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ワンダラー放浪記  作者: 島隼
第二話 男のロマンは永遠に。。。(前編)
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第二話 【1】

「なんか儲かりそうなのはあるか?」

 ジェイルは自分も座っている卓の正面で、同じく仕事内容がまとめられた資料に目を通しているカイトに聞いた。

 ここは、都市同盟の一角を占める街クレスト、その大通り沿いにあるギルドである。そして、いつも通りジェイルとカイトが仕事を探しに訪れていた。二人はギルドのカウンターの上にある、通称「飯の種」と言われるギルドに依頼されている仕事がまとめられた資料を手に取り、ギルド内にある小さな円卓で割のいい仕事を探していた。

「瘴獣退治は無いな。やり易い仕事なんだが。とりあえず、すぐに取りかかれそうなのは、商人の隣町までの護衛ってのがあるが、移動となると支度金が高くつく。儲けは少ないだろうな。そっちは?」

「似たようなもんだが、割の良さそうな仕事が一つあった。俺の趣味じゃねぇが、人物調査だ。依頼主はこの街の魔法士協会。報酬は書いてないがお役所系だから結構高いんじゃねーか」

 ジェイルは資料の一枚をカイトに見せる。

「人物調査? 俺も趣味じゃないな」

「だが、仕事を選べるほど裕福じゃねーしな。四人分の食いぶちを稼がにゃならん」

「...まぁな」

 ワンダラーのパーティで常時四人というのはかなり多い方である。通常は二人程で、仕事によっては他のワンダラーと組んで四、五人で、というのが一般的である。当然、人数が多ければその分生活費も掛かるため相当稼がなければならないが、大きな仕事はそうそうあるわけもなく、そうなると数をこなさなければならない。

「しょーがねー、これにしよう」

 ジェイルはそう言いながら立ち上がると、人物調査の資料を片手にギルドのカウンターに向かった。そして、店主に仕事受ける旨を伝え契約を交わすと依頼人の連絡先を聞きギルドを後にする。

「待ち合わせ場所は?」

「魔法士協会の中だ。行ったことねーな」

「今回はミーファとエマも連れて行こう。魔法士協会ならミーファが居たほうが信用度も高い」

「ああ、ミーファ自体に信用度があるかは知らんが……」

 ジェイルは腕を頭の後ろに組みながらカイトを見た。

「あいつも、魔法士協会ではおとなしくしてるだろ……多分」

 そう言いながらもカイトは心配そうだ。魔法士協会というのは、その名の通り魔法士達が作った協会であり、魔法士の登録から魔法の研究、教育を行っている機関である。登録されている魔法士に対しては、魔法士に犯罪の疑惑が掛けられた際の弁護も引き受けるため、魔法士からの信用度は高い。魔法が使える者は何か犯罪、特に放火などがあった際は真っ先に疑われてしまうため、犯罪者として名が上がってしまうことが多い。

 ジェイルとカイトは話しながら現在の拠点としている安宿に戻ると、エマとミーファが使っている部屋へと入った。

「あれ、ミーファは?」

 カイトは部屋の中の窓際にあるテーブルの席に座り、外の通りを眺めていたエマに尋ねた。エマは室内のためかいつもの緑のバンダナは巻いておらず、長い耳が露出していていつも以上にエルフらしい。

「風呂だ」

 エマが部屋の内部にある浴室に目を向けながら答える。

「あいつは一体、一日何回風呂に入るんだ……」

「今日は三回目だ」

 カイトの言葉を質問と受け取ったエマが真面目に答える。

「いや、そうじゃなくて……」

「?」

「いや、いい……」

 カイトも質問した分けではなかった、エルフ族に人族の言葉のニュアンスを伝えるのは難しく、諦めた。その間にジェイルがエマの向かい側の席に座り、カイトはベッドに腰かけた。この部屋はエマとミーファが使っている部屋で、ジェイルとカイトが寝泊まりしている部屋は別にある。

