第一話 新しい始まりの予感
初投稿、初長編に挑んでいます。まだまだ至らないところがあると思いますが、暖かく見守っていただけると幸いです。
走って走って逃げてきた先には、周囲を森で囲まれた小さな村があった。雨に打たれながら、いくつもの森を抜けてきた俺には意識を保つのが限界だった。
俺は近くにあった小屋に倒れこむように入り、意識を失った。
俺は昨日の雨からは考えられないような温かさを感じて目を覚ました。そこには横で俺の腕を抱え込むようにして眠る可愛らしい少女がいた。
その少女は、恐らく12,3歳くらいだろうか…俺の腕を抱え込んでる手は、少女の年齢に相応しくないほど細く、振り解けば折れてしまいそうなほどだった。俺が少し手を動かせば無くなるのを怯えるようにして無意識にその手に力を入れる少女は見れば見るほど可愛かった。
俺は昨日の疲労など忘れ、その少女の頭を優しく撫でて続けていた。
ガラガラっとやけに小屋に響く音がして見知らぬばぁさんが入ってきた。ばぁさんは驚く素振りも見せず事情を説明してくれた。
「あんたはねぇ昨日の夜勝手にうちのドアを開けて入ってきたんだよ。見るからに弱ってたし適当に寝かしたんだ。私しゃ一人もんだしその子もあんた気に入ったみたいやし怪我が治るまでここにいとき」
「いろいろありがとうなばぁさん。ちょっとの間世話にならせてもらうな。ところでばぁさん、この子は誰なんだ?」
「この子はあの戦争の難民だよ。ひとんちの家に勝手に入り込むような世間知らずでもあの戦争は分かるだろ?他の事はこの子自身に聞きな。」
「あぁ。分かった。」
ばぁさんは伝える事はそれだけだという風にして料理を作り始めていた。
あの戦争、それは隣国で兵器と呼ばれる虐殺装置によって生み出された史上最悪の戦争だった。しかしそれは先月の終わり頃にいきなり終戦した。敵国の兵器を作る商人が姿をくらましたからだ。
しかし、終戦したからと言っても隣国の領土の一部は使い物にならなくなり、領土の一部は敵国に奪われた。
そこでこの子のような難民や敵国に奴隷にされそうになり逃げてきた人達がこの国にはたくさん居る。
そこまで考え込んだところで、朝ご飯ができたと告げるばぁさんの声が聞こえた。俺はこの子を起こしてばぁさんのところに行く事にした。
「起きて?ばぁさんに呼ばれてるよ」
俺はできる限り優しくそう言い、肩を揺すった。
「んーっ朝?」
「そうだよ。だから起きて?」
「んー分かった。」
そう言ってモゾモゾ布団から出てきて俺の腕の中に収まった。俺は少し戸惑いながらもまだ眠そうなこの子を抱き上げばぁさんのいる部屋に連れて行った。
「ばぁさん連れてきたよ。」
「あんたねぇ、気を使ってくれるのはいいけどねぇ。その子は寝かせてていいんだよ。」
ばぁさんは皿をもう一人分並べながら、少し呆れた顔でそう言った。俺がその事に対して首をかしげているとモグモグ朝ごはんを食べているこの子が口を開いた。
「私、ご飯食べなくても大丈夫。それに私日浴び過ぎると倒れる。だから夜行性。けど貴方と話したかったから、ありがと」
「ご飯食べなくても大丈夫?それはなんでだ?俺ももっと君と話してみたいよ。」
「君じゃない私エル。そう呼んで?口調も無理しなくて大丈夫。」
「おぉ、じゃあそう呼ぶなエル。俺は稲崎 ハヤトだ。よろしくな。」
「ん、ハヤト、よろしく。じゃあ何が聞きたい?」
俺は、エルについての話を聞いた。
エルは、隣国からやってきた難民で、夜行性なのも、食事を取らなくても大丈夫なのは、吸血鬼族だかららしい。吸血鬼族のほとんどはその高い戦闘能力から戦争に駆り出されて今では同族が残り少ないらしい。
エルもあの戦争で両親を亡くした。と言っていた。
吸血鬼族の特徴は後成長が物凄く遅い事と少量の血液で生きていけるという事だった。
つまりエルは見かけによらず結構なお年という事になる...異世界クオリティ最高かよ合法ロリって と考えているとエルが首を傾げた。
「ハヤト、何か悪い事考えてる?」
エルから黒いオーラが...どうにか誤魔化さないとな
「エル、俺にも聞きたい事あるか?出来る限り答えるぞ」
「聞きたい事、沢山ある。ハヤト、その服かなり上質なもの。ただの旅人には見えない。ここに来る前はどうしてたの?」
エルは暇なのか朝ごはんを食べ終わって一休みしていた俺の膝の上に乗って突然話題を振ってきた。
しまったなぁ。出来る限り言いたくはないんだけどな...
「あの、言いにくい事なら今じゃなくてもいい。あっ、村見に行く?今ならいっぱい人、いるよ?」
俺はエルの提案に乗ることにした。俺ばっかりエルに聞いてしまったが、まだ出来れば言いたくなかった。
「あぁ、じゃあそうさせてもらうよ。エルは日に当たって大丈夫なのか?痛かったりしないのか?」
吸血鬼族は滅多に聞かない種族だから何かと謎が多いし、少し心配だ。エルなら危ない事はしなさそうだが、
「だいじょーぶ。私、あんまり力強くない、だからフード被ったら、1日外出てても平気。」
「そうなんだな。イメージ的に日に当たったら即効灰になってきそうなんだけどな。」
「えっ、なにそれ。怖い。」
「あはは。ごめんごめん。」
俺は柔らかい髪を撫でながら言った。
「 じゃあ、いこう?」
俺の服の裾を引っ張りながらエルはとことこ歩いていった。
「まぶしっ。」
俺はその外の明るさに思わず、声をあげた。
村は、緑に囲われていてまさしくなんだか5年後には森になりそうな村だなぁっと思った。
村の中をエルに、教えてもらっているとなんだかこの村にはいささか違和感のある集団を見つけた。
「エル、あの集団は村人か?それにしてはごつくないか?」
「....うん。多分私と一緒の難民。けど様子が少し変。」
「あぁ、なるほどな。だから違和感があったのか。確かに様子変だよな。」
だってその集団は、村のじぃさんとガキを蹴って脅していたからだった。




