第二話 小さな姫の大きな野望
俺の名前は姫路 幸多。ただ運がいいだけの高校二年生だった。
だった、というのは今はそうではないからだ。今の俺の体はキャリーノ・マルールというこのマルール王国の第二王女ななってしまっている。目の色は金だし、髪は銀だしでもうこれは完ぺきな美少女お姫様である。自分で言うのもあれだけどね。
そんなわけで今は五歳になったよ。やったー。いやほんと、この五年間はマジで大変だった...
言葉覚えなきゃだし、運がないから、城の外を歩けば誘拐されかけ、じゃんけんでは一度も勝てず、さらに、とんでもない者まで引き当ててしまった...。
「キャリー?どこにいるのー?」
そう、これだ。今世の俺の姉、ミランダ・マルールだ。頭脳明晰、運動神経抜群、美人、人当たりもいいという完璧超人だ。一応俺の三つ上の八歳なのだが今の時点で求婚者が数えきれないほどいるそうだ。すべて相手にしていないらしいけど。その理由というのも...
「あ、いたいた。こんなところでなにしてるの?私のプリティシスター?」
そう、これだ。これである。この姉、とんでもないシスコンである。
どこに行っても付いてくるし、俺の周りの人にすぐ噛みつくから俺は姉と母親以外の人とあまり話せていないのだ。いや、別に姉が嫌いなわけではない。すべてにおいて完璧で、俺が関係していなければ誰にでも優しい尊敬できる人物だ。それに、いつもおやつを分けてくれる。
「んーとねー、ただお庭をお散歩してただけっ」
「おっと危ないあまりの可愛さに鼻血が...もうすぐ昼食の時間だから、戻りましょう」
「うんっ!」
おっと、気持ち悪いとか言うなよ。これは俺が生き残るための最善の手段なのだから。
俺はこの五年で、確実に運が尽きていることに気づいた。そしてそれは少なからず死や、それに近いことが起こりえるだろうということだ。だから俺は周りに媚を売ることにした。
今はまだ自分の力ではどうしようもないことも多い。故に今は媚を売り、もう少し大きくなったら自分を心身ともに鍛えようと思っている。だが、運がなくなって、いいこともあった。
今までは、すべて運の力を使って生きてきた俺だが、それがなくなったことによって、自分の力で成功を掴む。ということができるようになったのである。これはかなり大きい。俺は今まで様々なことをやってきたが、すべて運で決まってしまった。空手を習っていた時、大会に出場すれば相手選手が絶不調だったり、棄権して不戦勝になったりといった具合だ。だから、俺はこれからの人生を少しだけ楽しみにしている。などと話しているうちに食堂に着いた。
「おや、キャリー今日は何をしていたんだい?」
「中庭の散歩ですわ、お父様」
ご覧の通り、姉は基本的には自分か母親としか会話させてくれない。これは今の俺にとってはまずい。かなりまずい。人に媚を売り助けてもらうしか生きる方法のない俺にとって、頼れる人間の数はそのまま生存確率に直結していると言ってもいい。だから人との触れ合いを許さない姉は少し面倒だ。しかしまずいな、今日はいつにもましてハーゲンノが可哀そうな顔をしている。ちょっくら励ましてやるか。
「あのね、今日は蝶々さんがいーっぱいいたの!」
とりあえずこれでしばらくは上機嫌だろう。隣でミラが少し拗ねているが、まぁ、好感度は限界突破しているし多少は落ちても全く問題ない。
それから昼食を食べ終わり、自分の部屋に戻ろうと席を立つと。
「キャリー、お前にもそろそろ家庭教師を付けようと思うのだが」
突然ハーゲンノが言ってきた。なんでも、自分は魔力がそこそこ多く、将来は優秀な魔闘師になるだろうから、今のうちから鍛えておきたいそうだ。それに、これはすごく小さな声で言っていたが、どうも俺は周りから見ると危なっかしいらしい。知らんがな。だが、正直この話はありがたい。自衛の手段を得られるし、うまくやれば家庭教師を伝って強い人のコネも得られる可能性がある。なにより魔術を早く使ってみたい。だから、俺の答えは決まっている。
「ほんとう?やったー!」
当然家庭教師をつける。魔術かぁ...いったいどんな魔術がつかえるんだろう。今から楽しみだなぁ...早く使ってみたいなぁ...あ、ちなみに魔術については次回説明するよ!
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