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キレイな赤い華  作者: もりりん
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契約と修行の始まり

 言っていることは無茶苦茶だけど、王様の態度に関してのみ言うなら、僕の中では評価は高い。国の頭でありながら、高々一人の小僧相手に自らの非を素直に認めるのはそう出来ることではない。


 こういう人達は一般人が許されるような小さなことであっても、有名人だからとか、国会議員だからというだけで叩かれる。


 例えば、一般人がネットで悪口を書いても、程度が軽いものならニュースにはならない。だけど、どうだろう?俳優等が愚痴るように一言悪口を発しただけで炎上し、ニュースになる。


 これはある意味差別と変わらないだろう。人種差別や、宗教の違いによる差別、そういうものに対しては口を揃えていけない、やめるべきだと叫びながら、有名人のたった1つの悪口に対しては、有名人は一般人と違うんだから気を付けないと等とほざく。そもそも一般人だって悪口を言わないに越したことはないにも関わらずだ。



 だから有名人や国会議員、その他もろもろの影響力がある人達はできる限りそういったスキャンダルを無くす。ドラマとかでも金の力で子供の罪を揉み消すなんてよくあるシーンだ。



 それを、この王は臣下がいる前で堂々と非を認め、尚且つ一番重要なことを隠さずにはっきり言い切った。これはかなり評価に値する。



 「話はわかったよ。上からで申し訳ないけど、僕の中では王様は評価に値する人間だと言うことがわかった。でも、だからと言って命をかけることを易々と決められる訳じゃない。だからまずは、1ヶ月で命の危険に対する覚悟、人を殺す覚悟がつけられるかどうか、それによって受けるか受けないかを決めさせてほしい」



 僕がそう言うと王様は王妃と少し言葉を交わしてから、僕の方を向いて頷いた。でも、まだこれだけじゃ足りない。


 「あと、僕になにかメリットがほしい。なんのメリットも無いのに命をかけるなんてバカらしいので」



 僕の言葉に、さっき怒鳴った騎士がピクッと反応したが、突っかかってはこない。まあ人類のためっていう理由だけで死ねるなら、人類のうち男女のペアを少し残して、それ以外の人間が体に爆弾でも着けて敵地に乗り込めばいい。っていう話になってくるので当然と言えば当然だ。


 「ふむ、お主は何を望む?もちろん成功すれば報酬を出すが、生きているうちに何も無ければ意味がない、そういうことじゃろう?できる限りにおいては提案を飲もう」



 王様は特に怒ったりするでもなく、当然だと言わんばかりの態度で聞いてくる。まあ人類存続の危機だからね。そりゃ一人の人間に対するものなんて些細なことだろう。



 「じゃあ、いくつか。まず、魔王を倒すまで勇者が僕であると言うことを秘匿しておいてほしい。二つ目、この場所の近くに家がほしい。三つ目、王様と対等の権力がほしい。今はこれくらいかな。一応提案だからあとは王様の意見と合わせてってとこかな」


 まあ結構無茶なことを言っているとは思う。一つ目二つ目はまだしも、三つ目なんて本来こんなことを言った時点で打ち首だろう。だけど、どうしてもこれは必要なんだよね。



 「一つ目と二つ目はまあ良かろう。ただ三つ目がのう……。一応理由を聞かせてくれるか?」


 まあそうなるよね。


「まず一つ、僕は協力者であって、この国の所有物ではないというのを、他人に知らしめるため。この理由は主に魔王を倒してからのことを考えてだけど、一応。さすがに魔王を倒したら僕の顔だって知られるだろうし、バカなやつらがちょっかいを出してくるかもしれない。それをはねのけるためだね。あとはもうひとつ、もし王族しか入れないような場所とかがあったら入りたいっていう理由。宝物庫を漁ったりとかじゃなくて、閲覧禁止文献とかそういうの」



 閲覧禁止文献とかあるか分かんないけど、ここは魔族とかいる世界だし、禁術みたいな魔法があるかもしれない。そういうの目当てだ。


「理由はわかった。本来会議が必要な内容じゃが、こんな話が通るわけないのでな、我の独断でその権利を与えよう。しかしじゃ、国民にそれを振りかざそうものなら、我自らが刺し違えてでもお主を殺す。これでどうじゃ?」



 なんだろう、殺すと言った瞬間、地球では味わったことのない空気に襲われた。居心地が悪くて息がつまる。今にも逃げ出したい。これが殺気というやつなのかな?


 ……甘く見ていたかもしれない。


 僕は地球では割とどんなことでもかなり高いレベルでこなしてきた。だから正直言えば殺されるかもしれないという覚悟なんて、簡単に出来ると思ってた。でも、これはやばい。座ってる人間の放ったもの、それに仮定の話をしてるだけなのに、それですら恐怖で逃げ出したい。


 覚悟なんて、できるのだろうか。


 別に出来なきゃ出来ないで問題はないのだけど、権力をくれとまで言ってできませんでしたは僕の名前に傷がつく。だからやるしかない、が、どうなることやら。


「おーけーだ。契約成立だね」











 さて、翌日。

 昨日はあの後僕に戦を教える、いわば家庭教師を紹介され、そのあと客室に行き、そこですごした。家は一週間あれば用意できるらしいので、それまでは城でお世話になる。


 今はその家庭教師と戦闘の基本についてだ。午前中は体力作りのために筋トレやらマラソンやらをした。でもどういう訳か家庭教師の先生、名前はレオンと言うのだけれど、彼よりも優れている。


 こんなに体を使って戦闘を続けている世界の、それも王様の直接の推薦を受けたかなりすごいであろう人にも劣らないとは、ここまでくると僕は異常なのかもしれない。人間としての能力は神に愛されているようだ。


 で、先ほど昼食を終えて午後の部だ。














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