悩める夜会
いきなり物語が、始まって皆さんお困りでしょう?このクイーンオブモブキャラの私、セリカ・アラン・エピナスがナレーション致しますわ。
そうね、まずここは中世ヨーロッパのような世界なの。煌煌しい、貴族の社会。夢と魔法とファンタジー、だけでは生き残りない。恋するうら若き貴族の子女にとっては、もっと殺伐とした恋と競争の世界。
私が、住んでいるメルキオール帝国は、帝国という呼び名に相応しい、強くて富んだ国。そしてそれを治める素晴らしい手腕を持った王家。
そしてその王家には今現在年頃の素敵な王子様。そしてうら若き乙女達にとってはとてもラッキーなことに、今はその素敵な王子様の婚約者の選定期間。
勿論、ある程度は婚約者候補は絞られて居るのだけど、それでも王子様の隣のお姫様の座への乙女達の執着は凄まじいもので、日夜見目麗しい乙女達が未来の妃の椅子を狙い切磋琢磨していますの。
公爵令嬢である私もまぁ、候補と言えば候補なのだけど、非公式ながらも実は王宮画家のマッテオ・ルルシャント様という10歳程年上の婚約者がいますの。
まぁ、それはさておき、婚約者の居る私が王家主催の夜会に何故居るかというと、3つ下の妹、アーリヤの付き添い。
と、こっちが本命でうちの猫にそっくりなフィリア様の恋を成就させようと企んでおりますの、ほほほ。
妹のアーリヤも王子様であるクラウス様に恋焦がれているのだけど、両親に溺愛されて欲しいもの何でも持っている妹が愛まで手入れちゃたらやっぱりお姉ちゃん腸煮えちゃうかなって思うしね。
何より、私の愛しい猫のライオネル様にそっくりなフィリア様がこのままだと謂れの無い罪で断頭台行きだもの。
やっぱり人命大事でしょう?
「そう思って来たのだけど、どうしましょうか」
ホールを見渡しながら呟くと、王子様と楽しそうにダンスを踊るアリス・ベガ・シーゲル嬢。
この世界である乙女ゲーム、「Jewelry」のヒロイン。
侯爵令嬢である彼女が自分だけが持つ輝きを見付けて真実の愛を手に入れるというゲーム。なんだけど、クラウス様ルートを盛り上げるのは、王家と侯爵家の間に立ちはだかる悪役令嬢フィリア様の公爵家という身分。
そこを納得させる為にアリス様は貴族の頂点である王妃の品格や振る舞いを手に入れないといけないのだけど、アリス様のご両親は彼女を平民寄りの思いやりのある親しみやすい娘に育てたから始めはそこが仇となるのだけど、逆にそこがクラウス様に気に入られハッピーエンドを迎えるという展開。
その間悪役令嬢になってしまうフィリア様はどうしてたかと言うと、真面目に王妃の品格や振る舞いを身に付けようとお勉強をし、時にはライバルであるアリスのことを認めつつもあまりに目に余る行動はきつめに注意してしまうのよね。
それに加えて、美人な彼女には言い寄る男が沢山いて、クラウス様にはあまり良い印象を抱いてもらえないのよ。
そこをどうすれば誤解が解けるか、まぁ、私がクラウス様に少しずつフィリア様の良い部分へ目を向けてもらえるように誘導するのが一番なんだけど・・・。
そこまで考えを巡らせて私はため息をついた。