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 金森さんは最早、反論できないようで顔を歪めるばかりだ。そんな金森さんを見て兄は黒曜石色の瞳に影を落とした。


「俺だって肉を食ってる身だ。肉食をやめて菜食主義になるべきなどと主張するつもりは無いが、おまえが仕留めて放置していた鹿の死肉を食らって、北海道犬の他にも数えきれないほど鳥獣たちが鉛中毒で死んでいるはずだ。今回の件は鉛弾さえ使わなければ防げた悲劇なんだ」


「待ってください、オーナーだけが悪いんじゃないです。私もちゃんと話をしていれば……」


「笹野さん?」


 ポニーテールの髪を揺らしながら厨房から出て来て、申し訳なさそうな表情で声をかけて来たのは、笹野絵里子さんだった。そんな笹野さんを見た兄は一つ頷いた。


「先日、調理を担当している料理人の笹野絵里子さんに話を聞いた。以前、オーナーの金森から散弾銃で仕留めたエゾ鹿肉を渡され調理していた時、包丁でカットした鹿肉から散弾銃の弾丸の破片が肉から出てきて、鹿の骨にも弾丸の欠片が食い込んでいるのを見てから鹿肉に弾丸の破片が紛れ込んでいるんじゃないかと怖くなって笹野さんは一時期、鹿肉を食べることが出来なくなったそうだ」


「そうなんですか笹野さん!?」


「ええ、もちろん宿泊客に出す料理には細心の注意を払って異物が混入しないように目を光らせているから、問題ないわ。ただ自分で目の当たりにすると、やっぱり怖くなってしまって……」


 うつむきがちに話す笹野絵里子さんの姿を見ながら、それにしても兄はいつ笹野絵里子さんにこんな話を聞いたのかと疑問に思ったが、思い当たるのはここに来た翌日だ。


 私が寝ていた早朝、兄が役所に鳥の死体が複数あることを連絡しオオワシの死骸を回収してもらったという時、私が惰眠を貪っていた間に笹野絵里子さんからも話を聞いていたに違いない。


 だからこそ、金森さんが鉛弾を使用したことも確信を持って話していたのだ。それに、私と兄が鹿の死骸の側でオオワシやカラスが死んでいたと笹野絵里子さんに話した時、笹野絵里子さんのは呆然とした様子で明らかにおかしかった。


 私と兄から話を聞いた笹野絵里子さんは、オオワシとカラスの死因について心当たりがあったからだったんだ。そのことにようやく気付いて隣を見れば、兄は平然とした様子で自身の両腕を組んだ。


「散弾銃で射殺された鹿の場合、鹿の体内で銃弾の欠片が散乱している。それだけ一発あたりのダメージ範囲が広く、大きくなるからハンターが殺傷能力の高い散弾銃を使用している割合は高い」


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