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異世界軍人と七人の兵士共  作者: 藍染 珠樹
序章
4/9

架空の敵本当に現れる/ヴェルトランという男について

 屋敷戻った僕達。

 獣人の少年は近くの茂みに隠れさせて、後程回収する手はずです。

 まずはアルネットを何とかしなければ。

「大佐、遅かった……って、どどど、どうしたのですか、そ、そ、その怪我!?」

 傷だらけの僕を見て驚きまくるベルガー。

 ちなみに何故僕は傷だらけなのか?

 それは何者かにメルネットが襲われ、僕が抵抗した結果こうなったとごまかすためです。

 ちなみに僕に傷をつけさせてもらったのはディートリヒです。

 時には身内にもごまかさないといけない必要もあります。

 何故ならこういった面倒事を知る人物は少ないほどいろいろ都合がよいのです。

「いやぁ、突然敵に襲われまして」

 と、苦笑しながら言う僕。

「メルネ!?」

 アルネットが驚きの声をあげ、こちらに駆け寄ってくる。

 他の隊員達も全員やって来た。

「どうした、大佐!?」

「何があった!?」

 近い、近い、顔が近いよ双子共。

「突然敵に襲われましてね」

「随分と傷だらけだな、大佐」

 腕を組みながら言うアイケさん。

「ま、まあ中々手強い相手でして」

「で、倒したのか?」

「い、いえ、逃げられました」

「……どんな奴だった?」

「えっと……全身黒ずくめに白いマスケラの面を着けていた……ぐらいしかわからなかったです。得物はナイフです。あと、雷属性の魔法を使用してきましたので魔法も」

 僕は架空の敵をでっち上げた。

「……なら油断はしないよう警戒だけはしておけ」

 アイケさんはそう言って、そのままどこかへ行ってしまった。

「……と、ともあれ、またいつ襲撃を受けるかわかりません。今夜は警戒を怠らぬよう、気を付けてください」

「「「了解!!」」」

「とりあえず、メルネットさんをどこか運びませんとね。リリネットさん、彼女の自室まで案内をお願いできませんか?」

「は、はい!」


 メルネットを自室まで運び、ベッドに寝かせる。

「アルネ……」

「ご、ごめんなさい。あたしが寄り道したばかりに」

「いいえ、リリ姉様が悪いわけではありません。その黒ずくめの人物が悪いのでしょう。きっとそいつは魔族の尖兵……」

「…………」

 僕はそっと部屋を出る。

 部屋から出ると、そこにディートリヒとペストさんがいた。

 僕達は談話室に場所を移した。

「話は少佐から聞きました。早速面倒事を起こしましたわね、大佐」

「申し訳ありません、ペストさん」

「まったく、あのリリネットさんとやらのためとはいえ、記憶消してあげることはまあ可能ですわ。ですけど、人格改変なんてできませんわよ」

『え~? ペストさんだったら一人や二人人間の脳みそぐらいいじれるでしょう~』

「あなたはわたくしをなんだと思っていますの?」

『人体実験大好きな狂気の魔女』

「今度少佐の脳みそを一晩かけていじくりまわしてさしあげましょうか?」

『きゃ~、この人怖いよ大佐~』

 と、僕に抱き着くディートリヒ。

「うっとおしい」

 僕は抱き着く彼を引き剥がした。

「……とりあえず、まずは二人を気絶させて確保をしないといけませんわね」

「ええ、わかってますよ」

 だけど、アルネットも一筋縄ではいかないでしょう……。

 メルネットが目を覚ますのも時間の問題ですし、早めに対処しませんとね。


 そして夜。

 僕は自分の部屋でアルネットをどう対処するか考えながら、一人物思いに耽る。

 ちなみに僕達の各部屋は二階にあり、侍女達の部屋は一階にあるのである。

「……まさか、またこんなことが起こるなんて」

 独り言をつぶやく僕。

 僕は昔のことを思い出す。

 あの世界でのことじゃない。

 そう、かつて僕の元の世界から異世界に召喚されるという同じような出来事があったこと。

 そしてその世界で僕は――。

 コンコンコン。

 誰かが僕の部屋のドアをノックした。

「ヴェルトラン様、少しよろしいでしょうか?」

 この声はアルネットか。

 僕は少し警戒しながら扉に近づき、そしてドアをそっと開ける。

 顔を覗かせてみると、そこにいたのはアルネットであった。

「どうしました?」

「あの、少しお時間よろしいでしょうか?」

「ええ、構いませんよ」

 ……行動しますか。

 

