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13 背中を託す者

 暴風のような剣閃が盗賊を弾き飛ばす。

 その背を見つめていたクラリッサは、震える息をひとつ殺し、雪に埋まりかけた外付け導管へ駆け寄った。


 工具箱を雪上に叩き置き、凍りついたナットを外し、導管の継ぎ目を指先でなぞる。

 魔力の流れが――途切れている。


「この導管を直さなければ、炉圧が逆流する!!」


「わかった! 時間は稼ぐ!!」


 雪嵐の中で、クラリッサの灰青の瞳が炎のように揺れる。


「私の夫は……魔導路暴走の事故で死んだのです」


 ラインハルトの剣がわずかに止まった。


「私は、二度と同じことを起こさせない。

 魔導機関車は、誰よりも私が守る……!

 私が整備し、私が鼓動を聞き、私が命を預かっている!」


 工具を握る手が強く震え、雪を散らす。

 その言葉に、ラインハルトの口元がわずかに緩む。


「そして、貴方をここで死なせたりしない!!

 私が――絶対に守る!!」


 ラインハルトの青い瞳が揺れた。


「……俺を、守ろうとしてるんですか?」


「技師として当然の責任です!」


 声は震えていたが、視線は一度も逸れない。


「私は技師。

 守るべきものはこの魔導機関車であり……」


 一瞬だけ息が詰まる。


「そして……貴方もその一つです!」


 ラインハルトは、剣を構えたまま言葉を失った。


 クラリッサは再び導管に向き直り、雪を払い、腕を突っ込む。


「だからお願いします!

 これは私にしかできない仕事です!!」


 降りしきる雪が白い幕のように彼女の背に降り積もる。


 ラインハルトは胸の奥が焼けつくような熱さを覚えながら、彼女の背を守るように剣を構え直した。


「……了解です。

 クラリッサさん。貴女が俺を守ると言うのなら——」


 雪を踏みしめ、彼女の背後にぴたりと立つ。


「俺は、貴女の背中すべてを守る」


 クラリッサは返事をせず、ただ導管へ工具を叩き込んだ。


 雪原には、金属を打つ鋭い音と、ラインハルトの剣が敵を弾き飛ばす衝撃音が混じり合い、途切れることなく響き続けた。


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