第四話 休日の出来事
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@giyonabe_saamon
初の授業から約一か月が過ぎた。
その間、あの地味nげふんげふん...モーデスト先生にいろいろ教わって、やっとまともに魔術が使えるようになってきた。
俺は近距離タイプの魔術がに適性があるらしいので、まずは基礎中の基礎、身体強化を学んでいる。
これは凄いぞ。五歳の女の子の、鍛えていないひ弱な体でも、一般的な成人男性並みの力になる。誰でもこんなにすぐに強くなれるのかと疑問に思って先生に聞いてみたところ、俺は普通の人よりも生まれ持った魔力がかなり多いらしい。だからまだまだ未熟な魔術でもそこそこの結果が出たらしい。調子に乗って、先生に腕相撲を挑んでみたが、小指一本で返り討ちにされた。魔闘師の中でも弱い部類に入る先生に小指で負けるようじゃ、この先、生き残れる気がしないな。
「おっと、そろそろ行かないと時間に遅れるな」
忘れるところだった。今日は姉さんと街に行くんだった。なんでも最近、俺が魔術だなんだと忙しいせいで全然かまってくれないと駄々をこね始めたのだ。まったく、いつもはもっとしっかりしているのに...。
「お姉さま!準備できました!」
「それじゃあ行きましょうか。じゃあお手手つなぎましょうか」
「うん!つなぐ!えへへぇ~」
いや、俺にも少し非はあるかもしれないな。だがこういう扱いをしないとすぐに拗ねてしまうのだ。姉は拗ねるとものすごく面倒くさいのだ。この前はトイレにまでついてきて、追い払ったら自分の部屋で遺書と首吊り用の縄を作っていた。この姉、すべてにおいて面倒くさい。
「それじゃ今日はキャリーの新しい服を買いましょうか」
うっ服か...。いや、しかたない。今はまだ成長している。育ち盛りだし、まだ五歳だ、これからまだまだ成長するはず...。
「あ、あい...」
こうして、王女二人と、護衛を乗せた馬車は街へと向かって行った。
「あー...いやな記憶がよみがえるー...」
「ん?キャリーノ今何か言った?」
「ううん、何も言ってないよー?」
あの時は本当にひどい目にあったな...。
そう、キャリーノは一年前にもこの街に来たことがあるのである。その時に誘拐され、もう少しで売られる。というところでぎりぎり助けられたということがあったのである。その話はまた別の機会に。
程なくして、馬車は街に着いた。
「それじゃあ、あそこから見てみましょうか」
「あい!」
チリンチリン
「いらっしゃい!おや、ミランダ様ご無沙汰しております」
店に入ると、服屋のおばちゃんの威勢のいい声が聞こえた。少し暗めの茶髪、気の強そうに吊り上がった青い目、今年四十には見えない、スタイルと、エネルギーに満ちた美人さんだ。ちなみにここは有力な貴族や、金持ちの商人など御用達のお店だ。店内も広いし、清潔感もある。市民向けの服も多く、安く扱っているから、幅広い層で人気を集めている。服の質はもちろん、店主のセンスが良く、すべてお任せするだけでも一興の価値あり。と、王都の中ではかなり有名な店らしい。らしいというのは、姉と母が話しているのを聞いた。
「ヴィーシャさん、お久しぶりです。今日はキャリーの服を買いに来ましたの」
「おや!この方が噂のキャリーノ様ですか、母君に似て、とてもお可愛らしいですね!」
「当然ですわ、私の妹なのですもの」
姉と出かけるといつもこんな感じだ。基本的にだれも止める人がいないから、最初は楽しく姉の話を聞いていた人も、しばらくすると、げんなりしている。この辺で止めておくか。
「お姉さま、あたち早くお洋服みたい」
「そうね、どんなお洋服がいいの?決められないなら私が決めようか?」
