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負け犬達の英雄願望  作者: 出武(デブ)
プロローグ
2/4

勇者と村人

コットランド王国の国境にほど近い森に面してるこの村は、森の恵みと畑に最適な土壌。川に近く水にも困らず、立地としては非常に優秀だ。しかし森の中には時々魔物が湧く、国境沿いなので戦争になると危険だとか、そもそも町が遠くて交通の便が悪いだとかという開拓村にありがちな村だ。


 木がうっそうと生い茂った森の中、木の根や岩場や草やツタをかき分け進むと少し開けた場所にそこそこの大きさの湖がある。


 もうどれくらい続けてるかわからない日課である剣の素振りをまた今日も行う。 しがない農家の1人息子である俺の時間は限られてて今みたいな日の出すぐか、仕事終わりの夜にしか自由がない。


 木剣というにはあまりにも歪な、もはやこん棒に近いそんな木の棒をただ黙々と実直に振るう。

 赤茶けた髪が汗で額に張り付き鬱陶しい。しかし、そんなことで集中を乱すような人間なんて剣聖や勇者はおろか騎士にもなれないだろう。


 俺とあいつに剣を教えてくれたおっさんが前に言っていた。

 強くなるためには回数を振るうんじゃなく何故、どうやってそう振るったかを考えて振れ。それが強者への道だと。

 おっさんは、別に凄腕でもなんでもないけど、それでもその考えは努力をすれば、努力の方法さえ間違えなければ俺でも何か凄いものになれるようなそんな気がしたんだ。


 でも、最近は落ち着かない。もう何回も繰り返した素振りも畑仕事も狩りでもずっとずっと集中できない。


 思い出す。夕暮れのこの場所。二人の秘密基地で将来を誓い、剣聖として出て行った幼馴染。

「私は世界を救うよ。ナギは私の帰る村とみんなを守って。私、絶対に帰ってくる……だからその時は……私と……」

 はにかんで彼女はそう言った。


 その彼女が、剣聖ミリアが邪神を倒して村に今日帰ってくる。



 村に戻ると、みんながあわただしく動き回っていた。当然だろう、今やそこらの貴族どころか王族に匹敵するような扱いの勇者一行がこんな田舎の村に来るのだ。この村での最高のもてなしをしたところで全く足りないだろう。


「おいナギ! どこ行ってたんだ早く手伝え! もう勇者様がお越しになるぞ!」


 親父がすごい剣幕で詰め寄ってきた。

 数日前に国の騎士と教会の司祭が村にやってきてこの日に勇者一行が来るため、歓迎の宴と祝福の儀式をするために簡易的な祭壇を作れとのお達しが出たため、俺や親父みたいな男手はずっと祭壇作りに駆り立てられている。


「悪かったよ。森に行ってたんだ」


 目を逸らし答えた。別に嘘もついてないしやましいこともない。……だけど、親父の目を見れなかった。


「お前……やっぱり……」


 親父はいいずらそうにもごもごしつつ顔をしかめていた。


 そうだろうな、もう俺の思ってることなんてわかるだろうなと罰の悪い、何とも言えない顔で黙ってしまう。

 最近何回もこういったわかり切ってる腹の探り合いというか言い出せない沈黙をやってしまう。

 俺だってわかってる。もう、わかってるんだ。


「……まあ、もう到着する時間だ。お前も、お出迎えの準備をしろ」


 そう言い含めるように親父はいう。それは、親父からの間接的な通告のようにも聞こえた。


 あらかた宴の準備を終え、村長から段取りを軽く説明されたころ仰々しい馬車と騎士団に囲まれた一団がついに村に到着した。


 勇者クリス、破壊と絶望と混沌の闇の邪神を倒した勇者であり神の代理人と言われていて、剣を振るえば闇を払う。その勇気で民に希望を与え、優しさで全てを救うらしい。

 そんな、勇者は金髪碧眼で意外にもあどけないというか幼い顔立ちでどこか頼りなさを感じる印象だった。


 馬車から降り立った勇者クリスは通る声で言う。


「初めまして僕はクリスと言います。僕はひとつ前の火の時に遂に邪神を打ち滅ぼしました。世界を苦しめていた闇と混沌は晴れ。光が戻りました。未だ残党やはぐれの悪魔はいますが、これから各国の騎士、傭兵、冒険者達と話しあい。かの闇の亡者共を一掃し、さらなる平和な世界を約束します!」

 

 朗々と、まるで歌うように言う。


「そして、今回国へ帰る途中で少しわがままを言わせていただいたのです……」


 そこで少しうつむき鼻をかく。


「そのわがままというのは、私の妻となる女性の村、ひいてはご両親に挨拶に向かいたいなとおもいました」


 そういって後ろの馬車の戸を開ける。勇者は中の人物の手を引くき馬車の外へエスコート。

 少し仰々しいがそれすら絵になる。それは勇者だけでなくその手を引かれたほうの女性も素晴らしく美人だったからだろう。

 短く切りそろえられた茶色の髪を手櫛でとき、ぱっちりとした目はが印象的で、小さい顔に小鼻。照れくさそうに笑う姿は、夢にまで見た俺の幼馴染のミリアだった。


 わかってた、わかってたよ。でも、やっぱりわかってなかったんだろう。視界が滲んで呼吸が苦しくなる。気をしっかりしないと吐きそうだ。足に力が入らない。ここのまま倒れこんで寝てしまいたいような疲労感。


 今でも俺はミリアが好きだったんだ。

小説って難しいですね。久々の土曜休みやからめっちゃかけるやんけと思ったら気づいたら日曜も終わりそうです。なんですか?誰が僕の時間をむしり取っていったんですか?

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