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第39話 第一次開拓民、合流!

 開拓本部の兵士たちに護衛され、開拓民の第一陣である百人ほどの人々が無事にこの開拓村まで到着した。

 開拓民の多くは農村出身で農作業の経験があり、今ある畑の手入れや収穫、畑予定地の開墾は新たに来た開拓民を中心にやってもらっている。


 さらに、人が増えたことで各作業を分担して回すことができるようになった。


 道具の作成や加工は、紫の光を受けた元兵士。

 警備や戦闘は、援軍で新たに来た兵士。

 農作業は開拓民。


 こうやって担当を分けた結果、各々の作業効率が上がった。そのおかげで村全体の発展速度も目に見えて速くなっている。

 今まではこれらの作業を兵士たちで全部やっていたからなぁ。

 俺もちょこちょこ手伝ってたけど大変だった。


「おー、ロン。巡回かあ?」


 開墾中の土地のそばを歩いてると、横から盾騎士マクシムの声がする。

 そっちを見ると、開拓民と似たような作業着を着た青髪の巨漢が開墾地から歩いてきていた。


「ああ。そっちは異常ないか?」

「大丈夫だあよ。平和なもんだあ」

「マクシムは開墾の指示だったと思うけど、作業もやってるのか」

「ああ。実際にやって見せたほうが伝わりやすいしなあ」

「でも、そこまでやるのも大変だろ? 開墾する畑はここだけじゃないんだし、腕のことだってある」


 以前この地に降ってきた、人の能力を欠けさせる謎の紫色の光。マクシムはその光を左腕に受けている。長時間の力仕事は厳しいはずだ。


「大したことはないぞお。左腕も動かないわけじゃないし、土魔法での地ならしは終わってるしなあ」


 だが、マクシムは笑ってそう答えると、俺の足元を指さした。


「それに、ロンだって警備の指示を出すだけでいいのに、そうやって自分で歩き回って巡回してるなあ。人のことは言えないぞお」

「まあ、自分の目で見るのも大事だしな」

「オラも同じだあよ」


 俺たちが笑い合うと、マクシムについて開墾していた開拓民たちも笑顔になった。その優しい人柄もあって、開拓民とマクシムはうまくやれてるみたいだ。

 時間に余裕のあるときには俺もこうして開拓村を巡回警備しているが、開墾に従事する開拓民たちの表情は明るい。


 話を聞いてみると、彼らは新大陸に来てから開拓本部や補給基地とかの各地でずいぶん長く待たされていたらしい。今後どうなるか、もしかしたら旧大陸に追い返されるんじゃないか、と不安な毎日を過ごしてたみたいだ。


 それと、ここの防壁とか施設がしっかりしてたことも喜ばれた。ここは開拓地の端っこだってこともあり、もっとしょぼいものを予想されてたっぽい。

 突貫工事で建てた仮説宿舎は開拓民すべてを寝泊りさせることができていて、野宿する者は出ていない。防壁もしっかり機能していて、大型魔獣の開拓村内への侵入はまだない。


「じゃあ、今のところは順調そうか」

「予定どおりだなあ。あと数日で開墾が終わるから、その後に種まきしてひと段落だあよ」

「そこまでいったら、次は家づくりか」


 今は食料増産のため開墾作業を優先してやってもらってるけど、そのぶん建築作業が後回しになっている。人手が空いたら、そっちの手伝いもしてもらわないといけない。建築作業はまだ兵士を中心に行っているけど、いずれは建築専門の人員も欲しい。


 もっと言うと、今後のことを考えれば他にも木工や服飾、鍛冶などの各種職人、料理人なんかも必要だ。

 人はどんどん増える予定だし、そういう専門作業をやれる人間の頭数も増やさないといけない。今はそれらの作業を元兵士で手分けしてやってるけど、本職には及ばないからなあ。

 まあ、欲を言えばキリがないけど。


「マクシムさまーあ。ちょっとこっちを見てもらえますかー?」

「おおー。今行くんだあよ」


 開墾中の畑から聞こえてくる声に、マクシムが手を振って応える。


「そんじゃ、ちょっくら行ってくるんだあよ」

「ああ。俺は巡回を続けるよ」

「そうだ。時間があったら、リアラんとこに顔を出してくれるかなあ。少し話を聞いてほしいことがあるって言ってたんだあよ」

「わかった。後で寄ってみる」

「ありがとなあ。除草剤のことって言えば伝わると思うんだあ。それじゃあなあ」


 マクシムは振り向いて、開墾された柔らかい土の上をゆっくりと歩いて行った。


 除草剤か。確かにこの開拓地は草だらけだけど、旧大陸の除草剤が新大陸で育つ生命力豊かな雑草にどれだけ効くかわからないし、薬を強くすると畑の作物にも影響があるから当面は使わないって話じゃなかったっけかな。


 巡回ルートを変更して穏やかな横風が吹く土の道を少し歩くと、リアラの住む薬草加工小屋が見えてくる。庭に立てられた木の柵や軒先には、乾燥中の薬草や野菜がぶら下がっていて、風に揺れていた。屋根の上では小鳥が鳴いていて、見た目はのどかな農家の一軒家だ。


 開けられた扉の中では、数人の人影が長机を囲んで薬の加工をしている。入口で手を洗って奥に進むと、小柄な二人の女性、金色のショートヘアと若草色のショートヘアの後頭部が並んでいるのが見えた。

 二人は手元の小皿の中身をじっと見つめている。


「オン」


 近づいてみると、若草色のほうの少女が振り返って一声鳴いた。飛竜から少女に姿を変えた俺の愛竜、キュウだ。

 隣にいた金髪エルフの弓騎士リアラも、一呼吸おいてからこっちを向いた。


「ロンか。どうしたのじゃ。キュウに用事か?」

「いや、リアラ宛だよ。マクシムに除草剤のことで話があるって聞いて来た」

「あー、そのことかの」


 うなずいたリアラが、手元の小皿を横の机に置く。


「奥で話すのじゃ。先に行っていておくれ。わらわもこの薬を保管してから行くのじゃ。キュウや、今日の分の薬剤加工はこれで完了じゃ。自由にしてよいぞ」


 リアラにうながされて、小屋の奥にあるリアラの私室の前まで行く。

 キュウも俺の後ろについてきた。


 鍵のかけられた扉の前でキュウと向かい合うと、その手が少し汚れていたので、顔を近づけて見てみる。

 さっきの小皿に乗っていたのと同じ、すりつぶされた黒い粉だ。薬を作ってるときにくっついたか。


「今日も薬づくりをがんばってたんだな。なにを作ってたんだ?」


 聞いてみると、キュウはノドに手を当てて息を整え、はっきりと口を開いた。


「いたいとべ!」

「んん? あー、痛み止めか?」

「キュ!」


 キュウがうなずいて自分の胸を一回叩く。はい、とか、合ってる、の合図だ。発声練習を真面目に続けたキュウは、少しずつ人間の言葉をしゃべれるようになってきてる。

 しかし、いたいとべって言い方だと、痛いの痛いの飛んでいけっておまじないのほうに聞こえるな。


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