初恋
リア友に言われ、書いてみた初の純愛ものかつ、初の短編です。
クオリティは察してください(′・ω・`)
「はぁ…」
そう、僕は溜息をつく。
ふと窓の外を見ると、桜の花びらが風に乗って舞っている。
それを見て『あぁ…春だなぁ』なんて益体のないことを考えながら、ふと視線を校庭に向けた。
僕がいるのは、4階建て校舎の廊下。
そこからは、しっかりと校庭が見渡せる。
すでに時刻は、十七時を回っていて校庭には部活を終えた生徒達が下校しているのが見える。
僕はここで、その生徒の列を見ているのが好きだった。
でも、あまりずっと見ていると教師に見つかってしまうので、適当な時間には帰らないといけない。
「うーん…そろそろ帰ろうかな?」
そう1人呟くと、僕は足元のスクールバッグを持ち上げて肩にかけ、下駄箱に行く為に廊下を歩き始めた。
☆☆☆☆☆☆☆☆
僕が通う、この県立瀬東高校はすこし、ほかの学校に比べ変わった構造をしている。
というのも、実は2階にも下駄箱があり、外の階段から下に降りることが出来るようになっているのだ。
僕も入学したての時は驚いたが、一ヶ月も経った今はもはや慣れてしまった。
人間、慣れとは怖いもんだ。
僕は自分の下駄箱の扉を開けて、スリッパから外靴に履き替える。
そのまま外に出ると、なかなかに強い風が体全身にあたる。
それに驚いて一瞬体を竦めたが、すぐに戻って階段を降り始めた。
階段を降りきった先には、今年、この学校でできた新しい友達…新川 雄大がいた。
「よう。遅かったじゃん。」
「先に言ってても良かったのに。」
「一人で帰るのもさみしいし…まぁ、友だち待つくらいはな。」
「…まぁ、ありがと。」
「おう。」
そう言いながら、僕らは校門を出て右に曲がる。
するとそこには桜並木が広がっている。
とは言っても、もう既に桜はほとんど散っ ているのだけど。
その桜並木を歩きつつ、僕は雄大と話しながら駅まで向かう事にした。
「そう言えば、健志さ。」
健志というのは僕の名前だ。
「何?」
「好きな人できた?」
「…いや、できてないよ。」
それを聞いた雄大が、目を見開いたあと再び聞き返してくる。
「ほんとかー?」
「ホントだよ…そーいう雄大は?」
いないことをアピールしつつ、逆に雄大に聞き返す。
「俺か…俺はいないな。」
すると雄大は、意外にもいないといってきた
「なんだよ、いないのかよ。」
僕はそう答えた。
だが、実のこと、僕には好きな人がいる。
同じクラスの内海 由奈だ。
腰まで伸びるほど長い黒髪を持っていて、剣道4段という新入生ながら剣道部のエースとなった少女だ。
可愛い…と言うよりは美人な顔立ちで、一年生の男子の中でも人気のある女子の1人だ。
だが彼女は、あまり男っ気のある話を聞かないのと、そのもはや人形じみている神秘的な顔立ちからか、高嶺の花とかしている。
僕だって、未だに喋ったことすらないレベルなのだから、実らない恋だと自分でも思う。
でも、やはり諦めきれないのだ。
…頭の中でそんなことを考えながら、雄大とも喋りつつ歩いていると、いつの間にか駅に着いていた。
雄大はここから歩きで近くの家に帰るので、ここでお別れだ。
「じゃーな健志。また明日。」
「うん、また明日ー」
そう、別れの言葉を交わしながら雄大と別れる。
しばらく歩くと、階段があり、そこを下って目の前のトンネルを通ると、駅の西側に出る。
ちなみに西側にしか改札が無いため、一々回って行かなければならないのを面倒に思うこともあるが、仕方ないと割り切っている。
西口から駅の構内に入ると、改札前でカバンをゴソゴソとしている少女がいた。
「あれ…?おかしいな…確かここに…」
長い髪の毛を揺らしながら、カバンをまさぐっている。
だがよく見ると、その少女は…
「…あれ?もしかして内海さん?」
「ん?あ、館山くん?」
思わず声を掛けると、内海さんは僕に反応した。
どうやら、僕の苗字を覚えてくれていたみたいだ。
「あ、うん。そうだよ。でも、内海さん何やってるの?」
「実は定期を無くしちゃったみたいで…」
「えっ!?大丈夫なの?」
「大丈夫じゃないから焦ってるのよ…」
そう言うと、内海さんは周りを見回し始めた。
周りに落としていないか確認しているのだろうか?
