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03 ギルド登録ともうひとつの名前

 前世の記憶を思い出してから3日後の、お昼少し前。


 『私』は、城下町の冒険者ギルドの前にいた。格好も、最低限の冒険者仕様だ。田舎から出てきたお上りさん仕様ともいう。


「おお、いかにもな建物…わくわく」


 城ではユーリに『今日も部屋で本を読んだりお昼寝したりして過ごすよ。あ、お昼も簡単なものでいいから、扉の前のテーブルに置いておいて』と、一日引きこもり宣言をしておいた。まだちょっと病み上がり扱いなのでうまくいった。


 そして、12歳・男から16歳・女にステータスを変更し、前もって手に入れておいたメイド服に着替える。その後、


「『転移』」


 と、これまた前もって追加・確認しておいた転移スキルを使って、城の裏手に移動した。あとは、持ち出したお金で初心者装備を店で購入して更に着替え、現在に至る。


 魔法に関しては、ステータスにデフォルトで登録されていた『火、風、水、土』属性以外のものはないことを、城の書物を読んで把握した。つまり、これらの適正や能力はこの世界に普通に存在するわけで、BWHのアレのように、ステータス画面で改変したり強力にしたりするには、膨大な魔力が必要になる。人並みのMP容量であるうちは避けるべきだろう。


 逆に言えば、『ありえない』改変は明らかにユニークでチートな転生特典スキル。一回使ってもなぜかMP1ポイント、最低限の魔力減少しか起きなかった。加えて、誰かに直接改変を見られても夢か幻を見たんじゃと誤魔化せそうだし、正直に言ったところで信じてくれないだろう。なので、その辺は前世の概念をフル活用して好きにやることにした。『転移』は、その活用のひとつである。


 そういうわけで、この世界でも普通に存在していた職業、『冒険者』をやってみようと思ったのだ。


 ぎいっ


 ウェスタン映画に出てきそうな酒場のような雰囲気の扉を押し、建物の中に入っていく。


 そこには、屈強なおじさまやおば…お姉様方が、エール片手にたむろっていたり、受付の前でガヤガヤやっている光景が広がっていた。いいねいいね、剣と魔法の異世界っぽくなってきたよ! 今までは、皇城の中とか、ある意味普通の街並みしか見てなかったからなあ。


 ガヤガヤ…

 ………

 ……


 じろっ


「おお、異世界テンプレの極地…!」


 そんな屈強な冒険者達が、入ってきた私に気がつくと、一斉に目を向けてくる。うんうん、世間知らずの小娘に対して睨んでるって感じがとっても素敵だ。


 そんな感慨(?)に浸っていると、おじさま方のうちのひとりがエールをテーブルに置き、私のところにやってくる。


「嬢ちゃん…もしかして、冒険者登録か?」

「え、は、はい! そうです! えっと、受付は…」

「ふん…!」


 がしっ


 突然、私の両肩を掴むおじさま冒険者。

 これは、早速私のチート(既に追加した『重力制御』あたり)が炸裂して…!


「…悪いことは言わねえ、冒険者はやめとけ。嬢ちゃんなら、宿屋の食堂の給仕(きゅうじ)だけで十分やっていける」


 …ん?


「おー、お嬢ちゃんがいる宿屋なら、オレすぐそこに移っちゃうぜ!」

「ああん? みすみすてめえの毒牙にかけるようなことさせるかよ!」

「ちょいとあんたら、アタシの酌じゃ飲めねえってのかい?」

「リーダーのは酌じゃなくて(ひしゃく)じゃねえか!」

「あんだってー!?」


 わいわいわい


 おおう…『優しい世界』タグ作品だった。ちょっとこれは予想できなかった。あと、寒いダジャレも。


 でもまあ、プランBで行けるかな。


「あ、あの、お気遣いありがとうございます。私、薬草採取から始めたいと思ってて…」

「ん? 嬢ちゃん、薬草に詳しいのか?」

「はい! 田舎に住んでいた頃、村の人達が数十種類くらいの薬草について詳しく教えてくれて…」

「「「「な、なんだってー!!!???」」」」


 あれ? なんだろ、このチート級の反応。受付のお姉さんも驚いてるよ?

 おかしいなあ。魔法のついでに薬草についても本で調べたら、むしろ数百種類は世の中に存在するっていうんで、心置きなくステータスに『鑑定』を追加したんだけど。数百種類の区別はチートでも、普段よく使われている数十種類は別に…と思ったんだけど。


「おいおい、嬢ちゃんの出身地って『魔女の里』か何かか!?」

「…はい?」

「それだけの種類の薬草を集めてたってことだろ? そりゃあ、世の中に存在するのは知ってるけどよ、区別できるほど『見たことがある』ってのは、尋常じゃねえぞ」


 …あ、しまった。


 そうかそうか、そうだった。この国というかこの世界、『紙』が普及してなかった。木板や金属板など、普通はそういったものに文字を記録する。つまり、『絵』は大変厳しい。そういったものも描かれている本の類はえらく高価…というか、もはや絵画のような芸術作品扱いされている羊皮紙の書物が、皇城の資産として存在しているに過ぎない。そんな『僕』は皇族だった。あははは。


「えっと、すぐにわかるのは十数種類くらいだと思いますよ? そもそも、皇都近くの森にはそれくらいしか…」

「それでも十分だぜ! おーい、ノーラちゃん! この娘をすぐにギルド登録してくれ!」

「まっかせてー!」


 冒険者ギルドは、ノリが良かった。

 まあ、プランA(重力制御で蹂躙)とかせずに済んだのは良かったけど。


 ちなみに、紙が普及していないせいだろうか、『ギルドカード』なるものは発行されなかった。名前と年齢を伝えると、冒険者管理用の木板を作成してギルド受付に控えておくだけだそうだ。テンプレ外しの法則がわからんな、この世界…。


「『アオイ』さんですね。これからよろしくお願いします!」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


 前世の名前は、瀬川(せがわ)(あおい)

 16歳・女の『私』も、アオイと名乗ることにした。


 これからの二重生活、がんばるぞー!


「アオイさん、では早速、希少薬草の採取依頼を…」

「あ、先に何種類か採取しておきました。これでいいですか?」


 どんっ


「え!? え!? 今、どこから出したんですか!?」

「えっと…スカートのポケットから?」

「こんなに入るわけないじゃないですか!」

「入ったんだからしょーがないじゃないですかー」


 よし、『収納』を使ったお約束をクリア! もちろん(?)、昨夜のうちに『重力制御』で森に飛んでっていくつか摘んで、『転移』で戻ってきました。次は何をしようかなあ。

確認メモ。この回の『アオイ』のステータス設定。

--

【氏名】アオイ

【生年月日】帝国歴XYZ年WY月VX日

【性別】女

【住所】神聖レグリシア帝国皇城本邸二階(!)

【魔法属性】火、風、水、土

【HP】10/10

【MP】15/15

【B/W/H】!!/??/??

【スキル】転移 収納 鑑定 重力制御 洗浄

--

BWHのBは性懲りもなく毎回修正している模様。

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