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第二話 田中
田中は冷凍した。
食べ切れなかった炒飯を冷凍した。
田中は目を引きちぎった。
冷凍した。
田中は腕をむしり取った。
冷凍した。
田中は凍結した。
た
な
か
夜になり、田中は「な」だけを解凍した。
「すずき」から「す」だけを解凍した。
「ビール」から「び」だけを解凍した。
田中はそれらを組み合わせてなすびを作り、油で焼いて、そこに醤油を垂らした。
口に入れた瞬間、香ばしい香りが口の中に広がる。
ふと酒が飲みたいと思った田中は、冷凍庫を開けた。
先ほどビールから「び」を取ってしまったせいで、「ール」になってしまっていた。
田中は他の「び」を探した。
しかしどこにも無く、田中は苦悩した。
く
の
う
の
う く
何かの拍子に「苦悩」から「く」だけが転げ落ちた。
そして冷凍庫の中に入り込んだ「く」は、偶然「ーる」と合体しーー
く
ー
る
く
ー
る
田中は凍結した。
た
な
か