冗談じゃない。姉は唯一母が絶句するほどのセンスのなさだ。どれほどかというと、前世で例えるなら、ワイシャツの上にTシャツを着て、さらに真っ青なワンピースで仕留めにきて、最後はビーチサンダルでとどめだ。恥ずかしい。そんなチンドン屋はごめんだ。
「自分で決めます!それかヴィーシャさんに決めてもらう!」
そう言うと、姉は悲しそうな顔をしながらそう...じゃあ何かあったら呼んでね。と言い残し店の奥に消えていった。悪いがこればかりは譲れない。俺は恥ずかしい思いはしたくないからな。
だけど、俺自身あまりセンスがいいとはいえない。ましてや、王族の娘の服なんて選べないぞ。今までは使用人が買ってきたものを適当に選ぶか、母が選んでくれていたが、う~ん...こうして真剣に選んでみると、難しいものだな。しかたない、ヴィーシャさんに選んでもらうか。
「決めれない!ヴィーシャさん選んで!」
「う~んそうですねぇ...あっじゃあ作りましょうか!」
ヴィーシャさん曰く、店内に並べている服を選ぶのではなく、一から採寸し、要望に沿った服を作る。ということらしい。幸いお小遣いはかなりあるし、そうしよう。
「ちょっと待ったぁ!」
「ほえ?」
「私の可愛いキャリーの体を撫でまわす気なんか!?」
なんだ、この変態。口調まで変わってキャラぶれてんじゃねぇか。とにかく一旦落ち着いてもらおう。
今だにギャーギャー言っている姉をどうなだめようかと考えていると。
「ミランダ様、キャリー様には私の魂を込めた最高の服を着ていただきます。それを見たいとは思いませんか?」
「できるの?最高の服を着たキャリーを見せてくれるの?」
「当然です。私の魂に誓って、最高の服を作って見せましょう」
上手くなだめられたと思ったけど、これじゃあ後のしわ寄せを俺にしているだけじゃないか。服が出来上がったら着せ替え人形になること確定しているじゃないか。くそ、楽しそうに握手なんかしやがって。
こうして、問題なく採寸も終わり、生地や柄も全てヴィーシャのお任せにして、店を後にしたのだった。
「次はどこに行きましょうか、あぁ、キャリーとデートなんて久しぶりで興奮してしまいますわ」
デートじゃないし、年中興奮してるだろあんた。だがそうだな、本音を言えば今すぐ帰りたいが、それだと姉がまた暴走するだろう。かといってこれといっていきたいところもない。どうしたものか...。いや、待てよ...。
「あたち、おやつ食べたい!」
「そういえばもう昼過ぎね。昼食も兼ねておやつ食べに行きましょう」
よし!街に来たのは正解だったな。いつも王宮でいろいろなスイーツを嗜んでいる俺だが、たまには自分の気分と好みに合った物を食べたい。スイーツ好きは前世からなので、こればかりはしかたない。
さて、どの店にしよう。外食なんて初めてだ。わくわくしてきたぞ。
その後、手近な店に入り、昼食とデザートを食べ終わった一行は、おみくじで中吉が出た時のような、何とも言えない顔をしていた。
「と、とても美味しかったわね...冒険しない味というか...」
「なんか普通だったね...」
先ほど入った店は、別に不味かったわけではない。かといって美味かったわけでもない。普通。そう、普通過ぎるのだ。店の飾りつけも、メニューも、料金も、味も、全部普通なのだ。不味かったわけではないから、外れを引いたとは言わないが、何分楽しみにしていただけに、落胆も大きい。やはり、運なんかに任せてられないな。
その後も一行は、買い物を続け、空に赤みが掛かってきた頃に、帰りの馬車に乗り込んだ。
「今日はとても楽しかったわ!また行きましょうね」
「あい!次は美味しいお店見つけます!」
こうして馬車は、何事もなく王宮に着き、各々部屋に戻っていった。
何者かに目をつけられていることには、誰も気づかないまま...。
体調不良になってしまったので、少し投稿遅れます。