第一話「『夢』と『現実』…そして『始まり』」
突然だが、君達は『夢』と『現実』…果たしてどちらが『現実』でどちらが『夢』なのか。そんな風に考えたことはないだろうか?
普通に考えれば私達が『起きている』時間が『現実』の世界、『寝ている』時間が『夢』の世界なのだろう。だが、本当にそうなのだろうか?
もしかしたら『起きている』時間が『夢』の世界で、『寝ている』時間が『現実』の世界なのかもしれない。…そんなこと考えてたらきりが無いって?
確かにそうだろう。…なにせ誰にも分からないんだからね。
だからこそ、『現実』と『非現実』などと分けて考えてしまうのは実に勿体ない。
だってそうだろ?皆は『非現実』的なものに憧れを抱く…何故か?『現実』ではあり得ないことだからだ。魔法やら能力者やら人間のようなロボットとか…そういったものは君達の見ている『現実』には無いものだ。あり得ない。でも、あったら良いなと君達は思う。でも本当にあり得ないのか…。
だからこそ、考えてみて欲しい。君達の今見ている世界は本当に『現実』か、君達の見ている『夢』は本当に『非現実』なのか。
本当はその逆の可能性…またはどちらも『現実』ということをね。
「………ふぁ、よく寝た」
大欠伸をして、頭を掻きながら俺は時計を見た。すると時計の針は午前10時を指していた。
「…うぇい!?完全に遅刻じゃねぇかっ!!何で起こしてくれなかったんだい?マイハニー」
マイハニーと言ったのは勿論『時計』のことだ。だが、ただの時計ではない。アニメの美少女キャラの絵が描かれていて、しかも音声付きで起こしてくれるものだ。
「…やっぱ好きなキャラの可愛い声だと起きれないんかね」
そう言いながら感慨深そうに時計を見つめる俺は『鬼門過 竜一』。鬼門過っていう苗字は正直どうなのよ?って思った人もいるだろうが…一応これでも由緒ある家系なのだそうだ。両親は俺が小さい頃に他界しているから、今は独り暮らしの自由気ままな生活を送っている。ちなみに現在絶賛彼女募集中。
「…まぁ、俺みたいなぐうたらキモオタに彼女なんか出来るわけないんだよなぁ」
アニメの美少女みたいな女の子が『現実』にいればなぁ…などと考えてみる。うん、いいね。実に良いな。そして俺はにやけながら部屋の壁にかかっているカレンダーにふと目をやる。
「…あっ、てか今日午後からだった」
時計のアニメキャラと睨めっこして、冷静になった俺は今日は午前中の講義を取ってないことに気づいた。大学生の俺は必要最低限の単位が取れるよう時間割を作り、結果週に2日程度しか午前中に講義が無い状態であった。
「楽して卒業単位取れれば、それに超したことないもんな。いいや、まだ少し時間もあるしもう一度寝よう…」
そう言うと俺はベッドに横たわる抱き枕を抱きしめ幸せそうにまた眠りについた。
「………起きて」
「……むにゃむにゃ」
「ねぇ、起きってってば!」
「………う、あと5分…むにゃ」
「い•い•か•ら、起きなさいっ!!!」
バシンッ!と凄まじい勢いで何かに顔を叩かれた感覚に俺は目を覚ました。
「へあっ!?な、なんだなんだ?」
勢いよく起きた俺の目の前には、同じベッドの上で毛布を抱き寄せながら顔を赤らめてこちらをキツく睨みつけている少女がいた。
「……天使だ」
「……えっ?」
「こんな天使のように可愛い子が、俺の家にいるはず無い…つまり夢だな!」
「はっ?…貴方何を言ってー」
「しかもだっ!同じベッドの上で男と女がいてやることと言えばただ一つ!!…ぐへへっ」
気持ちの悪い笑みを浮かべながら、手をワキワキさせ彼女に近づく変態もとい俺。
「…ひっ!こ、来ないで変態!痴漢!!スケベ!!!それ以上近づくと酷いわよ!?」
夢だからと、彼女の言葉に耳を傾けない俺は徐々に彼女に近づき、そのワキワキさせた手は彼女の胸へと差し迫っていた。
「っ!い、いやぁああああ!!!」
彼女が悲鳴を上げたと思ったその時、目の前に翳された彼女の手が赤く光り俺の顔すれすれで『何か』が横切った。
「…えっ」
ズドンッと音がした方へ、恐る恐る振り返る。そこにはまるで隕石でも落ちたかのようなクレーターが壁に出来ていた。
「えっ、ちょ!何今の、俺を殺す気!?」
「アンタが私に、その…エッチなことしようとしたからでしょ!?殺す気で打ったわよ!」
「ま、まじかー」
運良く外れたものの、今のが直撃していたら…とその光景を想像した俺は頭がすっきり晴れたように落ち着きを取り戻した。
「えっと、これって『夢』だよね?」
「はっ?そんなわけないでしょ。現実よ『現実』!」
そう言われて、そんな馬鹿なと辺りを改めて見渡した。
「だって、ここ俺の部屋じゃないし。俺さっきまでベットで寝てた筈…」
とここまで言ってようやくオカシな事に気づいた。
「あれ?なんで『夢』なのにここが『夢』だって分かるんだ」
「いや、だから『夢』じゃないって。もしかして頭でも打った?」
「いやいや!絶対オカシイって!そもそもココは何処だよ!?」
あり得ない状況に混乱し取り乱す。そんな俺に彼女はさも当然のように答えた。
「何処って…私の家の私の部屋だけど?」
「そ、そんな筈は…」
寝ている間に誘拐でもされたのかと、不安になった俺は近くにあった窓を開け放ち外を見て唖然とした。
「…はっ?ど、何処だよここ」
目の前に広がっているのは、見渡す限り洋風の街並み。そして視界の高さから、下を見下ろすとここは相当な高さの洋風の建物、いや城だった。
「何処ってさっきも言ったでしょ?私の家のー」
「そうじゃなくて!…ここはいったい何処なんだ。日本なのか?それともアメリカとかそういった…」
俺の知る限り、こんな場所日本の何処にもない筈であった。もしかして、外国なのかとも思ったが彼女の口から出た言葉に耳を疑った。
「ニホン?アメリカ??何処よそれ。ここはアストリア大陸のアスガルド王国。そしてここはその王国の中心アスガルド城よ」
竜一はその言葉を聞き、ここが日本や外国…そもそも地球上ではないことを理解した。いや、思うしかなかった。目の前に広がる光景…そしてアストリア大陸という名前の場所は地球には存在しないからだ。
「ははっ…なんだよそれ」
まだこれが夢なんじゃないかと、そう思い俺は自分の頬を抓った。
「…なんだよ。すっげー痛いじゃん…」
その痛みがここが夢では無いことを俺は改めて実感した。
第一話「『夢』と『現実』…そして『始まり』」終
今回6年ぶりに書いたオジリナル小説です。文章力などはほぼ皆無です。ですが、頑張って続けていけたらなーと思います。どうぞよろしくお願いします。