そんな内海さんを見ていると、右のポケットから、何かが飛び出しているのが見えた。
「内海さん…ポケットのそれ、違う?」
「え?あ、あった。」
どうやら、ポケットから飛び出していたのは、彼女が探していた定期の入った、定期入れだったようだ。
「ありがとう、館山くん。」
「いや、気にしなくてもいいよ。見つけたのもたまたまだし。」
内海さんが僕にお礼を言ってくるが、僕からすれば当たり前のことをしただけだし、見つけられたのもたまたまだったので、気にしないで欲しいと言った。
すると彼女は、「そう…?まぁでも、ありがとね」と、微笑みながらそう言った。
僕はその笑顔を見てドキッとしてしまったが、顔が赤くならないように努力した。
でもやっぱり見惚れてしまって、動けなくなっているうちに、彼女はどこかに行こうとしていた。
僕はせっかくのチャンスを無駄にしたくないと思い、勇気を振り絞って声をかけた。
「…あのさ!内海さん」
僕が声を掛けると、彼女は「ん?」と言いながらこちらを振り返ってくる。
彼女と話しているということにドキドキしながら、僕は言葉を続ける。
「内海さんは下りか上りか、どっちで帰るの?」
「私はいつも上りだよ。」
それを聞いて僕は少し驚いた。
なぜなら僕と同じ方面だったからだ。
「そ、そっか…じゃあ、もし良かったらさ」
「ん?」
「一緒に帰らない?」
僕がそう言うと、彼女はクリクリっとした目を若干見開いて、
「いいよ!」
と返事をしてくれた。
こうして、僕は彼女と一緒に帰る事となった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
『間もなく、2番線に電車がまいります。危ないですから黄色い線の内側に…』
何人かの人影が見えるのみで、全体的に寂れた雰囲気を醸し出しているホームに、アナウンスが鳴り響く。
その直後、ホームには緑のラインの入った列車が入ってきて、停車すると同時にドアを開け、乗客が乗車するのを待つ。
僕は内海さんと一緒に列車に乗ると、車内を見渡し、空いている席がないかを探し始める。
列車の中はほとんど人が乗っておらず、席もガラガラだったため、僕と内海さんは一番近い席に腰を下ろす。
この路線で走っている電車は、席が向かい合っている場合が多いので、僕らはそれぞれ別のシート座ることにした。
向かい合っている席にそれぞれ座ったため、必然的に目が合ってしまう。
それが何だか毛恥ずかしく感じられて、思わず僕は目をそらす。
逸らした先には、外が見える窓があり、そこからは山間に沈む夕陽が見えた。
すると、内海さんが声を掛けてきた。
「キレイだね…」
その言葉に反応して、ちらりと彼女の方を見ると、彼女は憂いをのぞかせた顔で夕日をずっと見つめていた。
夕日に照らされた彼女の顔は、まるで何かの芸術作品のように美しいと思った。
「…うん。そうだね。」
見とれてしまっていた僕は、我に返ると彼女の言葉に言葉を返す。
そうやって夕日を見ていると、発車ベルがなり、ドアがしまって列車は走り出した。
ガクッという軽い衝撃の後に走り出した列車は、ぐんぐんスピードをあげ、少しすると、ガタンゴトンと音を鳴らしながら、早いスピードで走り始めた。
しばらく走ると列車はトンネルに入り、夕日は見えなくなってしまった。
そうなると、トンネルを見てても面白くないため、視線を目の前に座る彼女に向ける。
すると、たまたま同じタイミングで視線を戻したらしい彼女と目が合った。
一瞬僕は硬直したあと、サッと素早く目線をずらした。
すると彼女から声がかけられる。
「そう言えば…こうして館山くんと喋ったりするの、初めてじゃない?」
「え、あ、うん。そうだね…」
「館山くん?どうかしたの?」
僕が挙動不審に答えてしまったからか、彼女は僕の事を心配し出した。
これではいけないと思い、すぐに気を取り直して、彼女との会話に戻る。
「いや、大丈夫だよ。ごめんね。」
「大丈夫ならいいけど…」
そういう彼女の顔は、どことなく不安な色が混じっているように感じた。
これ以上彼女を心配させるわけにも行かないと思い、僕は強引に話題を変えに行く。
「そう言えば、内海さんはどこで降りるの?」
「私?私は瀬北駅だよ。」
「そうなの?じゃあ、僕と一緒だね。」
「館山くんも瀬北駅で降りるの?」
「うん。そうだよ。」
意外なことに、内海さんも瀬北駅で降りるらしい。
意外と家が近いのだろうか?