 僕はアルネットの後を歩く。

 その途中、ディートリヒを見かけ、彼も僕に気づく。

 僕がアルネットの後をついて来ているのを見ると、僕に目配せをした。

 頼りにしてますよ、相棒。


 そしてアルネットは屋敷の外に出て、裏まで行って、森林の奥へ行く。

 そして、月明かりの照らされた所にたどり着けばあら不思議。

 そこにはリリネットさんと目が覚めたメルネットがいた。

 メルネットは先程の獣人の少年を人質に取っていた。

「また人質? 芸がありませんね」

「こいつは人じゃねえよ」

「で、僕に何用ですかな?」

「それは、この獣人の少年を庇ったことについてです」

 アルネットの方に振り向くと、暗器を構えていた。

「メルネから話を聞きました。その獣人の少年のためにメルネと刃を交えたそうですね。一つお聞きしたいのですが、何故その場でメルネを殺さなかったのですか?」

「妹思いのお姉さんに懇願されましてね」

「はっ! バカじゃねえの? そんな甘いことした結果こうなってんだぜ?」

「君のお姉さんの頼みがなければさっさと始末していた所なんですよ。拾ってやった命を無駄にしない方がよいのでは?」

「ふざけたことを……抜かしてんじゃねえぞ!!」

 メルネットがどこかへ暗器を投げ、その暗器が木に刺さる。

「いるのはわかってんだよ、さっきはよくもやりやがって、出て来いよ!! 変な真似しようとしたらこいつの首をへし折るぞ!!」

 メルネットがそう叫ぶと、そこにディートリヒが現れた。

『やるじゃん。うまく気配を消したつもりだけど』

「私が目配せで教えました。少しながら変わった魔力が感じられましたので」

『なるほど、こりゃまいったね。ごめん、大佐~』

 流石は影と謳われるほどか……。

 しかし、ディートリヒの不意打ち

「さて、今回のことは王様に報告し、こいつは公開処刑しちまうか」

「ね、ねえ、お願いよメルネ。もうこれ以上は――」

「うるせえんだよ!!」

 メルネットはリリネットさんの頬をはたいた。

「どいつもこいつも甘いことばっかりぬかしやがって、いい加減にしやがれ!! アタシ達は何のために王国の影として尽くしてるんだ!? この国のためだろうが!! たとえこんな子供でも獣人は獣人。アタシ達人間にとって忌むべき存在なんだよ!!」

「…………」

「メルネ、おしゃべりはそこまでです。さて、ヴェルトラン様。今回の件について、全て王様に報告させていただきます。そして、ヴェルトラン様のお仲間に関しても、しかる後に騎士団に引き渡します」

 面倒ですね……。

 異世界とはいえ、あの子をここで死なせてしまうのは寝覚めが悪い。

 軍人として甘いとかアイケさんに言われそうですけど、やはり見殺しにはできませんからね。

「たかだかこの子一人にうるさくありませんかね?」

「ヴェルトラン様の世界が如何様な世界か存じ上げませんが、こちらの世界ではそういう仕組みです。この獣人に関しても仕方がないのです」

 

「そういうこった。まったく、この世界にきて早速バカな事したな、ヴェル様」

「ヴェルトラン様達の処遇については全て王様に委ねます。そして、リリ姉様。前の事ともあります。リリ姉様の処刑も免れないかもしれません。覚悟してください」

「そ、そんな、アルネ……」

 リリネットさんは悲痛な顔で泣きそうになった。

「君達、自分のお姉さんに対して随分冷たいですね。過去の任務で起きたことが原因ですか」

「それもあるけどな……それ以上にこの非情であらねばならない部隊にリリ姉には似合わない場所だったんだよ。それなのに戦闘技術だけは他の皆より上回ってるとか、おかしいだろ?」

