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影の調査 SIDE:レクシオン

いつもより長めです。


あまりいい環境とは言えなかった孤児院から引き取り、セレイユをどこに住まわせるべきか悩んだ。

特別な力を持つセレイユは、きっと神に連なるものだろう。

それならば、神殿に預けるのが一番いいと思った。


道中、同行していた騎士たちから報告があった。

セレイユの世話を頼んでいた女中が、セレイユの身体に暴行の跡が複数あることを報告してきたのだと言う。

おそらく、孤児院で受けたものではないか、とのことだった。


彼女にとって、孤児院は安心できる場所ではなかったのだ。

ならば今度こそ、彼女が安心できる場所で過ごしてもらいたい、そう思った。


彼女は他人がいる前ではなかなか話さないけど、私と2人の時は話してくれるようになった。

初めて会った時よりもずっと、表情が柔らかくなっていったのを見て、ホッとした。


もっと、いろんな表情が見てみたいと思った。

無表情だからわかりにくいが、きっと笑ったら美しい。


彼女の変化を探すのが、退屈な移動の楽しみだった。


神殿に預けた時、彼女の不安そうな顔を見て、私も少し心配になった。

だが、神官長に念を押したのだからと、迷いを振り切って預けることにした。

私はのちに、その判断が間違いだったことに気がついた。

気づくのが、遅すぎた。



定期的に彼女に会って、話をした。

基本的には、私が話して彼女が肯定や否定で返す簡単なものだったが、私は何よりその時間を大切にしていた。

大変な業務も面倒な付き合いも忘れて、彼女と過ごす時間はとても心地がよかった。


だがある日のこと。

いつもと同じようにお土産を持って面会に行くと、彼女の様子が違っていた。

最初の頃に戻ったように、無口で無表情になっていた。

お土産も、頑なに拒まれてしまった。

不審に思ったが、深くは触れずに無難に話をして帰ることになった。


屋敷に帰ってきてから、私に仕えている影に、セレイユとその周辺について調べるように命じた。

調査結果が出るのに、それほど時間はかからなかった。


「何だ……これは!?」


「神官長に教育係を任された、スザンヌと言う女性が主犯のようです。特に暴力を伴うあたりが強かったのは、この5人になります。」


「くそっ!神殿なら……神官長に念を押したのだから大丈夫だと……そう思ったのに。間違いだったなんて。」


今まで傷ついてきた彼女を、さらに追い詰めるようなことをしてしまった。

何のために引き取ったのか、わからないじゃないか!


怒りを抑えきれずに、机を強く叩く。


「報告、ご苦労。下がっていい。」


「はっ!」


一人、部屋で考える。

これからどう動くべきか。


彼女はどこにも預けられない。

どこも信用できない。

なら、この屋敷で保護しよう。

この屋敷なら、私の目が常に届く。

使用人も、私が厳選した忠誠心が高い人物ばかり。


神殿は……どうしてやろうか?

こんなこともできないのなら、いくらでも不正がまかり通っているだろう。

国は財政が厳しいのだ。

神殿から、削ってやろう。

少しは、苦労すればいい。


私は次の面会日に、全ての決着をつけることを決めた。


当日。

いつもより多くの護衛騎士を連れて、神殿を訪問する。

神官長室に直接赴き、教育係を呼ばせた。


神官長は顔面を蒼白にし、私の前で立ち尽くしている。

どうやら、私の怒りを察したらしい。


「お呼びと伺い、参りました。」


これが、スザンヌか。


「さて、神官長、そして教育係のスザンヌ。これは一体どう言うことか、説明してもらおうか。」


2人の目の前に、調査報告書を突き出す。


神官長が恐る恐る手に取って、書類を読んだ。


「な……な……ス、スザンヌ!これは……どう言うことだ!?無視に、暴言……それどころか暴力もだと?君が晒したそうじゃないか!説明しなさい!」


「さ、晒してなど、いません!教育しただけですわ!言葉を話せないから、話せるように厳しい教育を……」


「誰がそんなことをしろと言った!?」


目の前で醜い言い訳が、連ねられる。

いい加減、うんざりだ。


机を叩いて、注目を集める。


「言い訳は結構。処分はそちらに任せるが、生半可なものですますなよ?準備もあるだろうから、明日、セレイユは連れて帰らせてもらう。」


それだけいい置いて、神官長室を出た。


セレイユは、今どこにいるのだろうか?


神殿内を歩き回っているが、見かけない。

どこに……


カアァァァァァ!!


「ちょっ……何よ、この鴉!?」


「痛っ!痛いってば!」


鴉と……女の声……?

まさか……


嫌な予感がして、叫び声が聞こえるところに行くと、鴉に襲われている女性と、その奥に見覚えのある女性が倒れていた。


「何をしている!?」


「「「「「げっ!!」」」」」


「セレイユ!大……丈夫じゃないな。すぐに医務室に行こう!近衛騎士、この女どもを神官長室に連れて行け。逃すなよ?」


「「「「「はっ!」」」」」


怒りが抑えきれない。

神官長にも、教育係にも、私自身にも!!


あぁ、本当に、どうしてやろうか。



セレイユを医務長に預けて、一旦屋敷に戻った。

今日中に屋敷の采配を終わらせて、明日、万全の状態で彼女を迎えに行く。


待っていてくれ。






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