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【完結済】神風勇太はたった一人の勇者となる  作者: みおゆ
第一章・アンノウンダイチ
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第4話・あら、よくないこと考えてるわね

「――アンタら、まとめて死になさい」


 タコ足の女の後ろの地面から、巨大な何かが飛び出した。


「キャアッ!」


 マキはその衝撃で吹き飛ばされ、木に背中を打ちつける。


「――マキ!」


 俺はすぐにマキの元へ駆け寄った。


 マキの身体を支えながら、突如現れたモンスターへと視線をやる――その見た目は、あの有名なUMA(未確認生物)のツチノコに似ていた。

 だが、まだ雑誌などで見かけたときのほうが可愛げがある。モンスターは鋭い牙を剥き出し、俺らに向かって咆哮した。


「マキ! 大丈夫か、立てるか!?」

「大丈夫なのです……。っ! それより、勇者様!」


 俺はマキの視線の先に目を向けた。いつの間にか、そのモンスターは眼前まで迫ってきており、口を大きく開けていた。


 ――やばい、このままだと喰われ……!


「リアム、パーンチ!!」


 そのとき、リアムが横から入り、モンスターを殴りつけた。モンスターはそのまま地面を転がった。


 ――危なかった。リアムの助けがなかったら食べられていたかもしれない。


「サンキューな、リアム!」

「Keep up your guard! まだ倒してないぜ!」


 モンスターはすぐに身体を起こした。

 全然ダメージを受けてないと言わんばかりだ。


「あら、こんなの相手に一発食らわせられるなんて、アンタ中々やるじゃないの。……なら、まずはアンタから片づけさせてもらうわ」


 タコ足の女は言うや、力強く手を振った――ツチノコはそれに呼応して、リアムに向かって突っ込んでいく。


「リアム!」

「Don't worry! ユータはマキを!」


 俺はリアムの言葉に甘え、マキを抱えてモンスターから距離を取る。


「わ、わたしたちも応戦しないと、リアムさんが!」

「マキは無理するな! ここは俺とリアムでなんとか……」

「ダメなのです! 二人にばかり甘えられないのです!」

「今の衝撃で、身体も痛むだろ。無理はするなって……!」


 マキは「わたしもいくのです!」と叫び、俺の腕を払い、強引に降りた。

 心配する俺に、マキは力強い笑みを見せる。


「勇者様、大丈夫なのです。実は、さっきのレベルアップで新しい攻撃魔法を覚えたのですよ」


 マキは杖を構えた。


「――それに、勇者様がいるから。何があっても大丈夫なのです」

「……マキ」


 マキの強い意志を受け、俺も剣を手に取った。

 こんなかわいい女の子が、自分から戦うって言ってるんだ。俺がビビって戦わないでどうする。


「いくぞ! リアムに加勢しよう!」

「はいなのです! 勇者様!」


 モンスターはリアムに集中している。俺はその隙を狙ってモンスターの背に剣を振り下ろした。


「――ッ!?」


 しかし、モンスターの皮膚は柔らかそうな見た目に反して硬く、剣は呆気なく折れてしまった。


「あははは! バカなのかしら。そんなボロい剣がなんの役に立つっていうのよ!」


 タコ足の女はこの戦いを楽しんでいるかのように笑った。クソっ、余裕ぶりやがって!


 ――そうだ。さっきの様子を見るに、このモンスターを操っているのも全部この女だろう。なら、モンスターの操り主であるコイツを叩けば……!


 俺は、タコ足の女に向けて、方向転換を図った。


「――あら、よくないこと考えてるわね」


 タコ足の女は右腕を大きく凪いだ。

 刹那、背後に気配を感じる。振り向けば、モンスターの尾が俺を叩き潰そうと、振り上げているところだった。


「クソっ!」


 対抗しようとしたが、その力の差は簡単に埋められるものではなく、俺はそのまま尾に押し潰された。


 俺の意識は、そこで途絶えた。

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