 しばらく三人で話をしていると、浴室の扉が開き、中から大きめのバスタオルを体に巻いたミーファが、もうひとつのタオルで髪を拭きながら出てきた。


「きゃーーっ!!!!!」


 ジェイルとカイトが部屋にいることに気づいたミーファは悲鳴を上げながら浴室に戻って行く。

「うるせぇな。小娘の裸になんか興味ねぇよ……」

「では、カイトのように見ないようにしたらどうなのだ?」

 ミーファの姿に視線を逸らしたカイトとは違い、興味が無い割りには視線を浴室から離さないジェイルをエマが睨む。

「ふっ。見れるものは見る。男の本能だ」

 ジェイルは何故か誇らしげで爽やかな笑顔をエマに向けた。

「人族の男というものは……」

「いや、だからなんでエマにとって人族代表がジェイルなんだよ……。ジェイルはどちらかというと特殊な部類だぞ」

「特殊って…」

 ジェイルが反論しようとした時にミーファが浴室から顔だけだした。

「変態。いるならいるって言いなさいよ」

「わるい。仕事の話があるんだ。早く着替えて来てくれ」

 カイトが浴室の方を見ないようにしている目の前で、未だ浴室を凝視していたジェイルがエマに蹴られている。

「仕事? ちょっと待って。エマ~、ベッドの上のあたしの服取って~」

 エマは立ち上がると「やれやれ」と言いながらも、ベッドの上で脱ぎ散らかされていたミーファの服を取ると手渡した。

「ミーファがある意味一番怖いもの知らずだな」

「ああ」

 その行動にジェイルとカイトが関心する。ちなみにエマは百年以上生きていると思われるエルフ族である。

 ミーファは浴室で着替えて、未だ濡れたままの髪をタオルで拭きながら出て来た。そのままベッドの横に行くと、自分の荷物から魔石を取り出しなにやら魔力を込めながらエマの隣に座ると、魔石を自分の正面に置いた。

「……なんでお前の髪はなびいてるんだ?」

「ん? これで髪を乾かしてるの」

 ミーファが魔石を指差しながら答える。ジェイルが正面のミーファの髪が室内なのに風になびいているのが不思議だったようだ。

「魔石? 風の魔法か…。便利なもんだな」

「でしょ。まぁ、変態ジェイルには無用なものだけどね」

 ミーファはタオル姿を見られたことに相当怒っているようだ。

「変態じゃ…」

「本題に入るぞ。待ち合わせに遅れてしまう」

 ミーファの言葉に反論しようとしたジェイルの言葉をカイトが遮る。

「なんか俺、最近扱いが悪くねぇか?」

「気のせいだ。それより、今回の仕事だが魔法士協会からの依頼で人物調査だ。これから依頼人のもとに行くからミーファにも来てもらいたいんだ」

「人物調査ぁ? つまらなそう……あたしパス」

 ミーファがあからさまに不満そうだ。おそらく魔法が派手に使えそうもないところが嫌なのだろう。

「ふざけんな。むしろお前一人でやってこい!」

 ミーファの言葉にジェイルがいらついた声を上げる。

「やーだよー!」

「てんめぇ~……」

「えーい、話が進まん!! 誰がやるかはともかく、とりあえず話を聞け!!」

「人物調査とはなんだ?」

 エマが頃合いを見計らい聞いてくる。

「そのままの意味だよ。特定の人物を調査するんだ。まぁ、何か怪しいことでもしてるんだろう」

「……?」

 エマはよくわからないといった顔をしている。

「まぁ、やってみればわかる。で、今回の依頼主、さっきも言ったが魔法士協会なんだ。それで、とりあえず話を聞きにいくときにミーファにも来てもらいたいんだ」

「あたし、ここの魔法士協会に登録してないよ。登録は地元でしてるから」

「そうだろうが、俺もジェイルも魔法士協会ってところは行ったことがなくてな。どうせヒマだろ?」

「ヒマかって言われたらまぁ、、、しょ~がないな~」

「何故カイトには従う…」

 ジェイルは不満そうだ。

「これが人徳だよ、ジェイル。エマはどうする?」

「私も行く。興味がある」

 そう言うとエマは立ち上がり、つられてカイトも立ち上がった。

「ちょっと待って、まだ髪が乾いてない…」

「……」

「……」

 エマとカイトは座り直した。

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