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ワンダラー放浪記  作者: 島隼
番外編
18/42

第0話 出会い(ミーファ編) 【04】

「いそうだな。いい場所だ」

 カイトの呟きにジェイルも前に出る。

「ああ、ぷんぷん匂いやがる」

「ん? 何が? カイト、おならでもしたの?」

「違う……瘴気の気配が濃くなった。おそらく、キルサーペントがいる」

 緊張感の無いミーファの声に調子を崩されながらもカイトが答えた。

「うそ! どこ?」

 ミーファは構えたが、辺りは闇に包まれているだけで何も見えない。

「……ほんとにいるの?」

 疑惑の目をカイトに向ける。

「多分な。しかし、こう暗くては厄介だな」

「おい、魔女っ子、広範囲を照らせねぇのか?」

「誰が魔女っ子だ!! 大魔法士!! まったく!!」

「で、照らせないのか?」

「う~ん。とりあえず、やってみるけど」

 ミーファは両腕を前に伸ばすと魔力を集中した。

「光よ!!」

 ミーファが叫ぶと、両手の前に光球が現れ辺りを照らす。ミーファはそれを慎重に操ると、ゆっくりと上昇させ身長の倍くらいまでの高さになったところで、今度は前へと進めていく。カイトはそれを関心しながら見ていたが、ジェイルは納得せずに悪態つく。

「もっと明るく出来ねぇのか? あれじゃ大して見えねぇじゃねぇか」

 ジェイルがミーファに注文すると、光球は消えてしまった。

「ちょっと!! 話しかけないでよ!! 魔石無しで魔法を維持するのがどれだけ難しいかわかってるの!!」

「お前の能力が低いだけじゃねぇのか?」

 ジェイルはわざとらしくそう言うと、ミーファが睨みつけた。実際、魔石無しで魔法を長時間維持するのは相当難しい。魔力の消耗もさることながら、維持している間は常に実体をイメージし続けなければならないため高い集中力が必要である。ジェイルは小馬鹿にしたが、むしろこの若さでこれだけ維持できたことにカイトは関心していた。無論ジェイルもそのことはわかっているが、性格から小馬鹿にせずにはいられない。

「ジェ~イ~ル~………あ、いいこと思いついた!!」

 何か恨みの籠った声を発していたが、途中でこちらもわざとらしく胸の前で手を打つと、カイトに向き直る。

「カイト! さっきのバットの輝石貸して」

「輝石? ああ、構わんが、魔石にするのか?」

「まぁね。それだけじゃないけど」

 カイトから輝石を受け取ると、ミーファはいたずらっぽく片目をつぶって見せた。

「おい!! それ使っちまうのかよ! もったいねぇ!」

「このサイズじゃ売っても大した額じゃないでしょ!」

 魔力を吸収する輝石は街の魔石屋で高く売れるが、輝石に魔力を吸収させ魔石と化したものは、使用済み扱いで売れなくなってしまう。

 ミーファは輝石を両手で握ると、魔力を集中する。

「光よ!!」

 ミーファが声を発すると今度は先ほどとは違い光球に発現せずに、発せられた魔力は輝石へと吸い込まれ光輝く光の魔石へと変化した。

「おし。カイト、これ砕ける?」

「砕く?」

「そっ」

「あ、ああ」

 カイトは意味もわからずミーファから光の魔石を受け取り、代わりに杖をミーファに返すと剣を抜いてその柄で魔石を強く叩き砕いた。隣りではジェイルがぶつぶつ言っている。

 カイトはかなり細かくなるまで何度か叩いた。

「こんなもんか?」

「おお、いい感じ。貸して」

 カイトは砕いた魔石をミーファに返すと、ミーファはそれを両手の手の平にのせた。

「風よ!!」

 ミーファを中心に渦を巻いた風が発生し、手の平の上の細かく砕かれた光の魔石を四方へとまき散らす。辺りにちりばめられた魔石の発する光で、かなり広範囲に渡って見通せるようになった。

