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第四話 田中
田中は営業マンである。
不動産系の訪問販売をしている。
それだけの人間であった。
「趣味が無いのって、やっぱ損してるよなぁ」
最近の田中の口癖であった。
「別に良いじゃない。たばこを買うためだけに仕事をすれば」
女の子ーー鈴木は言った。田中は喉に何かを詰めたような難しい顔をする。
「人生において、何かを成し遂げないまま終わるのは勿体ないと思うんだ。ただそれだけの話だよ」
鈴木が机の上に置いてある田中のタバコをこっそり奪おうとしていた。しかし田中はいち早く気づきタバコを鈴木から遠ざける。
「田中なんて何にもできないよ」
鈴木は不貞腐れた様子でそう言って、ごろりと座布団に寝転がる。
「かもね」
田中はそう言いながら、ふと太陽を握り潰した。
太陽は苦しそうに呻いた。