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「以前のって、まさか……」


「そのまさかだ。食物連鎖の頂点に君臨するオオカミさえいれば、コヨーテの個体数増加に歯止めがかかり、アメリカ赤鹿に天敵ができることで捕食され自然とアメリカ赤鹿の個体数が減少する。そうなれば森林の食害も減り、悪化していた自然環境は回復すると考えた。そこでカナダから野生のハイイロオオカミが輸送され、1995年にオオカミが再導入された」


「オオカミが絶滅した土地に、他の国からオオカミを連れて来て野生に放ったの?」


「ああ。結果としてカナダから導入されたハイイロオオカミはアメリカ赤鹿を捕食するようになり、アメリカ赤鹿の個体数は減少し、森林の被害は減少していった」


「食害を受けていた森林の環境が改善したのね」


「それだけじゃない。天敵のオオカミを恐れたアメリカ赤鹿が敵に狙われやすいような、見通しの良い場所を避けるようになったことで甚大な食害被害を受けていた土地はみちがえるように植物が芽吹き始め、その植物に昆虫が集まるようになり、昆虫をエサにする小鳥たちも集まるようになった。そして天敵のオオカミが出現したことによってコヨーテの個体数は減少し、アカギツネや絶滅寸前まで数を減らしていたビーバーの個体数も回復していった」


「すごい! オオカミを再導入したことで生態系が元に戻ったのね! じゃあ、日本でもオオカミを再導入すれば良いんだわ! 中国から朱鷺(トキ)を連れて来て日本国内で放鳥しているように、カナダからオオカミを連れて来て放てばいいのよ! 日本には元々、ニホンオオカミがいたんだもの。オオカミさえ連れてくれば、北海道の生態系も元に戻ってエゾ鹿の個体数が減少して、食害による環境破壊の状況も改善されるはずだわ!」


 日本国内で絶滅したトキを中国から輸入し、繁殖させる試みが何度も試されているというのをテレビで見たことがある。つまりすでに日本でも一度、絶滅した生物を海外から連れて来て野生に放つという取り組みをやっているのだ。


 イエローストーン国立公園の実例がすでにあるなら間違いないだろう。きっとこれで全てが解決する。私には最善の策に思えたが、兄はすげなく首を横に振った。


「そうなると分かっていても、日本で即座にオオカミの再導入がされることはないだろう……」


「なんで? 生態系を元に戻すなら、オオカミを連れて来るのがベストじゃない」


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