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徹甲弾装填完了、照準OK、妹よし!  作者: 犬尾剣聖


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96話 下見偵察





 翌日の夕方になって丸太戦車を取りに行く時に、もう一度全員で話し合った。

 今回は言ってみればハンター協会を通さない闇営業だ。

 それも元々ハンター協会の金庫に入っていた金がターゲットだし。

 オークの支配地域へ入って行っての危険な仕事となる上に、下手をしたらハンター協会を敵に回しかねない。

 勢いだけで受けられる仕事でもない。

 やはり全員の意見を聞くのが筋だろう。


「それでだ。一晩考えてくれたと思うけど参加か不参加か選んでほしい。参加、不参加は個人の自由なんだけど、今回に限り事が事だけに“ケン隊長に従います”的な意見はなしだ。個人の意思を尊重するってことで。それでは質問がある人は?」


 一通り説明した後、俺は全員を見回して質問を受け付けるが特に誰も口を開かない。

 俺は言葉を続ける。


「それでは参加する人、挙手してください」


 誰も手を挙げない。

 これは意外だな。

 いや、もしかして……


「そ、それでは不参加の人は手を挙げてください」


 それでも誰も手を挙げない。

 おいおいおいおい、どういうことだよ!


「ちょっと待て! どっちも手を挙げないってどういうことだよ!」


 するとエミリー。


「お兄ちゃんも人の事言えないじゃん。どっちも手を挙げてないでしょ」


 う、確かにそうだが。


「そ、それなら最初からやり直すぞ。俺もちゃんと手を挙げるから、みんなもどっちかに必ず手を挙げろよな」


 そう言って俺は仕切りなおす。


「はい、それでは参加する人は手を挙げて!」


 俺も参加に手を挙げる。

 するとそれを見てから全員が次々に手を挙げた。

 こいつら……

 結局俺の行動を見て決めてるのかよ!

 自分の意思や信念はないのかよ!


「まて、俺の真似はダメだって言ったよな」


 するとタク。


「でも、“個人の意見を尊重する”って言いましたよね。だからその結果がこうなったんです。間違ったこと言ってませんよね。ケン隊長?」


 くそ、何も言えんじゃねえか。


 俺もいろいろと俺も思うところはあったのだが、どうせ言っても結果は変わりそうにないから、ここは黙っていることにした。




 モリ商会に到着すると丸太戦車の改修は終わっていたが、モリじいからはさんざん嫌味を言われたがしょうがない。

 ちょっと無理を言ってしまった自覚はある。

 75㎜砲への換装の為に、他の仕事をすっ飛ばしたんだろうな。

 まあ、次もモリ商会で取引するからってことでここを後にした。

 持ちつ持たれつだしね。


 しかしこれで丸太戦車にも遂に75㎜砲が搭載されたのだ。

 大抵の戦車の装甲はこの75㎜砲で撃ち抜ける。

 今までの丸太自走砲とは違うのだよ。

 これは丸太Ⅱ対戦車自走砲だな。


 翌日の朝、俺達は新しくなった丸太Ⅱと燃料缶と弾薬を積み込んだハーフトラックで、リュー隊長との待ち合わせ場所へと急いだ。

 

 正面門から出て10分ほどのところにある大きな木が生えた場所だ。

 すでにリュー隊長達は到着しているのが遠くからでも見えた。

 4型戦車とウルセーダー戦車と6輪装甲車の3両が待っていた。

 俺達の車両を加えると5両の部隊となるわけだ。


 最初に聞いた話だと今日は参加メンバーの顔合わせと事前偵察って話だったんですけど。

 下見のはずですよね?

 偵察なのにここの5両で行くのは目立ちすぎる気がするんですけど。

 みんな銃の整備が真剣極まりないんですけど。

 しかもなんか本番みたいな雰囲気ですけど。

 大丈夫ですよね?


