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ワンダラー放浪記  作者: 島隼
第三話 トレジャー・ハンティング……!?(中編)
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第三話 【8】

「まさに隠し部屋というか、隠し通路だな」

 中に入ったカイトは奥へと続く通路を見た。通路は闇に包まれていたが、ミーファが崩した壁から入り込むわずかな光でなんとか周辺は見ることが出来た。その光が届く最後のところでは通路が右に曲がっているように見える。

「こいつぁ、ちょっと面白くなってきたじゃねぇか」

 遺跡調査自体には興味を示していなかったジェイルも、この展開にはかなり興味をそそられたようだ。

「さっそく調べてみようぜ。ミーファ、光作れるか?」

 ジェイルは後ろにいるミーファに声を掛けたが、ミーファはまだ体調が悪そうだ。

「うん……。光くらいならなんとか」

 ミーファは辛そうにしながらも杖を構えると、ガリエルが優しく杖を下げさせた。

「?」

「ファスティーナや、光は作れるじゃろ?」

「あ、はい。大丈夫です」

 ミーファの隣で心配そうにしていたファスティーナが答える。

「ファスティーナ殿も魔法が使えるのですか?」

「はい。ミーファさん程のことは出来ませんが、光程度であれば大丈夫です」

 それを聞いたミーファが隣で額に脂汗をかきながらも得意気な顔をしながらファスティーナに自分の杖を渡した。

「お借りします」

 ファスティーナは杖を受け取ると胸の前に構え集中する。あまり魔法は得意ではないのか本来発動までにあまり時間のかからない自然魔法にもかなり集中しているようだ。

「光よ!!」

 ファスティーナが声を発すると魔法の光がミーファの杖の魔石へと吸い込まれ、そのまま魔石が光を放ち始める。

「どうぞ」

 ファスティーナは杖をカイトに渡すとカイトは奥を照らした。奥は薄らと見えていたとおり、突き当たりで右に曲がっている。

「よし、行くか」

 カイトは奥へと進み始めるとガリエル達四人が続き、最後尾にジェイルついた。

「何か怖いね。少し息苦しい感じがするし」

「そうじゃの、二百年以上封印されていた場所だ、空気の循環もなかったのじゃろう。カビ臭さがあるの」

 ミーファの後ろを歩いていたガリエルが答えると、ジェイルが割って入る。

「それだけじゃねぇ、瘴気もかなり濃い。気を付けろよ」

「何を?」

「どこに瘴獣がいてもおかしくない」

「え? ホントに?」

 ファスティーナに支えられながら歩いていたミーファが慌てて回りを見回したが、何かがいる気配は感じない。

「何もいないよ?」

「油断するなということだ」

 前を行くカイトがあたりを警戒しながら補足した。

 六人はそのまま進み、奥の角を右に曲がるとすぐに一つ部屋があった。先頭行くカイトは注意深く中を覗くと、その脇からミーファもファスティーナから離れて一緒に覗き込んだ。

「わっ!! これって、もしかして……棺?」

「俺より前に出るなよ。だが、そのようだな。しかし、こんな所に棺を置くなんて……」

 部屋の中には奥の壁際に簡素な祭壇があり、その手前に二つの棺のような長方形の箱がある。その箱の蓋には何か紋章のようなものが刻まれていたが、土埃に埋もれてよく見えない。

「おおっ、これはめずらしいの。確かに棺のようじゃが、埋葬されずに神殿の中にそのまま置いてあるとは」

 ガリエルはカイトに続いて中に入ると、棺のような箱の紋章近くの土埃を払った。

「もしかして、カトレイティア家の紋章?」

 ミーファも恐る恐る中に入ると、紋章を覗き込んだ。

「いや、違うの。カトレイティア家の者の棺ではないのじゃろう。しかし、これはかなり興味深い。外の神殿部分では棺は見つからなかった。すぐに中を調査したいが……」

「ここは後でゆっくりやってよ。あたしは他が見たい」

「ふむ。そうじゃの。棺の調査となると、手持ちの道具では満足な調査が出来ん。ここは後で道具を持って出直そう。幸い棺に宝石の装飾は無いから盗掘の心配も無いじゃろ」

「奥に進みますか?」

「うむ、そうしよう」

 カイトの問いにガリエルは頷くと、部屋の外へと出た。

「ジェイル……」

「ああ、気配はしねぇが……嫌な感じだな」

 二人も外に出ると、再度カイトを先頭に進み始める。最後まで中の様子を伺っていたジェイルが最後尾に続いた。

 

 奥に進むとさらにいくつかの部屋があり、ジェイルの言うところの『お宝』はもちろんのこと、文献のようなものも無く、机やベッドのようなものが置かれた殺風景な部屋が続いた。

