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あれから彼女は忙しかった。
長年引きこもっていたせいで、晴香さんの髪は伸び放題だったので美容院に連れて行ったり、せっかく髪を切ったので、気分が明るくなるようなオシャレな服やアクセサリーを買いに行ったりした。
その途中で話題のレストランに行ってみたり、タピオカミルクティーを飲んでみたり、はたから見たら、仲のいい普通の姉妹のように見えただろう。
ばっさりとショートヘアにした晴香さんは、すごく素敵だった。
本人もそれを自覚しているようだ。
いや、し過ぎだろ…。
「私が本気を出したら、麗子なんて到底超える事の出来ない壁の向こう側に行けるのよ。この私を見れば、涼介だって惚れ直すに決まってるわ。いい、麗子! 私が将棋の王将だとしたらあんたは歩、そして私がこのタピオカミルクティーだとしたら、あんたは水道水なのよっ! アッハッハッハッハ…。」
若干、え? と思う事を言うが、麗子はこの姉が好きだと思った。
でもこんな毒舌も、信頼関係があるからこそ言えるのだ。
やっと父親との約束を果たせた。
そして一人っ子だった私に姉が出来た!
彼女はそれが嬉しくて堪らないようだった。