 そうなんだ。なんか意外。

 だけどあの時、彼女が暗器を抜いた時の速さは恐らく、メルネットより速かった気がする。

 アイケさんといい勝負できそうですね。

 ま、アイケさんに勝てる者は世界広しといないと思いますけどね。例え異世界相手でもきっと……。

「影とはこの国のために時に闇に潜み、あらゆる手段を用いて外敵を消し、どのような者でも非情の心で殺さなければならない。それが我々であるのです」

 なるほど、こりゃ説得云々は無理なことだな……。

「ご、ごめんなさい……アルネ、メルネ……。ごめんなさい、ヴェルトラン様……あたしが勝手なことしたばかりに……」

 泣きながら謝るリリネットさん。

「……誤る必要はありませんよ」

「え?」

「君がその子を助けることが正しいと信じているならばそれでいいんじゃないのですか?」

「でも……」

「リリネットさん。ぶっちゃけ、僕達も軍人でありながらいろいろ好き勝手やっていますよ。それで毎度将軍に怒られてばっかりですけどね」

 僕はそこで苦笑する。

「でもね、自分を信じて正しいと思ったことをして後悔はしてませんよ」

『あの双子共やペストさんも?』

「いや、あれはちょっと……」

 あいつらはいろいろ問題すぎてホントはいろいろ自重してもらいたいが、無駄だと思うのでいろいろ諦めている。

 それでも頭が痛いけど……。

「……コホン。ともかく、リリネットさんがあの子を助けたことに関しては、何も責めたりしませんよ」

「ヴェルトラン様……!!」

「……おしゃべりは終わりか?」

「では、これからヴェルトラン様達を――」

 その時、突然空から黒い影のような物がものすごい速さでメルネの目の前に舞い降りた。

「な!?」

「「「!?」」」

 そして、黒い影は素早く跳び去り、近くの木の枝の上に乗った。

「な、なんだこいつ……!?」

 メルネが人質にしていた獣人の少年がいつの間にか消えていた。

 全員、先程の黒い影の方に目を向けた。

 そこには、黒ずくめに白いマスケラの仮面を着けた人物がいた。

 そして、人質にされていた少年を抱えていた。

「だ、誰だ、てめぇ!?」

「…………」

 黒ずくめ仮面の人物はそのまま降り立ち、少年を僕によこす。

「おっと、大丈夫ですか?」

 僕はそう尋ねると、こくりと頷いた。

「まさか……ヴェルトラン様がおっしゃられた魔族の尖兵」

 そういえば確かにそんな敵をでっち上げましたね、僕。

 まさか実在してたとは……。

「くっ……」

 アルネットとメルネットは黒ずくめの仮面の前に立つ。

「まさか、ここまで奴らの魔の手が」

「だが、相手は一人だ! こんな奴――」

 次の瞬間、黒ずくめの仮面の姿が消えた……かと思いきや、二人の懐に接近し、手刀であっさり二人を倒してしまった。

「うそ……だろ……?」

「つ、強すぎる……姉……様……」

 二人は気絶してしまった。

「アルネ、メルネ!?」

 悲鳴のような声をあげるリリネットさん。

 そして、黒ずくめ仮面は僕に視線を向ける。

「……助けてもらったことは感謝します。で、何者ですか?」

「……ハーミット」

 黒ずくめ仮面の発した声は男か女かわからない曖昧な声色だった。

『あわわ……なんだかヤバそうな人物?』

 そう言って、ディートリヒは二刀のナイフを抜き、構える。

 僕も腰に着けてある拳銃ルガーP08に手をかける。

 ちなみにマシンガンは部屋に置き去りです。