「つまんねぇな。何も無ぇじゃねぇか」

「ほんと、期待はずれ~」

 ジェイルと幾分元気を取り戻し一人で歩けるようになったミーファはいくつかある部屋の一つを覗きながら、不満を口にする。

「ミーファ、もう大丈夫なのか?」

「うん。さっきみたいな大きな魔法はしばらく無理だけど、体力的にはもう大丈夫。脱力感は一時的なものだから」

 カイトはミーファの体調を心配したが、ミーファは大分回復しているようだった。

「まあ、あわてなさるな。全ての部屋に価値あるものが存在するほうが無理があると言うものじゃよ。しかし、奇妙ではあるの。さっきの壁は崖の一部だったということは入り口だったわけではない。ということは一番奥から入り口に向かっているということかの。では入り口はどこにあるのか……」

「確かにそうですね。神殿の中では無いのでしょうか?」

 ファスティーナも首を傾げる。

「あ、この部屋すごい!! 本がたくさんある!!」

「ミーファ! あまり一人で先走るな!!」

 いつの間に先に進んでいたのか、ミーファの声が少し先の部屋の中から聞こえた。

「大丈夫!! 何もいないよ!!」

 他の五人がその部屋に入ると、中は先ほどまでとは違い大きめの部屋であり、部屋の壁一面に本棚が並んでいる。部屋の中央には本を読むためのものかなのか、机と椅子が置かれており、その机の中央には古ぼけた燭台のようなものがあった。

「これはすばらしいの。図書室のようなものか?」

 ガリエルは中に入るとファスティーナと共に本棚を一通り見ていく。ミーファは本棚の中から魔法書のようなものを発見すると、ガリエルに断りもなく読み始めた。

「あ、これは!! お父様!! これを! これ、カトレイティア家の家系図ではありませんか?」

 ファスティーナは一冊の本を取り出すと、中を見てガリエルを呼んだ。

「なんと!! カトレイティア家の邸宅跡にも神殿側にも無くて探しておったのがじゃが、こんな所にあったとは……」

 ガリエルはその本をめくると、感嘆の声を漏らした。ファスティーナは家系図をガリエルに渡すと、他の本を見ていく。

 ジェイルは本には興味が無いのか、本棚の後ろに隠し部屋が無いかとしきりに本棚を調べている。エマとカイトは読めそうな本を適当に読み始めていた。

「すばらしい。カトレイティア家の初代と思われる代から載っておるとは。これを研究すればタリアマル公国の謎が解けるかもしれん」

「お父様。こちらもです。この神殿の司祭のものと思われる日誌がありました。所々欠けていたり、司祭独特の文言で書かれいるため、すぐには読めませんが調査すればこの神殿の目的もわかりそうです」

「これは来たかいがあったのぉ。この二つだけでもすばらしい成果じゃ!!」

 ガリエルは相当興奮しているようだ。

「他の本もカトレイティア家とこの神殿にゆかりのある本のようじゃ。ここは記録室なのかもしれん。これは持ち帰ってじっくり研究してみる必要があるの」

「そうですね。今回で半分程は持って帰れると思います」

「他の部屋はよいですか?」

 興奮冷めやらぬガリエルとファスティーナにカイトが聞く。近くでは隠し部屋が見つからなかったジェイルがいろいろな本をやたらとめくっている。どうやらだれかが隠したへそくりを探しているようだ。

「いや、他も見てまわろう。この文なら他の部屋も期待が持てるかもしれん」

「ねぇねぇ!! この本もらっていい?」

 ガリエル達が本の調査をしている間、ずっと魔法書らしきものを見ていたミーファが声を上げる。

「ん? 見せてくれるかの?」

 ガリエルはミーファから本を受け取ると中身を確認する。

「陣魔法の魔法書のようじゃの」

「うん。昔使われていた陣魔法らしくて、あたしが知らないものもたくさん載ってるの」

「ふ~む。難しいの。歴史的価値が高そうじゃしの。写しではだめかの?」

「え~。これ全部写すのは無理だよ。だめ?」

「う~む。まあ、お主がおらんかったらここにこれんかったしの。いいじゃろう。ただ記録は残したたいから、一旦は預けてくれるかの。何、一日もかからん作業じゃ」

「やった!! 了解!」

 ガリエルは気前よく了承すると、ミーファは喜んだ。

「では、他の部屋に行きましょう。ジェイル! 諦めろ。一般家庭じゃないんだから……」

「ちっ。昔の奴らはへそくりの習慣も無かったのか」

「少なくてもこういう場所ではやらないだろ……。エマ、行くぞ」

 エマもずっと何かの本を呼んでいる。

「うむ」

「何の本読んでたんだ」

「いや、人族の昔の文字だから読めなかったが、竜の絵が書かれた本だったのでな」

「へ~」

 六人は部屋を出ると、さらに奥へと進んでいく。


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