『おおおっ!』

 カイトとジェイルは思わず、感嘆の声を漏らしたがジェイルはすぐさま口をつぐむ。ミーファを見ると、案の定得意満面の笑みで振り向いた。

「んっふっふっふっふっふ。諸君、あたしの有能さがわかったかな??」

「くぅ、油断したぜ!」

「何をだ?……」

 ジェイルは思わず感嘆の声を漏らしてしまったことを悔やんだ。カイトがそれに呆れていると、ふと魔石の光とは違う光を四つほど、視界の端に捉える。

「ジェイル……」

「ああ。二匹はいやがるな。こりゃあ、報奨を釣りあげねぇといけねぇ」

 ジェイルも既にそちらに視線を向けている。

「複数も込みだからあの金額なんじゃないのか? そもそも何匹なんて指定も無かったろ?」

「複数とも書いてなかったから交渉の余地はある!」

「ま、まぁ、好きにしろよ。で、どうする?」

「俺とお前で一匹づつでいいんじゃねぇか?」

 カイトの問いに背中の大剣を抜きながらジェイルは答えた。

「それは構わないが…」

 カイトは後ろにいる、聞き耳を立てながら未だ得意げな顔をしているミーファに視線を向けると、ミーファが口を開いた。

「ちょい待ち、おじ、、、お兄さん方。 大事な大戦力の主役を忘れちゃいませんか?」

「俺のことか? それなら問題無い。ちゃんと勘定に入ってる」

 ジェイルは事も無げにそう言うと、ミーファの額に青筋が立つ。その間にも、二匹のキルサーペントはこちらの様子を伺いながらジリジリと間合いを詰めてきていた。

「私の実力も知らないくせに~!! 見てなっっっ ちょ、変態!!」

 ミーファが話している最中に突然ジェイルがミーファを抱きかかえると、横に飛んだ。カイトは逆側に飛んでいる。ジェイル達が着地すると同時に三人がいた場所の地面の石が弾け飛んだ。

「な、何!?」

 ミーファはジェイルに腰を片手で抱えあげられた状態でジェイルの頭にしがみつきながら、何が起こったのかわからず弾けた場所を見つめている。

「まったく、敵が目の前にいるのに油断してんじゃねぇよ」

「むぐっ。ちょっとよそ見しただけ!! で、、、何が起こったの?」

「尻尾でなぎ払ったんだよ」

 既にキルサーペント達はミーファが作り出した明るい地面の領域まで侵入していた。尻尾でなぎ払った方は蛇を単純に人の倍程の長さと太さにしたような姿をしており、もう一匹はそれよりも小ぶりだったが、その頭は平たく横に長くなっていて菱形のような形をしており、尻尾の先には鋭い棘がついていてこちらが毒持ちのキルサーペントのようだった。

「ジェイル!! こっちは引き受ける。そっちはまかせたぞ!」

「ああ」

 カイトは自分に近いところにいた毒持ちの方と対峙しながらジェイルに叫ぶ。

「さてと、とっとと片付けるか」

「け、結構大きいね……」

 ミーファは近づきつつあるキルサーペントを見ながら呟いた。

「ん? そうか? キルサーペントってこんなもんだぞ。びびったのか?」

 ミーファを地面に下ろすと、ミーファはキルサーペントを見上げながら唾を飲み込んだ。

「むっ、誰が!!」

 ミーファは強がると杖を構えたが、ジェイルが肩を掴んで下がらせる。

「そこで見てろ」

「ちょっと!!」

 ジェイルはミーファの苦情に耳を貸さず、大剣を振り上げてキルサーペントに向かって突っ込んでいく。それに対しキルサーペントは頭を持ち上げ、一瞬反るようような体勢になると大きな口を開き霧のようなものを吐き出した。ジェイルはとっさにそれをかわすが、臭いからその霧の正体に気づくと後ろに下がる。

「やべっ」

「な、何?」

「毒霧だ! こいつも毒持ちだ」

 ミーファの問いにジェイルは振り向かずに答える。

「毒霧?」

「まじぃな。充満させられると逃げ場を失う」

 地上などの広い空間であれば直撃しなければ大した攻撃ではないが、ここのような密閉された洞窟内では霧は脅威となる。

「どうすっかな」

 ジェイルは対策を考えていると、後ろからミーファがジェイルの腕を掴み後ろに下がらせる。

「そこで見てて」

 先ほどジェイルにやられたことを今度はミーファが得意げな顔でやり返す。

「お、おい、それ以上いくと毒霧の中に入るぞ」

 ジェイルの言うとおり、風の無い洞窟内ではキルサーペントが吐き出した毒霧はそのままその場所に漂っていた。キルサーペントはその毒霧の向こう側で二人の様子を伺っている。

「毒霧といっても、霧は霧。ただの水蒸気でしょ」

 そう言うと、ミーファは杖を毒霧に向けた。

「火よ!!」

 ミーファが声を発すると、杖から大きな炎が噴出し毒霧に直撃する。すると、毒霧は炎によって熱せられ互いに消滅した。

「お、おお」

 ジェイルはまたも思わず声を漏らした。

「ジェイルはそこでおとなしく私の戦いっぷりでも見学してて」

「……」

 ミーファの言葉にジェイルは額に青筋を立てながら、とりあえずは見学を決め込むことにしたのか、大剣を鞘に収めると手頃な岩に腰掛けた。

「お手並み拝見といこうじゃねぇか」


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