「貴様が異世界から召喚された者ヴェルトランか」

「ほう、よくご存じで」

 うわぁ……この気迫、かなりヤバい。

 正直ここで殺り合ったら、勝ち目は……ない。

 負ける……というか即死でしょう。

 だけどこの気迫、どこかで……。

「ヴェルトラン。貴様は軍人としてまだ甘いと見える。貴様のその甘さはいずれロクなことにならないぞ」

 仮面の奥から鋭き眼光。

 だが、この眼光もどこかで……。

 そして、何故僕が軍人だと……。

「……留意しておきますよ。ハーミットとやら」

「…………」

 ハーミットは一瞬で姿を消した。

『き、消えた……』

 ディートリヒは辺りをきょろきょろして、ナイフを収めた。

「……とりあえず、二人が目覚める前に屋敷へ運びましょう。そして、隊員達に今回の事を説明しましょう」

 この子も連れ帰ることも考えて、これからこの二人をペストさんに引き渡すとなれば、流石に事情を話すべきでしょうね。

 ホントなら彼らにもいろいろ事情を話すべきなのでしょうが、話すとかえって面倒事が増えそうなのであえて内密に事を済ませる必要があったのです。

 ま、ここまで事が運べば後はどうにでもなるでしょう。

『そうするしかないですね~』

「ごめんなさい、ヴェルトラン様にディートリヒ様。この世界に来て早々こんなことに……」

「いいですよ。こういうごたごた事は慣れてますので」

『そうそう。こういう事は慣れっこですよ~♪』

「とりあえず戻りましょう。流石にこんな時間に僕達がいないと気付いたら、あいつら探しに出るかもしれませんから」

 僕達は急いで屋敷に戻ることにした。


 僕がアルネットをおぶり、リリネットさんがメルネットをおぶりながら、屋敷に戻ると、ペストさんとアイケさんがいた。

 少年はリリネットさんにしがみついていた。

 ディートリヒは手ぶらです。

「おや、大佐。随分遅かったではありませんか」

「それは申し訳ない」

「あと、先程中佐に何しているのと問い詰められましたので、今回のことお話してしまいましたわ」

 だから、アイケさんがここにいるんですね。

「さて、改めて大佐の口から説明してもらおうか」

 アイケさんに説明を要求されたので、とりあえず説明しました。

「なるほどな。まったく、相変わらず無茶をする」

「すみません、アイケさん」

「まったくだ」

「ところで、他の皆さんは? 一応今回の事を説明したいのですが」

「皆さんもう眠ってしまわれましたわ」

 あいつら……。

 まあいいや。

「ちなみにカルさんが夕食を作ってありますので後で食べてくださいな。わたくしはいただきましたので」

「す、すみません。本来ならわたし達がやる仕事でしたのに」

「いいのですよ。状況が状況でしたし。それにカルさんは料理上手ですので」

 カルさんの意外な特技であります。

「……その子が件の獣人の少年か」

「ええ。アイケさん、この子を浴室まで連れて身体を洗ってやってください。ディートリヒはこの子に服を用意しておいてください」

「はぁ……わかった」

『アイアイサー♪』

「…………」

 少年はリリネットさんにしがみついたままだった。

「申し訳ないんですけど、ちょっとこの人に用がありますので、このお姉さんに同行してもらえませんかな?」

「…………」

「大丈夫ですよ。この人不愛想でめちゃくちゃ恐ろしい人ですけど、根はやさしい人ですよ」

「悪かったな、無愛想でめちゃくちゃ恐ろしい人で」

 僕の事をジト目で睨むアイケさん。

