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「…私の面接、どうなるんでしょう…」
「そんなこと俺に言ったって…。何か連絡来てないの?」
彼女はカバンの中を大急ぎであさってケータイを取り出した。
そして来ていたらしいメッセージを見るや否や、また大粒の涙を流し始めた。
涙どころか鼻水まで垂らしている。
ったく勘弁してくれよ…。
「あの…」
彼女は涙と鼻水でぐちゃぐちゃなまま俺に話しかけた。
「ちなみに…長谷川さんはどんなお仕事をされているんですか?」
「僕は司法書士です。この近くの事務所で働いています。」
「それって、長谷川さんの個人事務所ってことですか?」
「そうですけど…」
何か嫌な予感がした。
「事務員、募集していませんか? 私じゃダメですか?」
「え?」
「私、簿記の資格持ってます。司法書士事務所で役に立つかわからないけど、事務作業はがんばりますから雇っていただけませんか?」
「あ…いや…僕は一人で気楽にやっていきたいから、誰も雇っていないんですよ。申し訳ないけど…」
「私、もう後が無いんです。どうか人助けだと思って! とりあえずお試し期間の間、タダ働きでもいいですからチャンスを下さい!」




