坂江と土岐
夕暮れの夏の日差しが、窓ガラスの向こうでキラキラと輝いている。
サカエの肩越しにそれをぼんやりと見ながら、その細い体を抱きしめた。
肩がじわりと温かくなって、トキがまた泣いているのだと思った。
いつになれば、彼の涙は枯れてくれるのだろうかと考える。
絞められた首には違和感があって、少し息がしにくかった。
殺してくれても構わないとは思わないけれど、彼には満足して欲しかった。
サカエの耳元で好きだと呟く。
彼は、そう、と返してまた泣いた。
次に、寂しい、と言った。
どうして、俺は彼の気持ちの全てを理解する事が出来ないのだろう。
「何が、寂しいの」
彼はいやいやをするように、額を俺の肩に擦り付ける。
傍に居るよ。それじゃあ駄目なのかな。
それだけじゃあ、きっと駄目なのだろうな。
俺が好きだと初めて言った時、彼は嬉しそうにしたから、きっとその言葉は間違いでは無いのだと思ったのに、それすらも間違いだったのかな。
「トキ」
「なに?」
「トキ」
「ん?」
サカエはまた俺の肩に額を擦り付けて、抱き締める腕に力を込めた。
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