 おお怖い。

「ご、ごめんね。ちょっと大事な用意を済ませないといけませんので。ね」

「……わかった」

 あ、初めて言葉を発した。

 少年はアイケさんの元へおそるおそる向かって行った。

「……怖がらなくても大丈夫だ」

「…………」

 どうやらアイケさんなら大丈夫そうだな。

「じゃ、よろしくお願いしますね。では行きましょう、ペストさん、リリネットさん」

「大佐、先程面白い場所を見つけましたのでそこへ向かいましょう」

「?」

 リリネットさんは首を傾げる。

 僕は大体想像つく。

 絶対に彼女が好みそうな所を……。


 着いた場所は地下のある部屋。

 そこには拷問道具がいくつもあった。

「ひっ!? な、なんですかここ!?」

 どうやらリリネットさんも知らない場所であった。

「ふふふ……いい場所でしょう……」

 ペストさんが狂気の笑みを浮かべながらこちらに振り向く。

「ひぃぃぃぃ!?」

 ペストさんの狂気の笑みにビビるリリネットさん。

「さあ、その二人をこの椅子へ。楽しい人体実験の始まりですわよぉ」

 うわぁ、ペストさんのテンションがかなり上がってますね。

 ちなみにその椅子は明らかに拷問用の椅子であった。

「張り切るのは結構ですが、目的を忘れないでくださいよ」

「わかってますわよ。さあ、二人を」

 僕とリリネットさんは気絶しているアルネットとメルネットを座らせた。

 そして手足を拘束させ、身動きが取れないようにした。

「あの……本当に大丈夫でしょうか? とゆうよりペストさんって……」

「なるようになるしかありませんよ。そして、これが彼女の本性です」

 見た目はお淑やかな帝國軍魔道士兵。しかし中身は狂気でかなり頭のイカれた魔女。

 それがエウレカ・ペストである。

「う……」

 メルネットが目を覚まし、次いでアルネットも目を覚ます。

「……な、なんだこりゃ!?」

 メルネットは自分が置かれた状況に驚きの声を上げた。

「ここはいったい……」

 アルネットは信じられないような顔をしながら辺りを見回す。

 どうやらアルネットもここを知らないようですね。

「拷問部屋だそうですよ」

「「!!」」

 二人は僕達を見て驚く。

 そしてメルネットはキッと睨んできた。

「てめぇら!! どういうつもりだ!?」

 メルネットはじたばたしながらわめく。

「これからペストさんがあなた達で人体実験をするそうですよ。まあ、悪く思わないでください」

「じ、人体実験!? ふざけたこと抜かすんじゃ――」

「うるさいですわよ」

 バヂィ!!

「ガアッ!?」

 ペストさんは雷魔法でメルネットを気絶させた。

「本当なら気絶させないでやりたかったですけど、リリネットさんの前じゃ流石に叫びや悲鳴を聞かせるのも忍びありませんからね」

 ペストさんにしては随分まともなことを言いますな……。

「……私とメルネをどうするつもりです?」

「言ったはずですよ。人体実験ですと」

「これからお二人の脳を弄って、記憶の改竄をし、ついでに洗脳も施して、今後はわたくしらのために動かさせていただきますわ」

「……ヴェルトラン様達の目的はいったい何ですか?」

「目的ね……。とりあえず元の世界に帰るために王国には協力します。ですが、今回の事についてはいろいろ内密にしておきたくてね。君達のような人間がいると、僕達は思うように動けないんですよ。いちいち僕達のことを王族の方々に報告されては迷惑なんですよ」