「家はどの辺なの?」
「家?家は…瀬山川沿いのマンションだよ。」
「あー!メルゾーナ瀬山とかいう所?」
「そうそう!」
「そうなんだ!以外に僕の家と近いんだね!」
「館山くんはどの辺なの?」
「僕は陶都病院の近くだよ!」
「そうなの?意外と近いんだね!」
意外な事実が判明して思わずテンションが上がってしまったが、そのタイミングで車内にアナウンスが鳴る。
『────次は瀬北ー次は瀬北です。お降りの際は………』
「あ、もうすぐ着くみたいだね。」
「だね。」
そう彼女は答えると、自身の荷物をまとめ始めた。
僕も忘れ物が無いかを確認してから、席を立つ。
しばらくして列車が瀬北駅で停車すると、僕らは列車から降りて、改札に向かう。
この駅は高架なので、一度階段で降りなければならない。
そうして階段を降っていると、彼女が空いている階段のはずなのに何故か彼女に衝突してきたサラリーマンに飛ばされ、こちらによろけてきた。
僕は反射的に彼女を受け止めると、しっかりと彼女を立たせる。
「大丈夫?内海さん。」
僕は彼女に声をかけるが、彼女は全く反応しない。
心なしか顔も赤い気がするが、きっと気のせいだと信じて、もう一度声を掛ける。
「内海さん?」
「…えっ?あ?ごめん、ちょっとぼーっとしちゃって…」
「そう?大丈夫なの?」
「う、うん。多分大丈夫だと思う…」
「ならいいけど…」
ふと考えてみると、ここが階段のど真ん中であることに気がつき、僕達はまた歩き出した。
階段を下ると、僕達は改札を抜け、そこから更に外に出てロータリーに出る。
「ここからどうする?」
「え?あ、えーっと…」
困った。ここからは何も決めていない。
一層の事、一緒に帰ってみようかと思ったが、方面は若干違うから、すぐに別れることになる。
と、ここで何故か僕はこんな事を思った。
「どうせ、もう彼女と会うこともないだろう。それなら、今告白してみるのはどうか?」
自分でもなんでそんなことを思ったのかはわからないし、本気で不可解な話だが、確かにそれも事実だ。
もうここで別れたら、そうそう話すこともないだろう。
それなら一層、今ここで思いの丈をぶちまけてしまったらどうなのかと思った。
ただ、踏ん切りがそんな簡単につくはずもなく、結局、
「じゃあ、一緒に帰ろうか?」
と、ヘタれてしまうのだった。
☆☆☆☆☆☆☆☆
帰り道、僕は彼女とたわいもない事を話していた。
学校の事、友達の事、勉強の事…
本当に様々なことを話す中で、僕が気付いたのは、彼女は本当は喋りやすい、フレンドリーな人間だということ。
その整った顔立ちや、怜悧な雰囲気から、喋りにくそうなイメージがあったが、実際はそんなことはまったくなく、実に喋りやすい人物だったのだ。
そして、気付くと彼女のマンションに着いていた。
玄関前まで彼女についてきて、ここで別れることになった。
でも、その時、何かが僕の体を動かしたんだと思う。
気づいたら僕は彼女に声を掛けていた。
「あ、あの…内海さん!」
僕が大きな声で叫ぶように言うと、彼女はゆっくりと振り向き、頭の上にハテナマークを浮かべたような顔でこちらを見つめてきた。
僕はそんな可愛らしい彼女の仕草に、一瞬顔が熱くなってしまったが、気を取り直して僕は再び言葉を紡ぐ。
「内海さん…あの。」
「なに?」
この時、僕の心の中はぐちゃぐちゃだった。
振られたらどうしようという不安、逆に成功したら彼女と僕は恋人になるということに対しての期待の気持ち。その他いろいろなものがぐちゃぐちゃになって、まさにカオスと言うべき状態だった。
