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薄倖姫 ~世界一幸運な男が世界一不幸なお姫様に転生!?~  作者: 鍋さーもん
第1章 王宮生活編
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第五話 魔術の戦闘

眼鏡と椅子を新調しました。


姉とのお出かけから約二週間後、俺はいつものように魔術の授業を受けていた。


「はぁはぁ...もう無理...」


今は身体強化の持続時間を測っているところだ。やましいことをしているわけじゃないぞ。


「はいストップ。大体一時間くらいかな」


まぁまぁだな。一般的な魔闘師の平均は三時間。大体三分の一だな。

今では先生に指三本使わせることができるようになったし、ほかの魔術もいくつか覚えた。そのうちの一つは、道具に魔力を流し、強化するというものだ。これを使えるか使えないかで大きく変わってくる。

例えば、魔術をは使えないが、かなりいい剣を持っている人と、魔術は使えるが、木の棒しかもっていない人。どちらが勝つだろうか。答えは後者だ。魔術を使えば、木の棒も鋼鉄並みに硬くなるのだ。


他にも、生活魔法を教わったりしている。これは追々説明するとしよう。今は別の問題だ。


こうして魔術を学んではいるが、少し気になっていることもある。それは、魔力のことだ。

最近大きな魔力を使おうとすると、何かに一瞬、魔力がぶつかるのだ。これさえなければおそらく俺の力は倍近く増えるだろう。よし、先生に聞いてみるか。


「せんせー、最近魔力が出しにくいんだけど、なんでですか?」

「え!?もう来たの?随分と早いな」


先生の話によると、魔力はエネルギーの塊で、増えすぎると体に負担がかかることがある。その負担を最小限に減らすため、リミッターがかかるそうだ。


「どうにかする方法はないんですか?」

「残念だけど今のところはまだ見つかってないね」


なるほど、つまりは人間が常に筋肉にリミッターを付けて、制限をかけているのと同じ原理だな。

人間は、筋肉による圧力で、骨や神経にダメージがいかないようある程度制限をかけているのだ。

これは諸説あるが、このリミッターが解除されたときは、通常時の役五倍~十倍の力が出ると言われている。


「それよりさ、キャリーノ様も、だいぶ基礎は出来てきてるから、模擬戦しようか」


なにをいっているんだ、こいつは。まだ五歳の魔術覚えて数か月の女の子が魔闘師に勝てるわけないだろ。


「あっその顔は絶対勝てないって思ってるね?大丈夫、勝てなんて言わないから。ただ、どの程度の力か実践で知りたいだけだよ。キャリーノ様はとても才能があるからさ」


くそ、今日はよく喋るじゃないか。こうなったら覚悟するしかないのか...


「あ、あい...」


こうして現役プロの魔闘師と模擬戦をすることになってしまった。


今回は素手の勝負ということで、準備体操をして、お互いに、少し距離を取った。


「準備はいい?だめでも行くよ」

「あ、あい。大丈夫です」


「それじゃあ...ふっ!」


最初に動いたのはモーデストだ。キャリーノは、モーデストが消えたと思った次の瞬間には空を見ていた。


な、何が起きたんだ?先生が消えたと思ったら、今は空を見ている...。


モーデストは、目に追えないスピードでキャリーノとの距離を詰め、腕をつかみ、足払いをして転がしたのだ。だが、モーデストが動く予備動作すら見えなかったキャリーノにはそれを知るはずもなかった。


そうか、俺は今まで身体能力、つまりは腕力やスピードしか強化していなかった。目にも魔力を集中させれば、動体視力もあがるはだ。よし、やってみるか。


「お、さすが気づくのが早いね。じゃあもう一回行くよ」


先程と全く同じ動きで、モーデストはキャリーノに迫った。。大人五人分はある距離を一息で詰め、勢いを殺さぬまま、低い姿勢で右拳を前に突き出し、キャリーノの腹に一発撃ち込んだ。だが今度は動体視力を集中的に強化したキャリーノは、それをどうにか目で捉え、左手を腹の前に下ろし、掌で衝撃を吸収することで、ダメージを防いだ。


「やるね、ならこれはどうかな...!」


衝撃で後ろに跳んだキャリーノが地に足が付く前に接近し、左ストレートで的確に顔面を捉えるタイミングに入っていた。


はや!だが、今度はしっかり見えてるぞ...!


