第1話「武具屋は金属の匂いがすると断言は出来ない」
どうも、こんにちは、月石椛です。主さんはユーザーホームページ?をご覧ください。
今回の話は、主人公が異世界に召喚されて、自分に利益があるものを探し、武具屋で武器を鑑賞。
そして最後は、主人公が腹を下すという内容です。
詳しくは本文をご覧ください。
「通りで暖かいわけか……」
謎の都市の中心街に青年は佇んでいた。
分厚い冬服に身を包み、ひたすら“暑い“と言う言葉を口に呟いている。
それも、日本にある熊谷市よりも暑いんじゃないか。冬服を着てる場合ではない。
「これ……もう夏の気温だよな」
彼の目線の先には、32度と表示されている街頭温度計があった。
流石に32度は有り得ないと思ったのか、周辺の人たちの様子を見ると、夏仕様の服装を身に付けている。
「これは……異常かもな」
猛暑の中、何かを求めるように身体が動き出す。
勿論、自分の身体は既にカラカラの状態にあった。
――この場所、一体何処なんだ?
彼が思う限り、平均気温20度以上の沖縄県に連れて来られたのかと予想した。
しかし、沖縄県の民家に大体ありそうなシーサー(獅子)はない。
――少し、探索するか。
中心街を探索しだす少年だったが、立ち並ぶのは自分に利益もないものばかり。
たとえ、あっても一部の商店はシャッターが下ろしてある。
――武具屋……武器・防具を作る・買うなら、他社より断然安い当社でどうぞ。か。
余りにも何処かの告知にそっくりな様な気がしたが、気にしないでおこう。
武具屋の外観は、近代建築をイメージする高級な木造建築の3階建で、屋根には昔ながらの瓦と煙突。各階の壁には壁掛け式の8角形の板に武器屋をイメージする、武器や防具の絵が目印代わりに絵描かれていた。
――えっ、コレ剣? えええ……やばっ。
少年の視線の先には、超弩級の剣が地面にぶっ刺さっていた。
見る限り、一般人は到底抜く事も出来なそう剣で、相当力に自身がある人でも無理そうな見た目をしている。
というか、巨人じゃないと明らかに無理。
――取り敢えず、店内入るか。
彼はドアノブを回し店内に入店する。すると、何処かで聞き覚えのある入店音が店内に響く。
その音は、やけにロー◯ンの音に似ている。コピってるのかは不明。
「しかし本当に凄いな……この木造建築」
内装で真っ先に目に入るのは、シラカバと思われる真っ白な直線状の木の幹。床にはアカシアの木材、天井にはスギの木材が使用されている感じだった。更によく見ると、鉄筋コンクリートなどの人工物で組み合わせてあるのではなく、人工物を一切使用しない、「ほぞ組み」や「大入れ組み手」「合い欠き組み手」などの技術を採用していると思われる。
「すみません……あのー?」
青年はカウンターの前に立ち、奥の部屋にいる店員を呼び出そうとする。
が、イヤホンでもしているのかと思うぐらい、気付く気配はない。
「日本語……通用するよな……」
異世界に召喚された人がまず最初に触れる難関であるのかもしれない。
まあ、現実と異世界の文字が異なっているのは予想が付く。しかし、時に言語までも異なっている場合がある。
この場合、どうしようもない。
「お客様、どうかされましたか?」
「わっ……あ、お疲れ様です」
取り敢えず、言語は日本語と思われる。が、文章が異なっていたらアウト。
「はい、ありがとうございます。今日はどの様な都合ですか?」
「え、ただ単に武具の鑑賞に来ただけです」
「そうですか。では、何かご質問等ございましたら、お声掛け下さい」
日本だったら普通のことかもしれないが、鑑賞だけの目的でお店に来ると言うことは、店側に対し少し失礼なことなのかもしれない。何か安い品物でも購入すれば、店側も嬉しい筈。
――コレなんの匂いなんだろ……?
店内入店後から、青年は不思議な匂いに軽く包み込まれていた。
それも、資料館や博物館といった独特な匂いで、武具屋で匂いそうな金属の匂いは一切しない。
消臭剤でも設置してあるのかと思うが、そんな消耗品はない。
「自然の匂いです。クヌギやカエデ、サクラ……」
「あ、自然の匂いか。って、え?」
自分の背後には、メイド服を着用した一人の女性が佇んでいた。
年齢は18歳くらい。瞳はオッドアイで、髪はロング。身長は150cmくらいだと思われる。
左手には水やりをするためと思われるジョウロを持っている。
「この武具屋の地下には植物園がございます。多分、その香りだと思います」
「あ、ありがとうございます」
メイド服を着た女性は、自分との話が終わると会議室の様な場所に急ぎ足で走っていく。
が、何か用があったのか、自分のところに戻って来た。
「あ、申し遅れました。私はこの武具屋の店主を担当しているイタバシと申します。
何かありましたら、ご気軽にお声掛け下さい」
「親切にありがとうございます」
「いえいえ、どうぞごゆっくり」
あ、名前返すの忘れてた。
この武具屋、実は植物園も経営する武具屋兼植物園という会社なのである。
更に、武具屋の店主は女性で、男性ではないのである。普通ならば、武具屋の店主は男性のイメージが強いが、この武具屋は稀に見る女性のケースである。
――大剣、太刀、双剣、片手剣……。
店内をクルッと周り、案内板から、“武器コーナー“と指す場所に向かうと、多種多様な武器が揃っている部屋に到着した。一番目立つのは、大きい剣で有名な”大剣“や細長い剣の太刀。ハンマーやボウガンまでも全て保管されている。中には錆れ朽ちた弓や矢も展示品となっているらしい。
「あれ? コレ……日本刀だよな……⁇」
青年の目線の先にあったのは、“ニホントウ“と片仮名で書かれた日本刀らしい剣と、剣を入れるための柄が展示されていた。勿論、本物だと思われる。
「凄いなぁ……。ん? あれ……あっ……。こんな時に腹痛かよ」
武器の鑑賞を終了し、防具の鑑賞に行こうとした際、青年の腹が悲鳴を挙げた。
原因は既に分かっている。日本とこの世界の気温差である。
青年が召喚される当日、埼玉県の最高気温は4度。青年が異世界に召喚され、街にある街頭温度計を確認した時は、既に32度と表示されていたのである。4度と32度の気温差は28度、と言うことは±28度ということになる。
この状況下に置かれれば、大半の人間は、“腹痛“などの症状を発症する可能性が十分にあり得る。
「あれ、もうご帰宅ですか?」
「あ、はい。少し用事が出来たので、早めに帰ります」
本当は一刻も早く武具屋から出て、トイレに行きたいだけなんだけど、流石にそんなこと言えないし……。
そう、問題は武具屋にある。普通ならある筈の“トイレ“が何処にもないのである。隠されている訳でもなく、本当にないのである。
「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」
武具屋を後にし、外でただ棒人間のようにすっ立って、やばい表情を浮かべていた。
トイレが我慢出来ない……という訳ではなく、これからどうすればいいか分からない。
それも、召喚からまだ12時間も経過していない状態であり、何処に何があるのか分かっていない。
「取り敢えず、公園に行けば……。いや、もう無理だな」
腹痛の痛みが増したのか、移動するのも困難な状態になってきた。
青年は武具屋近くのベンチに座り、腹部の痛みが落ち着くまで冷静にいる事にした。
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