そんな心を、どうにか落ち着けて、僕は言葉を絞り出した。
「内海さん…その、よかったら、僕と…」
「…?」
「ぼ、僕と付き合ってください!!」
思わず大きな声で叫んでしまい、たまたま隣を通ったおばさんが、暖かいものを見る目で通り過ぎて言ったのが横目で見えた。
それに内心赤面しつつも、僕は彼女の言葉を待った。
「えと…その…」
「だ、ダメだよね…?」
「あ、ううん。そうじゃないの…その…」
彼女は微かに俯きながら、こう言った。
「実は、告白とかあまりされたことなくて…」
「え?そうなの?」
それは意外だ。
いや、逆に当然なのかもしれない。
こうやって僕が告白するのにも、自分の持てる勇気を総動員してやっとだったのだ。
そうそう出来たものではないだろう。
彼女は微かに俯かせていた顔を上げると、言葉を紡ぎ始める。
「その…私で本当にいいんだよね?」
「うん。もちろん。」
でなければ告白なんてことはしない。
それを聞いた彼女は「そっか…」と、微かにこぼした後、しっかりと僕を見据えてこう言った。
「私でいいなら…よろしくお願いします」
そう言って彼女はぺこりとお辞儀をした。
慌てて僕もお辞儀を返す。
そして暫くそうしていると、
「ふふっ…」
彼女が吹き出した。
それに気付いた僕も、何だかおかしくなって吹き出した。
そのまま僕達は暫く笑いあって、ひとしきり笑った後、「じゃあね」と互いに別れの挨拶を交わして、家に帰った。
2017年、暖かくなり始めた五月のはじめのことだった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「それからそれから?」
「私達はねー…色々な困難を乗り越えて、結婚したのよー」
そう女性が話を締め括ると、聞いていた少女は感想を言う。
「へぇー…お父さん、なかなかロマンチックなとこあるじゃん」
「なかなかってなんだよー。お父さんは結構ロマンチストだぞ?」
「うっそだー」
「言ったなー…待てー!」
「わー!逃げろー!」
そう言って追いかけっこを始めた娘と父親の表情は笑っていた。
それを微笑ましく見つめる母親は、腕に抱く赤ん坊の頭を撫でる。
すると赤ん坊は、ニコリと笑い始める。
それを見た母親は微笑みながら、追いかけっこをしている父親に声を掛ける。
「あなた。」
「ん?」
「…ありがとう」
そう言って微笑むと、父親は顔を赤くしながら、
「お、おう。」
と、ぎこちなく言葉を返すのだった。
それを見た娘が、
「あー!お父さんまた赤くなってるー!」
とはやし立て、父親が
「う、うっせー!赤くなってなんかねーわ!」
と怒ってまたも追いかけっこが始まる。
あれから十数年後、当時まだ高校一年生だった彼らは結婚して夫婦となっていた。
幸せな家庭を築いて、幸せに暮らしていた。
ふと空を見上げると、日が暮れ始めているのか、空が赤く染まっていた。
それを見た母親は父親に赤ん坊を預け、こう言った。
「じゃあ、久しぶりにご飯食べに行きましょうか!」
それを聞いた娘達は喜びの声を上げて準備を始めた。
「じゃあ、行こうか」
暫くして、全員が玄関から外に出て、残るは父親一人となった。
そして、父親が外に出るとドアがしめられた。
そして直後、
ガチャン
と音を立てて鍵が閉まった。
そんな中でも、家主はいなくなり、静かになった家の中に窓から夕日が射し込んできていたのだった…
~END~
どうでしたでしょうか(′・ω・`)
今回は特にうまく出来た気がしません。
ぶっちゃけ黒歴史に近い気がします(′・ω・`)
まぁ、はい。
お読みいただき、ありがとうございました。