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次に目が覚めるときは。  作者: ぺるー。
5/5

慣れ始めた新しい世界。だんだんと開かれてゆく心。

目覚めた。


私となつきはいつの間にか眠ってしまって

いたみたいだ。

私がなつきの生き返り証明書にサインすると、

なつきは部屋を出て行った。 


しばらくして、私となつきは

あの白い大きな部屋に行った。

部屋には、たった1人ただただぼーっとしている子だけがいた。

私が初めてこの部屋に入った時も、

ああやってぼーっと一点を見つめていたような

気がする。

あの子はいつもあんな風に過ごしているのだろうか。


「ねえねえ、これサインしてもらっていいかな?」

なつきが話しかける。 


「あぁそっか。なつきは赤ベルトだもんね。

いいなあ。」

羨ましそうに言う彼女は、

確かに黒ベルトだった。

なつきは、サインをもらうと、またまた足早に

部屋を出て行った。

部屋には、私とその子2人だけが残った。


「ねえねえ!私なこっていうの!

名前で呼んで!あなたの名…


「20番…20番でいいから。

私、名前とか覚えてなくて…だから人の名前も呼びたくないの。ごめんね、32番」


「そ、そうなんだ。。。

あ、あの…自殺の理由とかって…」



「私ね、別にいじめられた訳でも、親に捨てられた訳でもないんだけど、なんか…辛くなっちゃって…。誰かが笑ってたら、私を見て笑っているように感じて。誰かが小声で話しているだけで、

私の陰口を言ってるんじゃないかって思って。

私と仲良くしてくれてる人は、裏で何か考えていて、私は利用されてるだけなんじゃないかって。何もかもそう考えちゃって辛かった。

でも別に何の証拠があるわけでもないし、

端から見たらただの私の被害妄想だし。

でも辛いのは変わんなくて…

お風呂で自殺したの。

もう二度と戻って来れないようにって、

自分の手足を縛って、お湯を張った湯船に

飛び込んだ。

苦しかった、すごく。きっと私の体はまだ

生きたがってたんだろうね。

でも心は追いついてなくて。。。

気がついたら、ここに。」


脳死前の私とどこか似ている気がするのは、

気のせいだろうか。

私もこんな考え方をしていた気がする。

(だから私、自傷癖なんかに…?)


「こんな辛いことはいつまでも覚えてるくせにね、名前は思い出せなくてね。

笑っちゃうでしょ?

もちろん、自殺したことは後悔してるし、

黒ベルトの私は一生生き返ることはできない。

でもね、私ここで変われた気がするの。

明るくなった、前よりもずっと。

だからいいんだ。

私はここで、家族を見守ってるの。」


前向きだ。

私もこんな風になりたい。

そう思った。


次の日、私はなつきにいろんな部屋を

案内してもらった。

「ここが室長の部屋ね」


すっかり忘れていたが、私はまだ室長に

会ったことがなかった。

「私、挨拶してくるね」


重いドアを開けて、部屋に入った。

「し、失礼します…

木原なこですよろしくおねがいします…」


「あぁ、32番ね。はいはい。」


なんだこいつ。

感情とかそういうものはないのか。

そんなことを考えながら、部屋を後にした。


「そう言えばずっと気になってたんだけど、あの白くて大きい部屋にある…


「ああ~大部屋ね」




「その、大部屋にぶら下がってるナイフって、

あれなんなの?」


「赤ベルトの自殺用。

もうカンペキに死ぬって決めたときに、

自殺するためのナイフだよ。

私、最初のほうは死ぬ気満々だったから、

そのナイフを自分の部屋にもってくとこまでは

いったんだよ。でもね、やっぱ私には勇気がなくて無理だったわ(笑)」

なつきは笑っていた。



はー。部屋に戻ったら何をしようかなー。

モニター使えたら地上言ってみようかなー。

何かさっきからバリボリバリボリうるさいなー。

モニター使えなかったら何しようかなー。

それにしてもバリボリバリボリうるさいなー。


私がぼーっとしているうちに、気づけばなつきは

隣でせんべいをバリボリバリボリ食べていた。

食べたそうに私が見ているのを見て


「食べる?生きてた頃ポケットに入ってたやつだけど(笑)」

といった。

「いいの?大事なものでしょ?」


「いいの。誰かと食べたくて。」

そう言ってなつきはせんべいを2つに割って、

私に渡した。


や、やさしい。

そんなことを考えながら受け取ろうとした私は、

見事に失敗し、小さな半分のせんべいは、

儚く、悲しげに地面で砕けた。


「「あ。」」


私が悲しそうな顔をして砕けたせんべいを

見つめていると、なつきは更に半分のせんべいを

半分にして、「はい」とだけ言って渡してくれた。


や、やさしい。

なんだろうこの子、天使だ。

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