プロローグ
思いつきで始めた新しい切り口の転生もの小説です。
少しでも、楽しんでもらえたら嬉しいです。
艶やかで流れるような黒髪にどこまでも澄み渡った青い瞳。しなやかな姿。黙っているだけ怒っているのかと勘違いされてしまいそうになる少しきつめの、だけどとても美しい顔立ち。
フィリア・マル・シャルマントはメルキオール帝国の5大公爵家のうちの一つ、序列第三位のシャルマント家長女であり、メルキオール帝国の第一王子であるクラウスに恋焦がれていた。
そして周囲の人間のほとんどがその可愛らしい初な初恋は実るものだと思っていた。
だけど、それだけでは駄目なのだ。何故って、だって、王子は夜会で出逢った別の乙女に恋に落ちるから。
そして、彼女、フィリアはあれよあれよという間に悪役令嬢への階段をかけ上がり、最期は断頭台行きの運命を辿るのだ。
「こうしちゃ居られないわ」
お茶を飲んで居たら何故だかいきなり脳内に浮かび上がってきた過去の記憶(正式には、前世の記憶だが)に、私は呟いた。
記憶を頼りに、振り返ると、どうやら私は前世でプレイした乙女ゲームのモブキャラに転生したらしかった。
そう、何を隠そう私の名前は、セリカ・アラン・エピナス。
メルキオール帝国5大公爵家の一つ(因みに序列は第五位)、エピナス家の長女であったりするのだが、そんなハイステータスな地位に居ながら、ゲーム内では家名しか登場しなかったという、立派なモブキャラだ。
そしてモブキャラに転生した私は今、ヒロインではなくゲーム内の悪役令嬢に味方しようと心に決めてしまった。
何故って、そりゃあ、王子様やイケメンと恋愛するよりも、ヒロインの邪魔をしてみるのも楽しそうだし、何より私は、ライオネル様に瓜二つのフィリア様を見捨てる事なと出来ない。
え、ライオネル様が誰って?そりゃあ、私が家のお猫様以外いないじゃないですか。
そう、私、セリカ・アラン・エピナスは、筋金入りの猫狂信者。うちの猫に似ているフィリア様を見捨てるなんて出来ません。
せっかくのモブキャラ人生ですが、前世の記憶を駆使して、(うちの猫に似ているので)悪役令嬢を助けることにしました。