと、勢いよくドアを閉めて去っていった。
それにしても…今日の四時だって?
勘弁してくれよ!
一応スケジュールを見てみる。
…まいったな、空いてるじゃないか…。
ま、テキトーに話して、さっさと帰って来よう。
司法書士試験に受かってからは、しばらく余所の事務所で修行をした。
仕事を覚え、なんとかやっていけそうな自信もついて、前から目星をつけていたこの街の駅近にいい物件が出たのもあって、俺は個人事務所を開いた。
この近辺は、一昔前、流行っていたドラマのロケ地だったそうで、駅前から続く桜並木はキレイだし、街並もお洒落だし、飲食店やスーパーもたくさんあって、ここだけで買い物なんかもとりあえず出来てしまうところも気に入っていて、事務所を開設するならこの街だと決めていた。
窓を開けると桜並木が見渡せる。いい気分だ。
ピンポーン
ガチャッ
「お待ちしておりました、どうぞお入りください。」
「おはようございます、長谷川先生。」
さあ、今日も人々の役に立つために働くぞ!