 到着するとリュー隊長以外は見たことがない連中だった。

 メンバーの誰もが一癖も二癖もありそうな荒くれものといった感じのおっさん達ばかりだ。

 女性メンバーはエミリーとケイだけらしく、おっさん達の視線が集中する。

 挨拶もそこそこに直ぐに出発する。


 目的地へ向かう道中にリュー隊長から全車に無線連絡が入った。


「リューより全車。たった今現地の偵察員から連絡が入った。橋の開通が早まったらしい。恐らく現金輸送車の出発は今夜になる。つまり襲撃も今夜ということだ。以上」


 以上って。

 計画の説明もまだなんですが。

 うちらのメンバーもさすがに心配そうな表情を浮かべる。

 最初に嫌な予感がしたんだよな。

 まあ、今更なにを言ってももう遅い。

 もう覚悟を決めるしかないのだ。


 かなりの遠回りをしてカイセシアの街を見下ろせる小高い山の中腹で停車した。

 ここで日暮れまで様子を見るということで、交代で街を観察しながら全車両は偽装に力を入れる。

 しばらくするとオートバイが1台がこちらに向かってくる。

 街の近くで潜伏していた偵察員らしく、そこで街の現在の情報や橋の状況なども聞くことができた。

 そのオートバイの人はここで仕事は終わりらしく、その場でリュー隊長から金を受け取って「がんばれよ」と言い残して去って行く。


 ここにいる人達だけが参加メンバーじゃないようで、情報屋やら偵察員やらが他にもいるらしいことがわかった。

 思った以上に大がかりな作戦なのかもと、ここにきて焦り始める俺達ドランキーラビッツだった。

 

 リュー隊長にいつ決行かと聞いたら、街から輸送車が出発してからだと言い放つ。

 どうやら出発に関する情報は得られていないようで、その出発する時間や護衛部隊の規模なども全くわかっていないという。


 カイセシアの街を上から見ていると、未だに戦闘が続いているのが見える。

 散発的ではあるけどあちこちで爆発の煙が上がり、銃声がここまで聞こえる。


 街の地図と見比べるとほぼ半分がオークに占領されていて、その占領地域の中にハンター協会の支部があることがわかる。

 でもその支部の位置がかなり微妙な場所にある。

 オークの占領地域内なのであろうが、かなりギリギリに近い位置なのだ。

 人間との戦闘地域のすぐ近くと言えば解かりやすいか。

 人間側もそれがわかっているのか、その場所は他よりも激しい戦闘が繰り広げられているのが見える。

 多分、協会に雇われたハンターも戦闘に参加しているんだろうね。


 オークと人間では貨幣の種類が違うんだけど、金貨や銀貨の価値はそんなに変わらない。

 最悪溶かしてして金や銀の塊にしてしまえばいいってことだ。

 オークもそれを知っているからこそ、後方の安全地帯へ金を持って行ことするのだ。


 それから俺達はただ待つという暇な時間をただただ過ごすこととなる。

 現金輸送車が走り出さないと俺達も動けないからだ。


 交代で見張りをこなしてやっと俺が眠れる番になったと急いで寝袋に入るのだが、ほんの1時間で叩き起こされることになった。

 夜中の2時である。


「ほげぇっ!」


「お兄ちゃん、起きて。出発だよ」


「ふごぉっ!」


 何度も俺を踏み潰すエミリー。


「お兄ちゃんっ!!」


「ぐぎぃっ!」


 そこは踏んじゃダメなところ!

 

 俺は眠い目をこすって強引に眠い身体を起こして出発の準備をする。

 どうやら現金輸送車の動きがあったらしいと情報が入ったそうだ。


 よおっし。

 それなら大金の為にも働きますかっ!


 俺達は気合を入れて車両に乗り込みエンジンを掛けるのだった。









次話投稿は明後日の予定です。


次回もよろしくお願いします。




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― 新着の感想 ―
[一言] 丸太2・・・・もしかしてマル○ー2? おや??、誰か来たようだw
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