「ならば、私達を消せばよいだけではありませんか? そして、あの黒ずくめに罪を擦り付ければよいではありませんか」

「本当ならそうしたいところでしたよ。ですがリリネットさんは君達を殺したくないと言うもんで、仕方なくね」

「……甘いですね。そんなことではいつか足元をすくわれますよ」

「ご心配には及びません。この先何が起ころうとも何とかなると思いますので」

 僕はフッと笑いながらそう言った。

「……そろそろよろしいですか、大佐?」

「……アルネットさん。最後に一つ、よろしいですか?」

「何ですか?」

「影たるあなたなら、僕達の知らないうちに仲間を呼んでいれば、今頃その手の者達がこちらに来てもおかしくないはずです。ですが、一向に来る気がしません。何故ですか?」

「!?」

 僕の言葉にリリネットは驚愕する。

「た、確かにアルネなら秘密裏に騎士団や他の侍女を呼べてもおかしくありません。ねえ、どういう事なの、アルネ!?」

「……ご想像にお任せします」

 リリネットさんはアルネットに問うも、明確に答えなかった。

「……そうですか。ペストさん、お願いします。僕は先に戻りますので」

「最後まで付き合ってくださいよ」

「あの少年がそろそろ風呂から上がって来るかもしれませんから、戻りませんと」

「それなら仕方ありませんわね」

「わたしはここにいます。今回の事は全てわたしが招いたことですので……」

「……わかりました。では、よろしくお願いしますよ。くれぐれもね」

「了解ですわ」

「あ、あの、ヴェルトラン様!」

「ん?」

「あの……二人を殺さないでくれて、ありがとうございました」

「いや、二人がこの後どうなるかわかりませんよ?」

「ご心配には及びません。生きていればいつかまた、二人と仲良くできると思いますから」

「……そうだといいですね」

 僕は拷問部屋をあとにした。

 ペストさんが二人の脳をどのように弄るのかはわかりません……とゆうよりわかりたくないのですが、全て彼女に任せましょう。

 それにああいう魔法は彼女特有の魔法でしかできない芸当らしいので……。

「……リリ姉様の事を……みます」

「え?」

 その時、アルネットが何か呟いたそうですが、よく聞きとれませんでした。


 僕は地下から地上に戻ると、ホールにディートリヒと風呂上りでホカホカのアイケさんと同じく風呂上がりでホカホカの獣人の少年が立っていた。

「……え、なにそれ?」

 僕は少年の姿に目が点になる。

 今、少年が着ている服がかなりゴージャスな服装だった。

『いやぁ、これしかなくてね~』

「すまん、ヴェルトラン」

 これがディートリヒの趣味で選んだのなら完全に悪趣味です。

 まあ、彼がわざとこんなの選んで持って来ていたらなら間違いなくアイケさんに半殺しにされるに違いないでしょう。

「……明日この子の服を買いに行きましょう」

 僕はやれやれと言わんばかりのしぐさでそう言った。

『そっちはもういいの?』

「ええ、ペストさんに全て任せました」

 ちょっと不安だったけど。

『まあ、こういう事はペストさんに任せるしかないよね~。不安だけど』

「ま、なるしかないのです。こういう時は」

『ですよね~。リリネットさんは?』

「今回の事で責任感じてるそうで、彼女は今ペストさんの所にいます」

『気にする必要ないのに~』

「…………」

 少年が俯いてしまう。

 どうやらこの子も気にしてしまっているようだった。

「お前も気にする必要はない」

 アイケさんは少年の頭をやさしく撫でながら言う。

「……さて、お腹も空きましたし、夕食にしましょう」

『賛成♪』

 そうして、僕達は食堂へ向かった。

 ちなみに夕食を食べながら少年から名前を聞きました。

 彼の名前はラークという。


 夕食を食べ終わった後、一足先に自室に戻った僕は、そのままベッドにダイブしようとした――。

『大佐~お邪魔しま~す♪』

 ディートリヒがノックもせずに勝手に入って来た。

「なんですか、ディートリヒ」

『いやぁ、せっかくだからお話ししようよ♪』

「自分の部屋に帰れ」

 おっと、素が出てしまった。

『そう冷たくしないでくださいよ、大佐~』

 こりゃ帰ってくれそうにもありませんね……。

「……適当に腰かけてください」

『あ~い♪』

 ディートリヒは近くにあった椅子に座った。

「ラーク君は?」

『アイケさんの所だよ』

「そうですか」

 まあ、アイケさんの所なら絶対安全でしょう。

「……爺さんやアルテナ将軍らは大丈夫でしょうか?」

 元の世界のことが気がかりになった。

『大丈夫でしょ。我らが帝國軍はそんなやわじゃないんだし』

「それは頼もしいことで」

 僕は苦笑した。

『……ねえ。さっきは途中で中断されたけどさ。ヴェルってこういう経験したことあったんだよね』

「……どんな経験?」

『異世界召喚』

「……昔の話ですよ」

『正確には前世の話だよね』

「…………」

 こいつは何を言ってるんだ……と思うかもしれないでしょうが、これは事実なのです。

 ……僕には前世の記憶があるのです。

 そして僕は異世界転生者でもあるのです。

 これから少し僕の事を語りましょう。


 前世の僕は地球の……現実世界の人間だった。

 名前は五堂 藍染。

 職業はただのフリーター。

 ゲームやアニメが好きで、現実というものには全く関心がないダメ人間であった。

 のんびりとラノベ小説を書いたりイラストをたまに描いたりと創作活動もしており、出版社の大賞に応募もしていたりもしました(でも基本的にだらけた生活ばかりしてたなぁ)。

