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白日のもとに


私は誰にも頼れない。

頼っても、意味がなかった。

きっと誰だって、私が悪いと言うに決まっている。


誰にも頼らないと決めた私は、レクシオン様からのお土産も、頑なに拒んだ。

私には、必要ない。

だから、もらうことなんてできない。


頑なに拒む私を、レクシオン様は、困ったような悲しそうな顔で見てきた。

そんな顔を見るのも辛くて、久しく顔を見ることをしなくなった。

ずっと俯いて、レクシオン様の話が終わるのをずっと待っているだけ。


私はただ、空虚な毎日を繰り返していた。


そして今日もまた、悪夢の時間がやってきた。


叩かれ、蹴られ、倒れ込んだところを踏みつけられる。


孤児院の時と同じ。

ただ耐えていれば、この時間は終わる。

やり返したら、もっと酷くなるって知っているから。

痛みは、もう随分と前に麻痺してわからなくなっていた。


あぁ、また遅刻だ。

また、怒られてしまう。


今度は、何を言われるんだろう。

今度は、何をされるんだろう。


痛くなければいいな。


カアァァァァァ!!!


「ちょっ……何よ、この鴉!?」


「痛っ!痛いってば!」


鴉……?

レーヴン?

助けに来てくれたの?


アホォ!アホォ!アホォ!


「何、こいつ!馬鹿にしてんの!?」


「こんなやつ……」


「何をしている!?」


「「「「「げっ!!」」」」」


「セレイユ!大……丈夫じゃないな。すぐに医務室に行こう!近衛騎士、この女どもを神官長室に連れて行け。逃すなよ?」


「「「「「はっ!」」」」」


この声、よく知っている。

けど、いつになく冷たくて硬い声。


どうして、そんなに怒ってるんだろう?

私、何かしちゃったかな?

……上手くやれなかったから、怒っているのかな?


そんなことを考えていると、誰かに抱き上げられた。

見上げたその顔は、いつになく怒っているような悲しそうな顔だった。

私の視線に気づいていないのか、前を厳しく見つめながらどこかに向かっている。

視界に映る景色は、とても早かった。


心地いい揺れに少しウトウトしていたら、足が止まった。

目的地に着いたみたいだ。


「医務長、彼女を見てくれ。」


「あら、王弟殿下。お珍しいこと。」


「医務長。」


「わかりましたわ。こちらへ。」


寝かされたのは、柔らかなベッド。

医務長は王弟殿下を一旦外に出し、私の服を脱がせた。


「これは……酷いわね。女性の足と手、かしら。まったく、こんな陰湿なことをする子が神殿にいるなんて。」


不満をこぼしながらも、治療する手つきは優しい。

傷口に薬が沁みるたびに身を固くしていたせいで、治療が終わった頃には体力が尽きていた。


「さ、しばらく寝なさい。ここは私の領域よ。誰にもあなたを傷つけさせないわ。」


頭を優しい撫でられると、疲れていたのもあって意識を手放していた。



私が目を覚ましたのは、翌日のことだった。

薬の効果か、痛みはだいぶマシになっていた。


「おはよう。身体はどう?」


腕と足を動かして、ベッドから降りてみる。

ちゃんと動く。


医務長の目を見つめ、大きく頷いた。


「よかったわ。朝食はどうする?と言っても、もう昼近いんだけど。」


お腹は空いてない。


首を横に振って、遠慮する。


「わかったわ。はい、これ着替えと濡れタオル。終わったら出てきてちょうだいね。」


ひらひらと軽く手を振って、医務長はカーテンの向こう側に消えた。


待たせてしまうのは気が引けるので、素早く身体を拭いて服を着替えた。


カーテンを開けて外に出ると、待っていたのは医務長だけではなかった。

目を瞬かせて驚いていると、私に気づいたレクシオン様がこちらにやってくる。


恥ずかしいところを見られてしまった。


思わず俯いて床を見つめていると、膝をついたレクシオン様が私の視界に入ってきた。


「すまなかった。」


私の手を握り、ただ一言、そう言った。


私は慌てて首を横に振る。


レクシオン様のせいじゃない。

全部私が悪いのだから。

謝られる必要はない。

レクシオン様は、何も悪くない。


気持ちを込めて、両手で彼の手を握り返した。






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