02 ステータス画面とスキルの検証
「うーん、表示項目はこれ以上増やせないなあ。HPやMPに相当するものがあれば『な、なんて魔力量だ!』って遊べるのに」
などとアホな独り言をつぶやきながら、ステータス画面をタブレット端末のようにつついてみる。が、メニューも出なければスクロールもされない。結局のところ、保険証か何かがARのように表示されているだけの状態だ。
「ダブルタップもスライドも反応ないなあ。長押しは…」
ピコン
「おおっ、ようやく反応が! でも、これってただ項目が反転するだけ…?」
今は、『男』の文字の色が反転している状態である。しかし、そこからまた何も反応しない。
「うーん…この反転部分を『女』とかに変更できれば面白いことに…」
しゅんっ
「『女』に変更された!? キーボードの代わりに音声か思考で…って、身体が光って…!?」
ぼわっ…
「っ…!?」
痛くはないが、体全体が何かに組み直されていくような、そんな感覚がしばらく続いて…
「…ふう。これって…うん、やっぱり」
身体のしかるべきところを触ると、いろいろと懐かしいものを感じる。書き換えた通りに『女』になったようだ。
「これはまさしくチートだなあ。何の役に立つかわからないけど。あ、でも、生年月日の欄を変更して…」
ピッピッ
ポッ
カッ…!
「くっ、さっきよりも光が強く…!」
しばらくして光が収まると、背丈が少し伸びた身体が現れる。前世の最期の頃と同じ、16歳設定だ。元のミリオンがショタ…もとい、背が低い方なので、余計に目線が高くなったように感じる。ゆったりした部屋着で良かった。
「面白い事は面白いけど、やっぱり用途不明かなあ。ステータスを解析して書き換えるって作品があったけど、これは何も解析してくれそうにないし」
16歳・女のまま、更にステータス画面をいじっていく。
「魔法属性の欄は下手に変更しない方がいいよね。もうちょっと、この世界の魔法に詳しくなってからでないと…あれ?」
魔法属性欄の最後の『土』の、更に横の何もないところを長押ししたら、その部分が点滅し始めた。これは…
「もしかして、『追加』できるの!? なら…」
声に出すのは恥ずかしいので、頭の中であれやこれやと考えて…。
ぴっ
ふおんっ
「おっ…おおおっ」
胸が、ばーん。腰が、きゅっ。お尻が…これも、きゅっと。
「みんなのあこがれ、ナイスバディ! うふふふふ…あ、あれ?」
くらっ
身体をくるくると回していたら、平衡感覚がなくなり、目の前が暗くなっていく。
「立ちくらみ…じゃ、ない、な。も…しかして…魔力、切れ、ってやつ…」
とすん
なんとか部屋のベッドに向かって身を倒した私は、『BWHなんかの前に、HPとMPの項目を追加すべきだった…』と思いながら、そのまま意識を手放した。
◇
幸い、魔力切れで気を失っていたのは一時間ほどだった。目を覚ました後、一度ステータスを元に戻しつつ、HPとMPの項目を追加してあれこれ調べた。
「項目の追加だけならHPやMPは消費しないのかあ。で、値の変更にMPが使われる、と」
MP消費が一番激しかったのは、BWHのうちのウェスト値の変更だった。なぜに。性別や年齢の変更の方が消費しそうなんだけど。
「ウェストとかは、これ使わなくても食事や運動に気をつければなんとかできるし…あ、そういうこと?」
努力でどうにかなるところは自分でなんとかせいってことですか。神様チート的だなあ。神様会ったことないけど。
「あとは…」
チリンチリン
がちゃ
「ミリオン様、お呼びでしょうか?」
「うん、おやつが欲しいな」
「では、クッキーと紅茶を用意いたしますね」
部屋にやってきたユーリに向かって『ステータス・オープン』と念じる。
…
……
………
「ミリオン様、どうぞ。ミリオン様?」
「あ、ああ、うん、そこに置いて。というか、ユーリも一緒に食べよう」
「よろしいのですか? では、せっかくなので」
そうして、部屋のテーブルの椅子に座って嬉しそうにするユーリ。クッキー好きだもんなあ。…って、そうじゃなくて。
「見れるのも改変できるのも、自分のステータスだけかあ…」
「?」
まあ、いいんだけどね。
ただ、ユーリの生年月日だけは知りたかった。見た目10代前半なんだけど、『僕』が生まれるはるか前から城で働いていると聞いている。ユーリも何か特別なスキルとかがあるのだろうか?
え、直接尋ねないのかって? 女性に年齢を尋ねてはいけません。