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01 前世の記憶と発現スキル

 数か月前の、その日の朝。


 目が覚めたら、見知らぬ天井だった。


 うん、最近読んだラノベとそっくりのシチュエーションだ。シチュエーション、シチュエーション、…


「えええっ!?」

「きゃっ!?」


 ベッドからガバッと勢いよく起き上がったら、近くにいたメイドさんがびっくりした声を上げながら佇んでいた。


「ミリオン様!? ああ、良かった、お目覚めになられた!」

「え? えっと、あなたは…っと、いや、ユーリ、おはよう。迷惑をかけたようだね」

「め、迷惑だなんて…。ああ、陛下達にお知らせしなければ!」


 慌てたように部屋を出て行く、メイドのユーリ。


 でも、しかたないか。12歳の誕生日を迎えたその夜、熱を出して意識を失ったのだから。それからどのくらい経ったかわからないけど、この感じだと、だいぶ長い間眠っていたようだ。


 …少し混乱していた記憶を整理しながら、頭の中でそうつぶやく。


 ミリオン・ラーク・ド・ハイドス。神聖レグリシア帝国皇帝、シオニス・ルート・ド・ハイドスの三男。それが、今世の僕の名前であり、立場だった。


 …前世は、普通の女子高生(・・・・)だったんだけどなあ。そのことを、目を覚ました時に思い出していたのだ。



 普通の高校生らしく、異世界転生モノ作品は一通り目を通していた。とか言ったら、親友のクラスメイトに引かれた。いいじゃない、記憶を持ったまま生まれ変わり、剣と魔法の異世界でチートでハーレムでリッチになるなんて。


「ちょうどそんな会話を繰り広げた日の下校時に、めでたく転生トラックに突っ込まれたのは、何かの皮肉か御都合主義か…」


 前世の両親や友人達には悪いけど、今世の『僕』は帝国の皇家の人間として生まれ、何不自由のない暮らしをしている。しているのだけれど…。


「なぜにTS!? いや、ショタっ子も好きだったけどさ、自分がそれになるのは違うでしょ!」


 一応、男の子として過ごした12年間の記憶は普通に残っているので、今後の生活にも支障はないだろう。たぶん。


 が、思い出した前世の記憶を踏まえると、どうにも不満が募る。


「ううう、逆ハーできないじゃない…」


 悪役令嬢モノも好きだった『私』としては残念至極。婚約破棄ルートを回避して逆ハーという定番が選択できない。なんか前世の親友のジト目が見えてきたような気がするが。


 それと、もうひとつ。


「ミリオン様、朝食はいかがいたしましょう?」

「えっと…魚、はあるかな?」

「申し訳ありません、さすがに魚は…」

「そ、そうだよね、昨日のうちに凍らせても、次の日の朝までもたないもんね…。じゃあ、卵焼きで」

「かしこまりました」


 この世界、魔法は割と普及しているけど、魔道具、とでも言えばいいのだろうか、そういった便利グッズの類はまるで発達していない。だから、光魔法や氷魔法はあっても、人間が行使し続けなければ効果は消える。


 なら、夜の間も誰かが行使し続ければいい? それは『神の下の平等』に反するのだそうな。魔法自体が、神より授かった権利と義務、という宗教観が根本にあるらしい。おかげで、バリバリの階級社会なのに、こと魔法が関わる労働に関しては、前世の現代日本よりはるかにホワイトなのである。


「魔法の効果を貯める何かがあればいいのかなあ、魔石とかなんとか…」


 とにかく、今の地位も将来の見通しも悪くはないのだが、前世と比べていろいろと不便だし、窮屈でもある。せっかくの異世界転生なのに。


 転生時に神様に会った記憶もないし、チートなスキルとかもなさそうだよなあ。せめて、『ステータス・オープン』とか言ったら、ぶおんって画面が出てきて…


 ぶおんっ


「うそっ、考えただけで!?」

「な、何がですか!? どこかお悪いところがまだ!?」

「あ、や、なんでもないよ、うん」


 ユーリには見えてないようだ、この『ステータス画面』。


--

【氏名】ミリオン・ラーク・ド・ハイドス

【生年月日】帝国歴XXX年YY月ZZ日

【性別】男

【住所】神聖レグリシア帝国皇城本邸二階

【魔法属性】火、風、水、土

--


 住所にわらた。本人確認書類ですかい。年齢じゃなくて生年月日なので余計にそう思ってしまった。


「ごちそうさま。…今日は、特に予定がないよね?」

「はい。ミリオン様が目覚められたので、陛下を始めとした皆様は仕事に向かわれました。皇城の教師も、しばらく控えると」

「みんなにはだいぶ心配させてしまったようだな…。じゃあ、部屋で本でも読んで過ごすよ」

「わかりました。御用の際にはベルでお知らせ下さい」


 ちょっとさびしいが、しかたない。というか、今はむしろ都合がいい。部屋にこもってステータス画面の検証だ!

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