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「色々あったけど、コロちゃんはお手柄だったわね。あの時、私たちを鹿の死骸まで連れて行ってくれたおかげで真相に近づけた訳だし……」


「まぁな……。おかげで物証が入手できたし、金森が日常的にハンターとしてのマナー違反をしてるのもすぐ分かった」


 兄はエゾ鹿の死骸から鉛弾の欠片を見つけた時から、元凶が鉛弾だと把握していたのだろう。私は鉛なんて普段、触らないし金属の見た目だけで材質を完璧に把握することなんてできないから全く分からなかった。


 ただ『鉛色の空』みたいな言い方があるが、あれは鉛のような黒灰色の今にも雨が降りそうな空色の例えだったんだなぁと、今さらながらに気付く。


 悔しいが兄がいなかったら『エゾ鹿の死体に仕込まれた毒』の真相に気付くことはできなかっただろう。そんなことを考えていたら、横に座っていたコロちゃんが私のヒザの上に乗ってきた。


 甘えてるのかと思い赤茶色い背中をなでようとしたが、コロちゃんのつぶらな黒い瞳は窓の外をじっと見つめている。それを見た兄は後部座席から運転席の椅子上部に手をかけ、軽く身を乗り出した。


「悪いが車を停めてくれ……。少し、外に出て風景を見たい」


「へ? こんな所で?」


 私が戸惑っている内に運転手は兄の指示通り、タクシーを路肩に停車させた。後部座席のドアを開いた兄とコロちゃんが外に出たので、私も慌てて外に出ると周囲の風景に妙な既視感を覚える。兄が雪の坂道をサクサクと音を立てながら登っていくので追いかけるとようやく既視感の正体に気付いた。


 ここは以前、コロちゃんに連れられて来たことがある場所だ。エゾ鹿の死骸の側でカラスの死骸が複数転がって、オオワシが弱っていた場所。周囲にある樹の形と地形からして間違いない。


 前に来た時は夜中に雪道を歩いてきたので大変な思いをしたが、実は公道からごく近い位置だったようで唖然としてしまう。そして兄の前には不自然に、こんもりと盛り上がった土に雪が軽く積もっている場所がある。


 位置的にエゾ鹿の死骸があった場所だろう。どうやらすでに土の中に埋葬した後のようだ。帰る前に葬った鹿の墓参りをするのだろうかと首を傾げた時、兄は大きな樹の上方を見あげた。


「ここを発つ前にもう一度、会えてよかった。どうなったか話をしておきたかったからな」


「え?」


 私も兄が見つめている視線の先を見つめれば、樹の上には巨大な怪鳥、以津真天(イツマデ)がたたずんで、私たちをジッと見下ろしていた。


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