表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/15

そんなつもりじゃなかった SIDE:レクシオン


クインに指摘された恥ずかしさを隠すために、必死で仕事に集中していたら、いつの間にか日が陰っていた。


そう言えば、今日はまだセレイユに会っていないなと外を見ていると、もうすぐ日が落ちるのにセレイユが庭に出ていた。

薄暗さの中に、まるでそのまま消えてしまいそうな雰囲気を感じて、彼女に会いにいかないといけない気がした。

焦燥を抱えながら急いで庭に降りていくと、夕暮れ時なのに、やけに庭の方が明るく感じた。


嫌な予感がする。


ますます、歩く速さを上げた。


庭が見える位置まで来ると、昼間のように明るい、だが柔らかな光が溢れているのが見えた。

その中心にいるのは、セレイユだった。


その光はやがて天まで届き、屋敷の外にも広がっていった。


「セレイユ!!」


何かに急かされるまま、彼女の名を呼ぶ。


セレイユは私の声に振り返と、今まで見た中で一番綺麗な笑顔を向けてきた。


いつもなら喜びこそすれ、こんなに苦しくなることなんかないのに。

なぜだが胸が締め付けられる。


どうしてそこで、そんな笑顔を見せる?

なぜ、こちらに来ないんだ?


様々な疑問が頭を巡る。


セレイユが両手を広げると、さらに光が勢いを増して、夕暮れの空を照らす。

美しい光景なのに、美しいと思えない。


「セレイユ!!」


もう一度、彼女の名前を呼ぶ。


その光を浴びて感じた。

これはセレイユの中にあった力だ。

こんなにも力を外に出してしまえは……どうなる?


「どうか、幸せでありますように……」


セレイユはその一言を囁くと、意識を失って倒れた。


私は地面にぶつからないように、慌てて抱き留めた。


彼女の身体が冷たい。

まるで、温もりが消えてしまったかのように。


私の全身から血の気が引いた。


違う、違うと、何を否定しているのか認めたくなくて、考えを放棄した。


倒れたセレイユをそのままにしておけなくて、彼女にあてがった寝室へ移動した。

近くにいた侍女には、医者を呼ぶように命じながら。


セレイユをベッドに寝かせていると、医者が到着した。

私の屋敷に常駐している医者は、腕がいい。

きっと大丈夫だと、私は自分に言い聞かせた。


「かなり衰弱している様子ですが……申し訳ございません。私にはどうしようもなく……」


医者が苦々しい顔で、言葉を絞り出した。


そうだな。

これはきっと、医者ではどうにもできないことなんだ。

これは、神の領域だ。

ただの人間が、どうにかできるはずがない。


「……わかった。下がってくれ。」


「はい……」


「悪いが、2人にしてくれないか?」


静かにそう告げると、侍女たちが一礼して部屋から出ていった。


どうしてこうなった?

何が原因だ?


わからなくて、手がかりを探すように居室内を歩き回った。

見つけたのは一通の手紙と、たくさんのゴミになった破られた紙だったもの。

悪いとは思いつつ、手紙を開けた。


そこに綴られていたのは、私への感謝が溢れた内容と、私が最初に願った通りに願いを叶えたいと言うこと。


私は何も言えなかった。

胸につっかえて、言葉が出てこなかった。


ゴミ箱に捨てられていた紙を拾い上げ、一枚一枚時間をかけて繋ぎ合わせた。

そこに綴られていた言葉も、私や屋敷の者への溢れんばかりの感謝と好意。

そして、自分の全てを使ってでも、私の役に立ちたいと言う彼女の本心だった。


違う……

違うんだ……

確かに、初めはそう願ったけど、こんなことをして欲しかったんじゃない。

君の命まで使って、叶えたい願いじゃないんだ。


それに、凛として立つ君を見て、君の微笑みを見て、本当は最初から惹かれていたんだ。

けれどそれを認めたくなくて、誤魔化すために保護なんて言ってしまった。


初めから、私は間違っていたんだ。


胸の奥から熱いものが込み上げてきて、涙が溢れた。

彼女の手紙に、一つ二つと、ポツポツ落ちていく。


後悔してもしきれない。


ふらふらと彼女の眠るベッドに近づくと、その傍らに座り込んだ。


「好きだ。好きなんだ。愛しているんだ。私を置いていかないでくれ。目を覚ましてくれ、セレイユ。」


祈るように彼女の右手を握る。


私は無力だ。

こうして祈ることしかできない。


どうか……どうか……死なないでくれ……






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