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パラパラマンガ

作者: 蒼鬼
掲載日:2026/05/06

著者。梨 氏の【霊媒クラブ】刊行記念、webホラーコンテストの応募作品です。

 パラパラマンガってやったことないですか? 授業中にノートとか、教科書のちょっとした余白の所にちょこちょこっと描いて、暇つぶしにパラパラっとやって動かしたりするだけのやつなんですけどね。私のクラスでは凝り性な男子とかは大作を作って友達に見せてたりしてたりしてたんですよ。

 私はもっぱら見せてもらう方でしたね、一度作ってみたんですけれど丸と線を描くだけで出来る、シャクトリムシが動くだけのやつ。あれしか作れなくてやめちゃったんですよ。絵心もありませんでしたし。

 でもある休日に、両親と一緒にデパートに買い物に行った時なんですけれど、ほら、あるじゃないですか、ぬいぐるみとか文具が一緒くたに置いてある雑貨屋のテナント。あそこでパラパラマンガ付きのノートが売ってたんですよ。

 まあ内容は横向きのうさぎがぴょんぴょん跳ねるだけのシンプルなものだったんですけれど、それでも全体的に淡いピンクで可愛くて、ちゃんとこれで勉強するから。と、親におねだりして買ってもらいました。

 それから、そのノートを友達に自慢しましたね。なんやかんや小学生特有の、流行りものに乗るコミュニティというやつの中で、もてはやされたい。って欲が強かったので。

 やっぱり手描きではない印刷物ですので線は綺麗だし動きに淀みがないので、跳ねるだけのうさぎのパラパラマンガでも、皆はすごいすごいと言っていました。ノートを作ったのは私ではないのに、なんだか私が褒められたようで嬉しくなってしまって、そうするとノートを勉強用に使うのは何だか惜しくなってしまって、たまに授業中にパラパラとするだけのものになっていました。

 事が起きたのは9月の頭でした。夏休みが終わって新学期でバタバタしていた頃です。

 私、置き勉をするタイプで使わない教科書と一緒に、そのノートも置いていっちゃったんです。

 家に帰ってからそれに気付いて、でも私の通学方法はスクールバスだったので、ノート一冊を取りに戻るのに、親に車を出して欲しいなんて言えませんし、なによりも面倒くさかったんですよね。

 それで次の日登校してから、机の中にノートがあるのを確認して、パラパラっとしてみたんです。

 そしたらパラパラしないんですよ、いえ、ノートとか雑誌とか、大きく見ようとか、使おうとする時開いて、戻らないように手で押したりして癖をつけるじゃないですか。

 その癖が、ついていたんですよ。使う目的のない私のノートに。

 そして、癖がついてバッと開かれたページに、とても丁寧な字で、けれども両面全部使い切ろうとするぐらい大きな字で、十文字近い漢字が書かれていたんです。

 内容は分かりませんでした。なんというか、自分がカッコイイと思った漢字を適当に順番に書いていったような。「院」とか「童」とか、その頃の私でも読めるようなものも混じってて、多分あの後居残ってた男子とかが、私のノートに勝手にこんな落書きをしたのだろうと、そう思ったらショックで泣けてきちゃって、それに気付いたクラスメイトが漢字の落書きに気付いて、そこからはもう問題になってしまって、朝礼は顔の分からない犯人への糾弾の場になったりして、担任の先生がすごい勢いで怒っていたのを覚えてます。

 けれど犯人は出てきませんでした、クラスの中のお調子者とか、いたずらっ子に疑いが向けられましたけど、同じスクールバス通いだったり、その日は欠席だったりして、犯人は分からずじまいでした。

 私は一限の終わりに、その問題のページを破って、ぐしゃぐしゃに丸めて捨てました。

 それ以来、パラパラマンガのうさぎは一部分で歪な動きをするようになって。それがなんだか居心地悪いのと、自分のものにケチがつけられたショックと、それと……純粋に気持ち悪かったので、ノートは従妹にあげてしまいました。

 それからしばらくすれば、パラパラマンガブームも下火になって、私もノートを手放したのもあってか、このwebホラーコンテストがリポストで回ってくるまで思い出さなかったんですよね。

 というか、この程度ならホラーよりもいたずらで嫌な思いをした。というだけなんですけど。

 ただ……。

 今思えば、あの漢字の羅列。どうにも戒名だったっぽいんですよね。

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