 そんなある日、僕はあの時のように突然、異世界から勇者として召喚された。

 当時の僕はいろいろわくわくしていたであろう。

 だって、夢にまで見たあのファンタジー世界に来たんですからねぇ。

 僕は魔王を倒す使命を帯び、ある二人の仲間と共に旅をしていた。

 苦難の末に魔王は倒すことはできた。

 そして、世界は平和になり、ハッピーエンド。

 流石に故郷が恋しくなったので、僕はこのまま現実世界へ帰してもらおうとした…………が、ここで最悪な裏切りが待っていた。

 そして紆余曲折あって……僕は元の世界に戻れぬまま、死んでしまったのであった。

 なんでこんなことになったかはいずれ語ろう。

 で、次に目を覚ますと……僕は赤ん坊になっていた。

 そう、僕はあの世界に前世の記憶を持ちながら転生を果たしたのであった。

 だけど全てではなく、多少欠落してしまっている。特にあの異世界で出会った人物とか。なので僕と共に旅した仲間の名前やどんな人物かは全く憶えていないのであった。

 とはいえ、何故僕はこんな状態で転生したのかいまだによくわからない。

 そして時は流れ、軍人となった僕。

 僕は前世の記憶を大いに利用して軍に貢献をなした。

 特に前世ではけっこうミリタリー物でさらにシミュレーションRPGが好きだった(プレイした作品に偏りが多少あるけど)ので、そういった知識や兵器等を帝國軍にいくつか浸透させてみました(実際に兵器案においては無人偵察機は大いに帝國軍の戦力となりましたよ。情報は一番大事ですからね)。

 戦地でも戦果を上げ、大佐まで昇りつめ……例の問題児だらけの部隊を組まされ、隊長になった。

 そして……人生二度目の異世界召喚で部隊を巻き込んで異世界へ飛ばされてしまった。

 で、今に至るのである。

 ちなみに前世の時の異世界と今いる異世界なんですが、どことなく似ているような気がしますが、似てるだけで違う所も多少ありました。

 前世の時にあんなアサシン系侍女なんていませんでしたし。

 ファンタジー系の異世界なんて似たようなものばかりですからね。

 ちなみにレーヴェ帝國についてですが……使用している銃火器や軍服などが完全に第二次世界大戦時代のドイツを思わせるものばかりです(とゆうより銃自体現実世界とそっくりです。ゲームや画像で見たことあるので)。