キャリーノはまだ両足とも地についていない状態で、首を右に傾け拳を最小限の動きで避けたかに思えた。


ゴッ!


「っ...!」


確かに今、俺は避けた。なのになんで当たったんだ...?拳が頬を打つ瞬間もしっかり見えていたはずなのに。


「あはは、びっくりした顔してるね。でも種は簡単。遠距離タイプの基本魔術。二つの片手(ダブルハンド)だよ」


二つの片手は、遠距離タイプの基本になる魔術だ。見えない両手を魔力で作りだし、自由に操れる魔術である。ただし原則として、作れる手は、左右一つずつであり、腕の周辺にしか作れない。


「キャリーノ様の力量も大体わかったし、今日はこの辺にしとこうか」

「あ、あい!ありがとうございました」


くそ、俺にまだ近距離タイプの基本しか教えていないくせに、初の模擬戦で、まだ習ってない魔術出しやがって。ずるいぞ、先生。まぁいい。得た情報も多いからな。思ったよりも動けたし、遠距離タイプがどんなものなのか知れただけでも収穫だ。だがいつか絶対ボコボコにしてやる。



キャリーノと、モーデストの初の模擬戦から約一時間後の、大広間にて。

今この部屋には、王のハーゲンノと、キャリーノの家庭教師である、モーデストと、ハーゲンノの護衛数名のみである。


「キャリーはどうだ?なかなか才能があると思うのだが、上手くやれておるか?」


ハーゲンノが、前置きもなしに、そう聞いた。普段なら、あいさつの一つもするものだが、ハーゲンノとモーデストの関係を考えれば、挨拶等は不要なものなのだろう。二人の関係については、今はあまり関係のないことだ。


「正直に言いますと、私は今、恐怖と興奮を感じております」

「ほぉ、恐怖と興奮か。して、それはなぜだ?」


モーデストは少し顔を落とし、自分の中にある感情を言葉にするために、数秒の間、思考していた。


「...私も昔は師がおり、様々なことを学びました。そして私自身も、弟子と呼べるものを幾つか、持っておりました」


そう前置きをするモーデストに、ハーゲンノは、目を伏せ、続きを促した。


「私の浅い経験ですが、ありのままの言葉で表現しますと、キャリーノ様は、異常です」


その言葉を聞いたハーゲンノは、目を一瞬ぴくつかせ、ゆっくりと目を開けた。


「異常とはどういうことか、簡潔に説明しろ」


少しいらだった様子で、ハーゲンノがそう言い放った。


「はい、あの方は齢五歳にして、身体強化では成人男性と同程度の力を持ち、模擬戦では、身体強化しか使えないにもかかわらず、私に迫る強さを持っていました。おそらくあれはセンスなのでしょうが...」


「なんだ、はっきり言え!」


あまりにもパッとしないモーデストの物言いに、ついに声を荒げるハーゲンノ。その声を聴いてもモーデストは、暗い顔をしたまま下を向き、言葉を探っている。


「私の感じたままを言いますと、あれは素人の、ましてや五歳の少女の動きではありませんでした」


モーデストは僅かに感じ取っていたのだ。キャリーノの持つ違和感に。

齢五歳の幼女が大人と同じ力を振るい、戦う術を持たないはずなのに、プロの魔闘師と数秒間互角に渡り合ったという事実に。


「教えてもいないのに適切な構えを取り、その状況に応じて効率的に動き、あれは異常です」


その言葉を聞きハーゲンノは、少し考えるそぶりを見せてから、モーデストに退室するよう言いつけた。


「う~ん...何とも信じられん話だのう...ま、強いのはいいことじゃしな」


国王は存外バカであった。

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