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第二話 勇者ではない異世界人

移動時間などの暇な時間を利用して書いているので、更新遅いですが、よろしくお願いします。


今回は改稿前とは少し話の流れが違います。

 


 気が付くと、そこは古めかしい石造りの部屋だった。

 空気は埃っぽく、部屋の端には何やら埃のかぶった木箱やらが置いてある。

 壁にかかったカンテラのようなものが部屋の中を僅かに照らしている。


「やったぞっ……成功だ!!」

「やりましたね、殿下!」


 静まり返っていた部屋の中に、急に歓喜の声が聞こえ、そちらへ視線を向けてみれば、煌びやかな衣装を纏った、美女というには少し幼い少女を筆頭に十数人ほどの人がいた。

 その者たちは全身鎧を纏った騎士やローブのような物を纏って、手に先が淡く光る錫杖のような物を持っていた。


 それらを見ると、俺は素早く状況を整理する。


 まず、間違いなく、これは異世界召喚(・・)だ。

 おそらく、目の前の者たちが召喚したのだろう。


「うぅ……」


 小さな呻き声が聞こえ、そちらに目を向けると、田中が倒れていた。

 よくよく見てみれば、あの時教室に居た者たちがこの場に倒れていた。

 だが、皆も俺と同様次々に起き出し、辺りの様子を窺い始める。

 すると、当然、皆は突然の事態に慌てふためき出す。


「ここどこだ?!」

「何がどうなってるの!?」


 そんな風に皆が騒ぎ始めると、ようやく俺たちを召喚したであろう人物が話しかけてくる。


「勇者さま方、どうかお静まり下さい」


 先頭に立っていた美しい金髪を伸ばす少女から放たれた凛と響くその声は、一瞬にして部屋に静寂を齎した。


「急なことで混乱していることは承知しています。ですが、私の話を聞いて下さい」


 随分と年の割に落ち着いた話し方をするものだ。

 おそらくこの国の王族とかだろうか?


「わたくしの名はレイシア・フォン・アレクセイトと申します。ここ、アレクセイト王国の第二王女です」


 少女――レイシア王女の言葉に、疑問符を浮かべるクラスメイトたち。

 皆、「そんな国あったか?」や「王女?」といった日本では聞き慣れない言葉に疑問を抱いていた。

 そんなクラスメイトの反応を気にした様子もなく、レイシア王女は続ける。


「皆さまには異世界からの召喚に応じていただき、ありがとうございます。つきましては、詳しいお話をさせていただきたいので、ついて来ていただけますか?」


 丁寧な口調で語られたその内容は皆を混乱させるには十分だった。


 勇者、王国、王女、異世界、召喚……。

 まるで、物語か何かのようだ、と思っていることだろう。


 俺はレイシア王女の話を聞き終え、困惑するクラスメイトたちを尻目に、再び思考に耽る。


 ホントに異世界に召喚されたみたいだな……。

 嬉しくて舞い上がりたくもあるけど、召喚されたのだとしたら早急にしなければならないことがある。

 それは小説で読んだ異世界召喚モノでは、召喚した者が実は悪者だった、ということがあるからだ。

 これは絶対という訳ではないが、用心しておくに越したことはない。


 とりあえずは異世界に来てやることと言ったら――


 俺は逸る気持ち抑えながら、その言葉を心の中で唱える。


 ――ステータス!


 すると、予想通り視界内に半透明の板が現れ、ソレが映し出された。



【名前】ジン・トウドウ

【性別】男

【年齢】17

【種族】人族


【レベル】1


【HP】100/100

【MP】100/100


【STR】30

【DEF】30

【AGI】30

【INT】30

【DEX】30


【ユニークスキル】

『メニュー』『スキル取得簡易』『スキル成長速度上昇』


【スキル】

『獲得経験値上昇』『言語理解』


【称号スキル】

『異世界人』『召喚に巻き込まれた異世界人』



 ん!? なんかおかしいんですけど?


 レイシア王女は勇者って言ってたよな?

