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「アーリヤを呼んで下さい」



クラウス様に近づくため、チートフル装備な妹を使う事にする。

一番近くに居た給仕にそう申し付ければ、給仕係は私に恭しく頭を下げると静かに去って行った。



エピナス家のアーリヤと言えば、姉の私よりも遥かに有名で、同じ髪と瞳の色を持つ私と比べるのも馬鹿らしくなるほどモテる。男女共に。そんな公爵令嬢を呼び捨てで、同じ髪と瞳の色を持つちょっと年増の女が呼びつけたのだ、王家に仕える給仕ならば私があの子の姉と何も言わなくても分かるだろう。



さて、問題はどうクラウス様にアプローチをかけるかだ。

下手にアーリヤを紹介してクラウス様にいらんフラグを立てる訳にもいかない。私はゆっくりとフロア全体を見渡しながら、フィリア様を探した。



メルキオール帝国の髪色は私が以前いた日本と比べてとても鮮やかだ。

だけどこの中でも特別なのが黒き髪を持つ者達。その家の遺伝の有無に関わらず、いきなり秀でた何かの才能持ちの証としてこの世界に生を受けるのだ。

その割合は全人口の数パーセントと言われている。

だから、世の中の大人達はフィリア様がお妃候補に入った時、彼女こそがと思ったのだ。まぁ、それを覆しちゃうのがヒロインなのだけどさ。

そんなことをぼんやり考えながらフィリア様を見ていると、小さな声でお姉様、と呼ばれ、私はふと我に返った。



「アーリー、来たの」



いきなり現実に引き戻された気がして、少しだけ不機嫌になってアーリヤの名前を呼ぶ。アーリーとはこの子の愛称だ。



「給仕の者からお姉様がお呼びだと聞きましたわ。どうされましたの?」



普段こんな夜会では人気者な妹に近付きすらしない私の呼び出しを疑問に思ったのか、無邪気にアーリヤは尋ねてくる。



「アーリヤ、あなたクラウス様と面識なかったわよね?」



私がそう尋ねるとアーリヤは僅かに頬を染めた。



「はい、あの、お恥ずかしいのですが、私、一人ではなかなかご挨拶に伺えなくて」



本来ならば身分が上の者が声をかけてくるまで待つのが貴族のマナー。だけど、この夜会は王家主催でしかも第一王子の婚約者選定の場の一つ。

第一王子の婚約者とはそれすなわち未来の皇后様。それを考えれば、ある程度の大胆不敵さや、周囲を黙らせて我こそが法であると言い切れる威厳も必要で、この場ではただ声をかけられるのを待つだけでは生き残れないのだ。



「ならば、この姉を上手く使いなさい。貴女一人だけでは角が立つでしょうから、そうね、フィリア様もお誘いしましょう」



何を隠そう、私セリカ・アラン・エピナスは3年前までクラウス様の婚約者、最有力候補だった。だから、実はクラウス様とは顔見知り、というか結構旧知の仲だったりする。現在、御年22歳のクラウス様、そして私は公爵家令嬢で19歳。丁度良い年の差、妃には丁度良い身分、ある意味一部の大人達からは私はクラウス様の婚約者としてとても都合の良い人材で、クラウス様が20の誕生記念に大々的に私を婚約者だと発表する予定でもあったらしい。

が、しかし、私は3年前にライオネル様に出逢ってしまったの。愛する猫を置いて嫁なんかに絶対に行かないと、あの手この手で、周囲を説得し、婚約話が表に出る前になんとか私は婚約者から外れたのだ。

そう、だから話は反れたが、私がクラウス様に話しかけるのはある意味物凄くインパクトが強い。

そして一度婚約話をエピナス家から頭を下げて断った以上、クラウス様がアーリヤに熱烈に惚れない限り二人が結ばれることは周囲の大人が許さない。

そんな思いからアーリヤを盾に、フィリア様をクラウス様に紹介しようと算段をつけた私はまた近くに居た給仕にフィリア様を呼んで来るよう声をかけた。




仕事終わりの一ページ更新。

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