引き取られる
私が手を握ると、少し笑ってくれた。
けれど完全な笑顔じゃなくて、少し寂しそうだった。
「もう、ここにいる必要はない。ここに預けるべきではなかったんだ。君を振り回してしまって、すまない。今度はちゃんと安全な場所だから、一緒に来てくれないだろうか?私の屋敷なんだが、どうだろう?」
あの日と同じく、私に選択肢をくれる。
私の意見を、ちゃんと尊重してくれる。
信じることは怖い。
また同じ目に遭わないか、不安になる。
けれど、レクシオン様は助けてくれた。
見ないふりをせず、私に何度も手を差し伸べてくれた。
だから、レクシオン様は信じられる。
私はもう一度、あの時のように彼の手を取った。
「ありがとう。今度こそ、君を傷つけないと誓うよ。」
私の方が、お礼を言いたいのに。
お礼を言うべきなのに。
少し、変な人だ。
「さて。神官長にもきっちり、お礼を言わないとな。」
??
意味が理解できなかったけど、レクシオン様が一緒に神官長に会いにいくなら、ついて行こう。
神官長の部屋に行くと、顔色を悪くした神官長が待っていた。
どうして、こんなにも顔色が悪いのだろう?
体調でも悪いのかな?
私には、その理由が全くわからなかった。
「神官長、世話になったね。彼女は私が引き取ることにしたよ。」
「こ、この度は、誠に申し訳なく……」
「謝罪は結構だ。そんなもの、なんの意味もないからね。これからの行動に期待しているよ。」
なんだろう?この会話。
なんだか、背中の芯が冷えるような……
全然、いい感じの会話に聞こえない。
私だけなのかな?
会話の意味がわからなくて首を傾げるけど、その疑問に触れるものはいなかった。
一方的な会話がすんで、私はレクシオン様に手を引かれ夢がまま、部屋を出た。
一応、少しでも過ごしていたところなので、神官長に軽く頭を下げておいた。
レクシオン様と神殿内を通り抜けたけど、私の知っている神殿の雰囲気と変わっていた。
何が変わったのかはわからないけど、何かが違う。
みんな俯いてて暗いというか、言葉が少ないというか……なんかおかしかった。
レクシオン様にエスコートされて、馬車に乗り込んだ。
馬車に乗るのは、これで2度目。
前もレクシオン様が一緒だった。
少し前のことなのに、懐かしく感じられた。
賑やかな市街地を抜けた先に、門があった。
なんで、門?
私がじっと見つめていると、レクシオン様が疑問に答えてくれた。
「あれは、平民の住む市街地と貴族街を隔てている門だよ。貴族なら出入りは簡単だけど、平民は自由に行き来できないようになっている。横暴な貴族もいるから、ある意味平民を守るためでもある。」
そうなんだ。
レクシオン様はいい人だけど、嫌な人もいるんだね。
気をつけないと。
馬車に揺られてついたのは、近くにお城が見える大きなお屋敷だった。
孤児院の何倍も大きいそれに、ポカンとするほど驚いた。
こんな大きなお屋敷、どうやって掃除してるのかな?
すごく、大変そう。
孤児院の掃除をしていた私だからわかる。
部屋数が多いと、それだけ掃除が大変なんだ。
ずっと動けずに見上げていると、レクシオン様が笑いながら促してきた。
「さ、行くよ。」
一つ頷いて、後に続いた。
扉を開けた先には、大きなホールと両端に揃って頭を下げているたくさんの人、人、人。
思わず固まって、足が入り口で止まってしまう。
私、本当にここに来て良かったの?
場違いじゃないかな?
今すぐ後ろを向いて、駆け出したい気分になった。
レクシオン様に背中を押されているので、それはできないことだけど。
「セレイユ。ようこそ、私の屋敷へ。歓迎するよ。」
レクシオン様は慣れているかもしれないけど、私はこの光景に慣れてない。
ちょっと手加減してほしいなぁと、遠い目になった。




