第?話・???
辺り一体が血生臭い。
足元は真っ黒な血の海だった。
苦しみで歪んだ顔のまま息絶えた者。
最後の希望も踏み躙られ息絶えた者。
屈辱の果てに息絶えた者。
ここは誰が見ても明らかな、最も最低で最悪な最凶の世界線だった。
目の前の〈巨大で凶悪な存在〉が気持ち悪い声で笑っている。
この状況を楽しんでいる。
胸糞悪い。
〈巨大で凶悪な存在〉は、もう終わりだと言った。
もう、この状況を認めるしかなかった。
諦めて両腕をダラりと下げた。そのときだった。
「……だ」
小さな掠れ声。
耳を澄ます。
表現し難いほど弄ばれ、痛めつけられたその身体の持ち主は、焦点のあってない瞳で言う。
「ひ……つ……の………マン…が……」
その声は本当に途切れ途切れだった。
虫の息よりもか細い声で、彼女は続ける。
「つぎ……で、また……ヴあァッ」
まだ生きていたんだな、と〈巨大で凶悪な存在〉はなんの躊躇いもなく、彼女にトドメを刺した。
でも、ちゃんと聞こえた。
決められた手順で、操作していく。
そして現れた、『秘密のコマンド』。
〈巨大で凶悪な存在〉は、最後に俺を殺そうと、大きな腕のようなものを振り上げた。
振り下ろされる直前、俺はコマンドを起動させる。
――〈リセット〉。