 だが、元々銃火器はあるのにバイクや戦車と言った機甲兵器が一切ないのが不思議だった。

 一度戦車やバイク開発をディートリヒに任せ、作らせてみたが、細かい知識がないうえにいろいろコストが高すぎて量産は無理と彼に言われ断念。

 まあ、無人航空機なんてハリボテ飛行機にほとんど魔道具で動かしてるようなものですから、本格的な物は正直原理がわかってないので実戦でやるのは無理でしょう。

 他には手押しキャノン砲や徹甲弾、榴弾なども試したところ、これらは量産できました。

 これらができるまで大砲は中世時代レベルの物でしたから、キャノン砲に変えた頃から戦況が変わりました。

 乗り物も馬や小型の地竜(見た目はヴェロキラプトル)に乗ってライフルを持って戦っているのである(まるでナポレオン時代のフランス竜騎兵みたいですよ)。

 ちなみに無人偵察機もかなりの低コスト生産で素材は主に木材であとは魔道具を取り付けただけ。

 徹甲弾においては普通対戦車用とかに使われますが、戦車なんて帝國はおろか、王国にも存在していません。

 ですが、王国軍特有の召喚魔道士兵が召喚魔法で編み出したゴーレムには非常に有効です。

 まあともあれ、おかげで帝國の軍事力はかなり強くなり、ルスラン王国の奇襲にも対応しやすくなった。

 それでもいまだに戦争は続いてますけど……。

 ちなみにルスラン王国の武器兵装等についてですが、あっちは剣と魔法が主流となっており、騎士や弓兵、召喚技術等、帝國とは完全に真逆なタイプです。

 銃火器も使ってきますが、王国の銃はマスケット銃とか帝國と比べたら時代遅れな物ばかりです。

 だけど、王国軍は数で圧倒するタイプでその分帝國軍は火力と練度が高い……のだが、数で押されたらいつか物資の余裕がなくなる……ところだが、帝國に協力的な魔族や亜人族の皆さんのおかげでなんとか枯渇せずに済んでます。

 まあ、そんなこんなで王国軍がずっと粘るから、いまだに戦争は続いてるのですけどね。

 

 そんな戦時中に異世界へ飛ばされるなんて……。

「なんで二度も勇者として祭り上げられたのやら、僕は……」

『さあね』

 あの時の僕は興奮が止まなかったに違いなかった。

 だけど今は全く興奮しない。

 むしろ迷惑すぎる。

 早く元の世界に戻らねばならない。

 僕達の部隊の有無で戦況が悪くなったらとなると居ても立っても……って言いたいですが帝國軍もそんな柔じゃありませんけどね。

 だけど、まずは生き残ることを考えねば……。

「過去の僕は死んだ。今ここにいる僕はレーヴェ帝國軍大佐ヴェルトラン・シュタイナー……」

『だけど不思議だよね。前世の記憶があるなんて』

 ちなみに僕の前世の事を知っているのはディートリヒのみです。

 他の連中には話しても信じてもらえるとは思いませんし、双子共やペストさんに食いつかれると面倒なので話してません。

 なので二人っきりの秘密です。

「ホントに不思議なものです。今となってはもうどうでもいいことですけど」

 それにしても何でディートリヒだけ話したのだろうか……。

 それも不思議でなりませんね。

 孤児院時代から長い付き合いなのですが、どうも彼とはもっと前から……。

 ……まあいいか。そろそろ明日に備えて寝ましょう。

 明日から大変なのですから……。

「じゃあそろそろ寝るので帰ってください」

『へ~い。おやすみ大佐~』

「おやすみ」

 ディートリヒは部屋から立ち去り、僕はそのままベッドに倒れ、眠りについたのであった……。

 あ、僕の過去についてはいつか話します。

 かなり長い話にはなると思いますので。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「人間どもめ、何やら面白いことを始めたようだな」

「いかがいたしますか、魔王様」

「ふむ……キルシュよ。シュヴェルトと共にエインシェント王国へ行ってもらおうか。そして見つけ次第叩き潰すのだ……異世界の勇者とやらを!」

「はっ!!」

「くくく……人間共め、これ以上貴様らの好きにはさせんぞ」


「シュヴェルト」

「キルシュ殿。出陣か?」

「ええ。私とエインシェント王国へ向かいます。目的は……異世界の勇者の抹殺」

「異世界の勇者……か。キルシュ殿、一ついいか?」

「なんでしょうか?」

「わたしに一つ考えがある……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『勇者様! どうか、この世界を邪悪な魔王の手からお救いください!!』


『お前、中々面白そうな奴だな。ついて行ってもいいか?』


『いつか、私もあなたの世界へ行ってみたいですわ』


『あたしのことは大丈夫だ! 早く行け!!』


『ダメです!! 死なないでください!!』


『アイゼン!!!!』


 なんだろう。

 この夢は……前世の記憶か?

 だけど僕はあの異世界で…………。


序章はこれにておしまいです。

次章から大佐達の異世界生活が始まります。

大佐視点だけでなくディートリヒや他二名の視点なども書いていきます。

ちなみにセリフだけの視点は帝國軍以外のキャラでの視点となります。

だけど一部のキャラ視点も書くかも。

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