言い得て妙
いつも愛読ありがとうございます!
攻略本が使え無い、いや、ゲーム通りに話が進んでくれない、大変困った事態になった。
ただでさえそんなに興味の無かった王子、クラウス様ルート、なんとなく覚えている要所、要所。しかし、それも使え無い。流れが変わって来てしまっているから。
そもそも、ゲームの中でエピナス家、というより私、セリカが登場することはほぼほぼ無かった。
私の記憶では何らかの理由で彼女はお妃候補では無くなった、とだけ。チートキャラの妹アーリヤは悪役ではなく、アリス様の良きライバルとして登場して居たけれど。
どうすればフィリア様を幸せに出来るのだろうか。
今回のイベントもアリス様のポジションにフィリア様が入り込めば上手くいくと思ってた。けれど、実際にイベントを起こしたらフラグが立ったのはこっちだった。
「ああ、あ、あ、あー!」
今思い出しても腹立たしい。
アレをフラグと思う自分すら忌々しい。
「あー、もう!」
このなんとも言えない気持ちをどう表せば良いのか、私は一人で奇声を発することしか出来ない。
「あー!」
「お嬢様、いい加減に静かにして下さい」
ピシャリとメリッサの声が私の声を遮った。
「先日、フィリア様とお出かけになられて、王子殿下の馬車で送られて帰って来られて以来、不気味さに拍車がかかっております。屋敷中の者が不審がってます」
「分かってるわよ、あなたの言いたいこと。マッテオ様と婚約するはずの私が、何故今更クラウス様と懇意にしてるのかと、アーリヤじゃないのかと、屋敷中の者がそう言いたいのでしょう?」
私と長い付き合いだからこそ許される、無礼なメリッサが核心を突いてくる。
ちなみに、この屋敷の者達は私に対してもアーリヤに対しても割りと平等だ。勿論、私付きだったり、アーリヤ付きだったりすれば主人贔屓にはなるが。
これだけ私にずけずけ言うメリッサも、実はちゃんと私贔屓だったりする。
そう、メリッサは私贔屓なのだ。
「......」
じっと、メリッサの顔を見て考える。なんだかんだ言っても彼女とは長い付き合いで、私の事を実は一番に考えてくれるのだ。
今回の事を相談すれば何かしら良い案をくれるだろうか?
「...例えば、だけど、クラウス様とフィリア様をくっ付けたいとするわ、」
「それは、随分と無茶振りな例えでございますね」
「もう!そう言う感想は後で聞くから、聞いて!
例えば、よ?ところがクラス様の興味の対象がアリス様だったり、アーリヤだったり、私とかだったりする場合、どうすると上手くいくかしら?」
「それは...」
「良いから、メリッサ、あなたの意見を聞かせて?」
色々言いたげなメリッサの目を無視してそう言えば、メリッサはふむ、と顎を抱える。
「私の意見で宜しいのですか?」
「ええ、あなたの意見が聞きたいの」
ある意味詰んでる今の状況では猫の手ならぬ、メリッサの意見すら欲しい。
「では、素直に申し上げますと、フィリア様とクラウス様の件は諦めて、お嬢様とクラ...」
「それは無しの方向で、」
言いかけたメリッサの言葉を遮りそう言えば、メリッサはまたもやふむ、と顎を抱える。
「馬車でクラウス様と何がありました?」
「何も」
「では、あの日以降、城からクラウス様の遣いの者が来ては、お嬢様は顔すら出さず追い返す理由を尋ねても?」
「ダメよ」
「では、お嬢様はクラウス様に惹かれておりますか?」
「全く、」
「即答ですか」
「興味も無いわ」
「では、どのような殿方ならばお嬢様は興味を示されますか?」
「私にはマッテオ様がいるわ」
「利害関係無く、心から惹かれるお方はいますか?と尋ねているのです」
いつになく突っ掛かってくるメリッサに私は口を尖らせる。
「心より惹かれる方、意中のお相手が居ないのならば、私はクラウス様にもチャンスは与えるべきかと思います」
「...理想が無い訳ではないわ」
じっとこちらを見るメリッサにポツリと私は呟いた。
「アーリヤと、比べない方が良いわ。いつまでも恋人のように過ごせる方」
クラウス様とフィリア様をくっ付けよう相談会のはずが、メリッサに話題をすっかり変えられ私は半ば自棄になりながら呟く。
妹と比べられたくないとかどれだけ劣等感を感じているのだと思いながらもそう言えば、メリッサは柔らかく微笑んだ。
「ならばお嬢様が早くその理想の方を見つけられる事です。自分が幸せでないと、他の方を幸せには出来ませんよ?」
言い得て妙というか、なんというか、とっても負けた気分なのはメリッサが言うことが事実だからなのかもしれない。
私はため息を溢すと膝の上で眠りこけているロイぴょんを一撫でするのだった。
本当はクラウスサイドで書こうと思ってたけど、まだ分からない方が面白いかなぁと濁して主人公サイドに。
フィリア様幸せ大作戦と平行してセリカ幸せ大作戦もしないとね!(いや、むしろそっちがメインだけど)




