新しい環境
きっと緊張で、こんな生活慣れないと思った。
けれど意外に、私は順応性があったみたいだ。
気がついたら、侍女がいる生活を見慣れてしまった。
さすがに世話をしてもらう生活は、未だになれないけど。
「あらあら、お嬢様。どうかなさいましたか?」
「あ、いえ。何でもありません。いつもありがとうございます、アンヌさん。」
「いえいえ。むしろもっと頼ってくださいな。お嬢様は、大切なお方なのですから。ほほほ。」
大切なお方……か。
私はただの居候なんだけどなぁ……
ここで働いている人たちは、みんな驚くほど優しい。
意地悪する人も、悪口を言う人もいない。
だから今まで過ごしてきた中で、一番過ごしやすいところだと思う。
でも、ずっとここにいるわけじゃないし、贅沢に慣れたらどうしようかという不安がつきまとう。
考えても、どうしようもない事だけど。
ここでは、今までやってきた仕事もしていない。
手伝おうとしても、人手が足りているからと断られる。
やる仕事がないと、手持ち無沙汰になってしまう。
綺麗な趣味なんか、持っていないから。
そんなな時、提案されたのが刺繍だった。
裁縫はしょっちゅうやっていたけど、刺繍はやる機会がなかった。
余裕もなかったから。
刺繍が初めてだと言うと、アンヌさんが丁寧にわかりやすく教えてくれた。
刺繍糸の本数、持ち方、刺し方、一つ一つ見本を真似ながら進めていくと、案外楽しいことに気がついた。
その日から、私の趣味に刺繍が加わった。
刺繍は刺し方を変えるだけで、様々な模様が描ける。
私は毎日時間を忘れて、刺繍に集中していた。
綺麗に刺せたものはレクシオン様にあげようと思って、今頑張っているところ。
喜んでくれたらいいけど。
やなり難易度の高い花を選んでしまったけど、なんとか形にはなっている……と思う。
アンヌが上手だと言ってくれているから、大丈夫のはず。
刺繍以外にも、できるようになった事がある。
それは本を読むこと。
今まで文字を習った事がなかったから、本を読む事ができなかった。
まぁ、文字を読めても、本を読む時間なんてなかったと思うけど。
ここでは侍従長のクインが教えてくれる。
文字だけじゃない。
歴史とか、国のこととか、お金の使い方とか、計算の仕方とかその他にもいろいろ、学びたいことを学んでいいんだって教えてくれた。
初めは絵本から読み始めた。
絵本は文字を読む練習になるだけじゃなくて、国のこととか、やっちゃいけない事なんかを教えてくれる。
ルールとか覚えるのに、すごく助かっている。
文字が読めるようになったら、世界が広がった気がした。
この屋敷にいる人はみんな文字を読めるから、文字で会話できるようになった。
話をする事でその人のことがわかるし、私の思っていることも伝えられる。
レクシオン様とも、たくさんお話した。
レクシオン様は普段忙しそうだから、手紙を書いてやりとりをするようになった。
私のあんまり上手くない手紙をちゃんと読んでくれて、しっかり返事を書いてくれる。
忙しいのに、とても優しい人だ。




