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いつだったか外出中に、郵便局かどこかへ出かけていた彼女を、偶然通りで見かけた。
人込みの中で、彼女だけが目に入った。
風で彼女の髪が揺れていた。
その光景はとても美しくて、彼女が歩いている姿をずっと見ていたいと思った。
その時、彼女が俺に気付いて、こっちを見て笑顔で手を振った。
胸が高鳴った。
そうだ、俺はその頃からそう思っていたんだ。
俺は彼女の為に生まれてきたのかもしれないって。
今までにあった悲しかった事や辛かったことは、きっと彼女を分かってあげられるために俺が経験しなければならなかった事だったんだって。
きっと、なんてことないことだって、本当は意味があって、未来に続いて行くんだ。
大事にしよう。
一瞬、一瞬を…。




