私の婚約者
働きながらなので、なかなか更新が進まず申し訳ないです。
「あら、人気者のマッテオ・ルルシャント様ではないですか。人気の無いバルコニーに居るなんて、どうされましたの?」
バルコニーへと出ればそこには宮廷画家のマッテオ様。彼は平民ながらも名字を国王様より賜り、29という若さで王室筆頭の宮廷画家にまでなった若き新星だ。
「セリカ様、相変わらずつれない物言いですね。俺は貴女の未来の夫ですのに」
そう言ってマッテオ様はペリドットの輝きを放つ瞳を妖しく細めて見せる。
「まぁ。では、未来の旦那様が望むのであれば、甘い言葉でも囁きましょうか?貴方が、先日侍女に囁いていたように」
にっこりと微笑みを浮かべそう言えば、マッテオ様は一瞬瞠目するも、ハハと笑みを溢した。
「全く、セリカ嬢には敵わないな。俺がいつアゼリアを口説いてたのを聞いたんだい?君は王宮にいないのに、あちこちに耳があるようだ」
降参だよと両手を上げた後、彼はそっと私の腰に手を回してきた。どうやら婚約者らしくバルコニーをエスコートするから多少の火遊びを許して欲しいらしい。
別に、画家である彼の火遊びを咎めるつもりは始めから無いし、そもそもマッテオ様には沢山のご婦人のパトロンがいるのも知っていて婚約している私にとっては、女性を口説くくらいは彼にとって挨拶くらいの意味しか無いのも知っているのだから気を遣わなくてもいいのだ。が、わざわざ自分を下にする必要も無いので、私は黙って彼に身を委ねた。
「そう言えば、先日頼まれていたライオネルとロイドの絵が完成しましたよ」
柔らかい笑顔を浮かべてそう言う彼の言葉に、思わず私の頬が緩んだ。
「まあ!早く会いたいわ」
私の愛しいライオネル様とロイド様。先程からフィリア様のことがあったから、ライオネル様のことしか話して居なかったけれども、実は私はロイド様という豊かなグレーの色と輝く金の瞳を持つ2匹の猫と暮らして居るのだ。
王子であるクラウス様との婚約を拒絶してまで、女性遍歴が大変華やかなマッテオ様と婚約しているのは一重に彼が描くうちの子達が他のどの画家が描くよりも愛らしく素晴らしいからだ。
それに、何よりマッテオ様は私が嫁入りする時にこの2匹の猫達も連れてきてかまわないという素晴らしいことを言って下さったのだ。
公爵家という後ろ楯を得て出世したかった彼と、愛するにゃんズと死んでも離れたくない私の利害が一致してめでたく私達は婚約に至ったのだ。
因みに結婚後のことについてはお互いの恋愛には干渉せず、程よい距離感で世間から後ろ指さされない程度に、自由恋愛をして構わないという取り決めになっている。
王家に嫁いで一生猫と離ればなれになって、仮面生活を送るよりもかなり良い条件なのは間違いなく、私は二つ返事でお受けしたのだ。
早く生家を出て、にゃんズと悠々自適な暮らしが送りたい。
やっと出せた婚約者。だけど主要人物が出揃うまではあともう一息。