青天の霹靂
世間一般には成人と呼ばれる年齢となった。
自分自身、特に何かが変わったなんて事はないしいつも通りといった所だ。
会社の先輩には色々教えてもらった。教えてもらったと言っても仕事ではなく、まあ色々だ。察してくれ。おかげ?と言ったらおかしいが大人の階段も無事登ったし、今でも色々な奴との付き合いもある。
そんなこんなを過ごし五年。二十五歳になり色々と落ち着いたかな?なんて思っていた時期の頃だった。
だらだら毎日仕事へ行き、帰ってきて飯食って風呂入って歯を磨いて寝る。たまに酒呑んだり、パチンコしたり。なんて事はない、何処にでもいるような何の面白味もない生活だ。
今日も今日とて代わり映えしない日だと思っていた。仕事が終わり、晩飯でも買って帰るかなんて思って歩いていると、会う訳がないと思っていた奴と遭遇した。
別に避けていた訳ではないが、去年引っ越しをして行動範囲が変わったので会う事はないだろうと思っていた。世間は狭いもんだ。
「澄香?久しぶりだな。こんな所でなにしてるんだ?」
何となく気になったのでこちらから声をかけてみた。
本当に何となくだ。ただいつもの澄香とか少し違うようなそんなちょっとした違和感。
「あれ?克己?」
「おう。なんだ?どうした?なんからしくないな」
「ははは。まあ色々とね」
「そうか。そういえば昴は元気か?」
「え?昴?どうだろ?分からないや」
「お前ら付き合ってるんじゃねーの?昴から報告もらったぞ?随分前だけど」
「あ~そうなんだ。私達もうとっくに別れてるよ」
やっぱりな。別れると思ってたんだ。ははは、って何で俺は喜んでんだ?
「そうか。まあ色々あるさな」
「克己は?最近どう?」
「俺はいつも通りだ。淡々と生きてるよ」
「そうなんだ。克己らしいね」
なんだ?俺らしいって。面白味がないのは理解してるが。
「てか何でこんな所にいんだよ」
間違いなく澄香は何かあったのだろう。深く聞くつもりはなかったのだが、何故か聞いてしまっていた。
「まあ、いいじゃん。克己これから何処行くの?」
「帰るけど?」
「遊び行っても良い?」
何言ってんだ?この女は。ついに頭おかしくなったか?
「何言ってんだ?」
「何が?いいじゃん。ご飯作ってあげるし、一緒に食べようよ」
何なんだ?どういった風のふきまわしだ?ただ、まあ飯を作ってくれるというのはひかれるな。
「部屋汚いぞ?それでも良いなら構わないけど」
「なら買い物してから行こ」
何気ない毎日がこんな青天の霹靂みたいな事が起きて、当たり前が当たり前でなくなるのは目に見えていた。