そして共に
毎日が何事もなく、毎日がありきたりで何も面白味もなく過ぎて行くと思っていた。
誰しも一人では生きていないなんて何処ぞの誰かが言ったらしいが、俺はそんな事ないと思っていた。厳密に言えば全てにおいて何かしらの手が加わっているし、一人ではないのだろうが。
俺みたいな奴にこんな生活は出来すぎなんじゃないかと思うような毎日を送っている。これが幸せというものなのだろうか。
「ただいま」
「おかえり。お疲れ様~」
いつも通りの挨拶。いつも通りだ。今日は鍋らしい。うまそうな匂いが俺の腹を刺激する。
「最近寒いし、今日はお鍋にしてみました~」
ニコニコ顔でそう言ってくる。悪くない。
「ああ、手を洗ってくるから少し待っててくれ」
「ならご飯もよそっておくね」
一般の家庭なら当たり前なごくごく普通の一コマ。これが続けば良いと思うよ。このまま結婚して、子供が出来て幸せな生活が。
「結婚か・・・」
何気ない一言。たかが一言、されど一言。澄香には大きな一言になったようだ。
「克己。私と結婚する?」
悪くないと思ってしまった。今までの俺なら思わないような感情が支配する。
「まあ、なんだ、えっと。結婚するか?」
頭で考えるより、言葉が先に出た。悪くない。
「うん♪」
俺はこうして澄香と結婚した。
これから一波乱も、二波乱もあるって分かってればこんな事しなかったのに。
この時はまだ知るよしも無かった。