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壁の花が見つめる先

久々更新!最近、寒いですね。



豪華絢爛という言葉がピッタリな舞踏会に私は地味なドレスで参加しながら壁の花に徹していた。

いや、だってこの舞踏会は私がアーリヤに恋人を見つけてあげるために、コネにコネを使い手に入れた招待だから。主役はあくまで天真爛漫な私の妹、アーリヤ。アリス様がこの乙女ゲーのヒロインで無ければ、間違いなくアーリヤがヒロインになっていたであろう、我が妹を満足させるには手っ取り早くゲームの攻略キャラとくっつけてしまえば良いと言う私の安直な考えだ。

そしてこの舞踏会はjewelryの攻略キャラ全員が絶対に出席する。何故って予言の力を持ち、メルキオール帝国の魔女と名高いサファイア・ローレンス様が主宰だから。そして今夜この場でサファイア様は予言する、光の乙女について。



今夜からアーリヤの運命が大きく変わるであろう事に憂鬱になりながらも、私はアリス様と楽しそうに話しているアーリヤを見つめた。今までアーリヤの事など関係無いだろうと思っていたけど、お父様から彼女を幸せにしろと言われてしまえば、この乙女ゲームの世界観を無視した行動は出来ない。何故って、何故だか最近アーリヤがヒロインのアリス様と仲が良いから。このゲームはヒロインに親友ポジションの令嬢が必ず登場する。しかも、その親友はヒロインの能力値で変わり、ヒロイン自ら親友ポジション候補から選べるという手の込んだ仕様だ。そして恐らくアーリヤはアリス様の親友ポジション。って事は、だ、サファイア様が予言する光の乙女はうちの妹、アーリヤになるはずなのだ。




「おや、珍しい、今日はずいぶんと壁の花に徹してるんですね」



ぼんやりとアーリヤを眺めていたら少し嫌みな言い方で、神経質そうな男が話しかけて来た。



「こんばんは、ユリウス」



今まで意図的に関わらないでいたjewelryの攻略キャラ、ユリウス・ラディエンス。平民から財務大臣まで大出世を遂げた父を持つ、このゲーム内一の神経質男だ。



「レディ・サファイアの舞踏会とか貴女は一番嫌いそうですが今夜は妹様の付き添いですか?」



人を小バカにしたように見下しながらユリウスは口を開く。



「そうね、いくら魔力を持ち、未来を視られる能力のあるお方でも、猫贔屓な私は犬贔屓な方の事は好きではありませんの」



以前、王都学園の学生時代に、家の力目当てで私に共に商売のパートナーにならないかと誘われた事を思い出しながらそう呟けばユリウスは笑いを溢した。



「失礼、貴女は妹様も犬も嫌いでしたね」



「あなたと違ってね」



主人に忠実な犬をこよなく愛する彼とは学生時代からとことん馬が合わなく、私が彼を避けまくったのは、懐かしい思い出だ。



「噂が、ありまして」



アーリヤから目を離すことなくポツリと呟く。



「噂、とは?」



「サファイア様が今夜、光の乙女について予言をするのでは、と」



「......それは初耳ですね。でも、もし、現れたら乙女は王家に保護されることになるはず。サファイア様のように魔力を持つ人間は貴重ですからね」




そう言うユリウスに私は頷いてみせた。光の乙女。それはこの世界では魔力を持つ女性を示す。jewelryの世界には魔法は存在するがそれは人口の1%にも満たない人間、それも女性にしか使えない特殊能力で、その能力はある日突然現れる。そして、サファイア様が帝国の魔女と名高いのはその魔力の特性が予言の能力に特化して高く、戦争の動きからこういった特殊能力を持つ人材発掘まで様々な事を見透せるのだ。



そしてこの魔力がヒロインのアリス様ではなく、親友ポジションの子に現れるのが、このゲーム最大のミソなのだ。『私も、誰かの特別になりたい』それがこのゲームのキャッチコピー。特殊能力の無い、平凡なヒロインが、親友の光の乙女という覚醒イベントにより、親友を羨む。そして自分の存在意義に悩みながら、様々な経験を恋愛を通してし、自己のアイデンティティーを確立していくという物語。主人公補正の愛され能力と見た目の可愛さ以外は全くの平凡ヒロインが有望株をゲットするというこのゲームはある特殊な設定が前世の世界で一部のコアなファンに大変ウケた。まぁ、私もそんな一人だったんだけどさ。




そんな回想に耽りながらも周囲を見渡してこの舞踏会の顔ぶれをみる。




まずは、メイン攻略対象である王子のクラウス様、神経質嫌味男...世間的、ゲーム的には敏腕腹黒商人のユリウス、あとは、私とはあんまり関わりは無いけれど、侯爵家長男でありながら医師を目指すアルバート・フォン・ルブラン様、そして最年少でありショタ枠なはずなのに、ゲーム内で一番色気を振り撒く小悪魔エディオン・シェル・ツアイス様、あとは、確か隠しキャラで、近衛騎士のリアム・ソムワーズ・マリオット様。



攻略対象だけ見ると私と関わりのあるのはクラウス様とユリウスくらい。アルバート様もエディオン様もまだ王都学園の学生なので、どちらかと言えばアリス様やフィリア様、そしてアーリヤの方が接点が多いと思う。近衛のリアム様に関しての接点と言えば、私の場合はクラウス様や王宮騎士のルイス様くらいしか接点となるものが無い。




改めて振り返ると、ほぼほぼゲームの内容との接点がクラウス様関連しか無いため、やっぱり自分はモブだったと安心する。だが、いくら自分がモブだからと言っても、のうのうと生きている訳にはいかない。



私にはヒロインであるアリス様を退け、フィリア様とクラウス様をご成婚へと導くキューピッドにならなくてはいけないのだから!




「サファイア様が出てきましたよ、」



自身の使命にひっそりメラメラと闘志を燃やして居れば、まだ側で突っ立っていたユリウスが私に声をかけてきた。...いい加減、そろそろどこか行ってくれると私は嬉しいのだが。




「見れば分かります」




素っ気なく返して、広間へと目を向ければ壮年の女性が広間へと出てくる。舞踏会の主催は王家だが、この舞踏会は3ヶ月に1度サファイア様がこの国の貴族へ様々な今後に対する予言を授ける場であるのだ。




「皆さん、今日はありがとう」



広間の中央へと進み出ると、サファイア様はそう一言、声を放つ。瞬間、辺りが静まりかえった。



「今日はこの国にとって、とても大切な予言を致します」




光の乙女について、と呟いて艶やかな笑みを浮かべると、サファイア様は一人一人の顔を見るようにゆったりとした動作で、広間に集まる人々を見渡した。






この1話に名前だけ登場する登場人物が新たに沢山。

ちゃんと皆それぞれ上手く出せたら良いなぁ。

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