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「それで彼女、あんなことやってたのか…。」
おかしいと思ってた。
あんなに目立つ場所でヘタクソなパフォーマンスをして、わざわざ恥をかきに行くような事、彼女の性格からして有り得ないと思っていたんだ。
おふくろはハンカチで涙を抑えていた。
すっかり彼女に感情移入している。
「でもさ、いくら彼女がパフォーマンスをしたって、その腹違いのお姉さんが見てるかどうかもわからないんだろ?」
「麗子ちゃんは見てくれているって信じてるわ。返事は来ないらしいけど毎日連絡入れているみたいだから。」
「ずっと続けるのかな…。」
「あの子はすると思う。お父さんとの約束だからね。」
夕方、彼女がいつもパフォーマンスをする時間に三角公園に行ってみた。
気づかれないように物陰に隠れて眺めた。
彼女は自作したらしき段ボールのパーツを腕や足に付けていた。
そして全身に装着し終わると、装飾を施したヘルメットを被った。
どうやら今日はロボットになりきるらしい。
そして音楽をかけてロボットダンスを始めた。
相変わらずヘタだ…ヘタ過ぎる…見てられない。
案の定いつものように数少ない観客からも笑いものになっている。