 なんか称号の欄に不吉なものがあるんだけど……。


 困惑する思考を抑えつけ、とりあえず、まず目に入った『メニュー』というスキルを使ってみることにする。


 すると、



 《初期設定を行って下さい》



 視覚とはまた別の器官を得たかのような場所にそのような文字が現れた。

 しかし、視覚の邪魔になることはなく、ただただ不思議な感覚の場所にその文字が浮かんでいる。


 その文字をしばし見ていると、文字が切り替わる。



 ・AR表示 ON/OFF

 ・鑑定機能 ON/OFF

 ・マップ表示 ON/OFF

 ・行動ログ ON/OFF

 ・HPパラメーター ON/OFF

 ・MPパラメーター ON/OFF

 ・レベルアップ通知 ON/OFF

 ・スキル獲得通知 ON/OFF

 ・スキルレベルアップ通知 ON/OFF

 ・

 ・

 ・



 次に現れたのはそんな文字列だった。


 まるでゲームの設定画面のようだ。

 俺はこの『メニュー』というスキルはまさに、ゲームのような機能を果たしてくれるスキルであることを直感的に感じ取った。


 とりあえずの設定は全てONにしておくことにする。


 すると、その視覚とは別の場所に、マップやら何やら、まさにゲームの画面といったようなモノが現れた。


 どうやら、このスキルは汎用性と利便性の高いスキルであるらしい。

 故に、奥が深いスキルであることも理解できる。


 俺はゲームをやるような感覚で、視界端にあるアプリケーションを開く。


 すると、そこには――



 ・ステータス操作

 ・ストレージ

 ・全体マップ

 ・メモ

 ・設定



 その五つの項目があった。

 気にはなるが、その前にステータスにあるスキルなどの詳細を見たい。

 メニューの設定の時に、『鑑定機能』というモノがあったはずだ。それを使えば、あるいはスキルなどの詳細を調べることも可能かもしれない。


 俺の目論見は当たっていたらしく、ステータスに映るスキルを鑑定することができた。


 ユニークスキルは三つともだいたいのことは分かっているし、語感からも判断できるモノなので、今は飛ばす。

 スキルも同様だ。


 問題となるのは、称号スキルだ。



『異世界人』

 ・異世界の住人に与えられる称号。スキル:『獲得経験値上昇』、『言語理解』を取得する。


『召喚に巻き込まれし異世界人』

 ・何らかの召喚に巻き込まれて、この世界にやってきた異世界人に与えられる称号。ユニークスキルをランダムで3つ取得する代わりに、基礎能力値が全て30になる。



 俺はそれを見て、やっと得心がいった。


 気味の悪いほど、端数もなく軒並み同じ数値に整えられた基礎能力値。

 ユニークスキル――つまり、俺固有のスキルが三つもあること。


 これらは余りにも異常だと思っていた。

 それは一般的な人のステータスを見たことのない俺でも分かることだった。


 そこまで調べ終わったところで、唐突に周囲が騒がしくなった。


「はぁ? 何意味分かんねぇこと言ってんだよ!?」

「ふざけるな! 勝手なこと言ってんじゃねぇぞ!」

「よく分からないけど、帰してっ! 元の場所に帰してよ!」


 それはクラスメイトたちの号哭にも似た、目の前の者たちに対する訴えだった。

 レイシア王女もその様子に狼狽えている。


 しかし――


「静まれぇ!!」


 横に立っていた騎士鎧を纏った男がいれた喝によって場は再び静寂に満ちる。


 ーーそんな中、俺はというと、そんなことはどうでも良いとばかりに、レイシア王女を見つめていた。


 正確に言えば、その上空数十センチメートルに浮かぶ、緑色のカーソルだった。

 その不思議な物体を見つめていると、目の前にステータスが現れた。



【名前】レイシア・フォン・アレクセイト

【性別】女

【年齢】16

【種族】人族

【役職】アレクセイト王国第二王女


【レベル】12


【HP】120/120

【MP】340/340


【STR】47

【DEF】37

【AGI】56

【INT】55

【DEX】89



【スキル】

『召喚魔法LV4』『水魔法LV2』『作法LV4』『魔力操作LV2』『剣術LV1』『杖術LV2』



【称号スキル】

『召喚士』



 どうやら人物鑑定を行えるらしい。

 現れたのはレイシア王女のステータスだった。

 しかし、そのステータスには、俺がステータスと唱えて出てきた時のステータスとは違う部分があった。

 それは、【役職】という項目だ。


 よくよく調べてみれば、この鑑定機能、通常のステータスのみならず、その者の詳細な情報を鑑定することができるらしい。

 それによれば、身長や体重、装備している物なども分かるようだった。


 そんなことを考えていると、静まり返っていた部屋に凛とした声が響き渡った。


「勇者さま方、申し訳ありません。困惑なさるのも、お察しします。ですが、まずは国王陛下へ謁見をし、そこで詳しい事情を説明させてください」


 レイシア王女はクラスメイト全員を見渡して、懇願するようにそう言った。

 と、そこでクラスメイトの内の一人が口を開いた。


「みんな、一旦落ち着こう! 混乱するのも分かる。俺だって今混乱している。だけど、今は情報がない。まずはレイシアさんの話を聞いてからでも遅くはないんじゃないかな?」


 そう声をあげたのは、クラスのリーダー的立ち位置にいる光道だった。


 さすがは光道。持ち前のカリスマ力でクラスメイトたちを説き伏せる。

 そして、皆が「光道がそう言うなら――」とレイシア王女の話を聞くという流れになり、それを察したレイシア王女の顔は明るくなる。


「ありがとうございます。では、陛下の待つ謁見の間へご案内致します」


 そうして俺たちは、この国の王様に会うことになったのだった。



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